毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

「3つの要素」で変化を起こす☆☆☆☆

スイッチ!
チップ・ハース&ダン・ハース
早川書房(2010/8/6)
¥1,995

サブタイトルは“「変われない」を変える方法”。「変わりたいけど変われない」は誰しも抱える悩みではないだろうか。それをどうやって解決できるのか、興味を持って読んでみた。年明けすぐにこの本を読めてラッキーだと思った。

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やり方は非常にシンプル。

  1. 象使い(=理性)に方向を教える。
  2. 象(=感情)にやる気を与える。
  3. 道筋(=環境)を定める。

と、たったこれだけだ。「これだけで?」と思うが、この3つがきちんと機能する考え方やものの見方、アイデアや実例が豊富に紹介されているので、この本を読んでしっかり理解し、行動すればたいていの人ができるようになる(はず)。

というのも、そもそもの認識が間違っているからだ。結果が出ていなくても、実はやる気がないわけでも、怠けているわけでもない。そのほとんどがシステムの問題なのだ。だから「道筋」が大切になる。


ゴールをはっきりさせる、ハードルを下げてマイルストーンを置く、楽にできる方法を考える、など今まで読んだこともある。ここに書いてあるすべてが画期的というわけではないのだが、「象使い」と「象」というたとえだけでも適切な行動が取れる人が増えると思う。下のメモにも書いてあるが、私は「セルフコントロールは消耗資源である」というくだりを読んだ時に衝撃を受けた。今までいかに「象使い」を疲弊させていたか、「象」を行き先も告げずに酷使していたか、反省した。


魅力的な実験や学ぶ点のたくさんある実例などがぎっしり詰め込まれているので、かなりボリュームがある。翻訳はしっかりしているが、“翻訳調”の苦手な人にはやや読みづらいと思う。しかし、それでも“いい本だから読んでほしい”と思うのは、この本のやり方はほとんどすべての人に役に立つからだ。

つまり、この本を読めばまず「変わること」に対する認識が大きく変化する。今までと認識が変われば、行動が変わる。行動が変われば、結果も今までとは違うものになる。
そのために、まずこの本を読んであなたの「常識」を変えてください。


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ*1

セルフコントロールは消耗資源である(P19)

という認識は重要だ。なぜなら、「セルフコントロール」といっても、悪い習慣(喫煙、クッキー、アルコール)と闘う意志のような狭い意味ではないからだ。より幅広い範囲の自己管理を指している。
(中略)
さまざまな研究によって自己管理が心身を消耗することが証明されている。…複雑な選択や検討をさせられた人々は、させられていない人々よりも集中力や問題解決能力が落ちることがわかっている。
(中略)
さらに、セルフコントロールを消耗している時、人々がすり減らしているのは心の筋肉だ。これは、発想豊かに考えたり、集中したり、衝動を抑えたり、ストレスや失敗に耐え抜いたりするのに必要なものだ。つまり、大きな変化を引き起こすのに必要な心の筋肉そのものを消耗しているといってもいいのだ。

「象使い」だけに訴えかけてもダメ(P24)

…象使いだけに訴えかけて象に訴えかけなければ、方向は定まっても、やる気は生まれない。象使いはしばらく象に道を歩かせることはできても、その努力はそう長くはもたない。
しかし、感情に訴えかけることで、状況は変わる。

変化を起こす3つの要素(P28)

1.象使いに方向を教える。
抵抗しているように見えても、実はとまどっている場合が多い。したがって、とびきり明確な指示を与えよう(低脂肪乳がその好例)。
2.象にやる気を与える。
怠けているように見えても、実は疲れ切っている場合が多い。象使いが力ずくで象を思い通りの方向に進められるのは短い間だけだ。したがって、相手の感情に訴えることが重要。象に道を歩かせ、協力してもらおう(クッキーとダイコンの研究や、重役会議のテーブルに積まれた手袋がその好例)。
3.道筋を定める。
人間の問題に見えても、実は環境の問題であることが多い。…この状況や環境のことを「道筋」と呼ぶ。道筋を定めることで、象使いや象の状態にかかわらず、変化を起こしやすくなる(映画館のポップコーン容器の影響がその好例)。

「ブライト・スポット」の考え方(P59)

「何がうまくいっているか?それを広めるにはどうすればいいか?」と考えるのだ。

大きな問題が、それに匹敵するくらい大きな解決策で解決されることはほとんどない(P64)

むしろ、数週間、時には数十年の小さな解決策の積み重ねによって解決されることが多い。この非対称性こそ、象使いの分析好きが裏目に出やすい理由なのだ。

ブライト・スポットを探すということは(P65)

「今うまくいっている部分は?それを広めるにはどうすればいいか?」と自問することにほかならない。…代わりに、私たちは「何が壊れているか?それを直すにはどうすればよいか?」というように、問題に目を向けた疑問を唱える。

意志決定の麻痺(P72)

選択肢が増えると、それがどんなによい選択肢でも、私たちは凍りつき、最初の計画に戻ってしまう。
(中略)
意志決定は象使いの担当だ。そして、意志決定には入念な自己管理とセルフコントロールが必要なので、象使いの体力に負担がかかる。象使いは、選択肢を与えられるほど疲労していく。買い物が、その他の気軽な活動と比べてはるかに疲れると感じたことはないだろうか。その理由はもうおわかりだろう。選択肢のせいだ。

「あいまいさ」も「意志決定の麻痺」の原因(P76)

変化は新たな選択肢をもたらし、不確かさを生み出す。ひとつはっきりさせておくと、意志決定の麻痺を引き起こすのは、100種類のドーナツからひとつを選ぶといったような選択肢ばかりではない。
(中略)
あいまいさは象使いを疲れさせる。象使いは象の手綱を引っ張り、象を新しい道へと案内しなければならないからだ。しかし、その道が不確かだと、象はもとの道を行こうとする。…それはなぜか?不確かさが象を不安にさせるからだ(見知らぬ場所で、つい見慣れた顔に惹きつけられてしまうのはそのためだ)。そして、意志決定の麻痺が変化にとって致命的なのもそのためだ。最も見慣れた道とは、常に現状そのものだからだ。

“戸惑わない”ために必要なこと(P77)

必要だったのは、壮大な目標を日常的なレベルに落とし込み、健康的な食生活を送る数多くの複雑な選択肢を仕分け、手軽な開始点を提案してくれる人だったのだ。
あいまいさはその敵だ。変化を成功させるには、あいまいな目標を具体的な行動に置きかえることが必要だ。簡単に言えば、変化を起こすには、「大事な一歩の台本を書く」ことが必要なのだ。

「台本を書く」=「ルールを明確にする」(P79)

変化は意志決定や行動のレベルで始まるものだが、そこが難関なのだ。摩擦が生じるのはそこだからだ。惰性と意志決定の麻痺のせいで、人々は古い習慣から抜け出せない。したがって、人々を新しい方向へと進ませるには、とびきり明確な誘導が必要だ。だからこそ台本を書くことが必要なのだ。

もっと身近な目標を(P105)

立てる必要がある。両親、中間管理職、社会運動家でも目指すことができ、数十年ではなく数ヶ月や数年で取り組める目標が必要なのだ。

「目的地の絵はがき」(=努力して実現できる未来像)(P105)

このような近い将来に実現できる鮮明な未来像を「目的地の絵はがき」と呼ぶことにしよう。
(中略)
クリスタル・ジョーンズは、「もうすぐ3年生になれるわよ!」という素晴らしい「目的地の絵はがき」を描いた。彼女が生徒に掲げた目標は、象使いに方向を教えただけではない。象にやる気も与えた。心を揺さぶり、感情に火をつけた。コリンズとポラスは、目標には感情的な要素を盛りこむべきだと述べている。BHAGは壮大で魅力的なだけではいけない。「心に響く」ものでなければならないのだ。
※BHAG=壮大(Big)で困難(Hairy)で大胆(Audacious)な目標(Goal)

SMARTな目標*2はあてにならない(P113)

象に訴えかけ、心に響く目標を探す際には、SMARTな目標はあてにならない。80年代、組織の変革活動に関する大がかりな研究が行われた。その結果、顧客によりよいサービスを提供するとか、より役立つ商品を作るといった感情的な目標に比べて、経済的な目標はそれほど変革の成功にはつながらないことがわかった。
(中略)
その点、「目的地の絵はがき」はふたつの仕事をやってのける。象使いに行き先を指示し、象に旅の価値を納得させるのだ。

象使いの強みと弱み(P134)

象使いの強みは先見性だ。長期的な利益のために、短期的な犠牲を払うこともいとわない(象使いと象がたびたび衝突するのはそのためだ。象はたいていその場の満足を選ぶからだ)。また、象使いは賢い戦術家でもある。地図を渡せば、完璧に従うだろう。しかし、象使いのさまざまな欠点も見てきた。体力には限りがあり、あいまいさや選択肢に直面すると麻痺を起こし、解決策よりも問題ばかりに目を向ける。
(中略)

象使いを扱うポイント(P135)

まず、ブライト・スポットを手本にしよう。周りと違って栄養の足りていたベトナムの子どもたちや、高い売り上げを上げたジェネンテックの営業担当を思い出してほしい。周りを観察すれば他よりもうまく行っている部分を見つけることができるだろう。失敗にこだわってはならない。むしろ、成功を観察し、広めるべきなのだ。
次に、象使いに方向を教えよう。つまり、スタートとゴールを明確にするのだ。象使いに目的地の絵はがきをプレゼントし(「もうすぐ3年生になれるわよ!」)、大事な一歩の台本を書こう(「低脂肪乳を買おう」)。
このふたつを行えば、象使いは変化を引き起こす準備万端だ。そして怠け者で扱いづらいパートナー、つまり象と戦い続ける武器を手に入れることができるのだ。

分析的手法が有効なのは(P145)

コッターとコーエンは…「変数が既知であり、想定条件が少なく、将来が不透明でない」場合だと述べている。

変化が起こるのは(P146)

コッターとコーエンは、変革に成功した大半のケースで、変化は「分析し、考えて、変化する」の順序ではなく、「見て、感じて、変化する」の順序で起こることに気づいた。つまり、何らかの感情を芽生えさせる証拠を突きつけられた時、変化が起こるのだ。それは気がかりな問題かもしれないし、解決の一筋の希望かもしれない。あるいは、我にかえるような現実の描写かもしれない。いずれにせよ、感情のレベルであなたを揺さぶる何かだ。つまり、象に訴えかける何かといってもいい。

スタンプカードの「スタートダッシュ」(P174)

(洗車場がスタンプカードのキャンペーンを行った。8個のスタンプを集めれば洗車が1回無料になるカードと、10個集める必要があるが、はじめに2個のスタンプが押されたカードの2種類。どちらの客もゴールは同じく「8回洗車で1回無料」。結局スタートダッシュを切った客の方が、そうでない客の倍近くスタンプをためきり、しかもためきるまでの期間も短かった)
したがって、思っていたよりもゴールラインの近くにいると感じさせるのが、行動を促すひとつの手なのだ。

目標を小さくする(P179)

私たちは退職金の積立に恐怖したりはしない。巨額の預金を一度に振り込む必要がないからだ。退職金の積立は一度に少しずつ行うものだと理解している。それと同じ理屈で、家をきれいにするのではなく、今よりもきれいにすると考える方が気楽ではないだろうか?目標を小さくすることで、自分を恐怖から解き放つことができるのではないか?
その発想から生まれたのが「5分間お部屋レスキュー」という見事な自助テクニックだ。
(中略)
その方法とはこうだ。キッチン・タイマーを用意して5分間にセットする。次に、家の中で最悪の部屋に行く。ゲストには絶対に見せられないような部屋だ。そして、タイマーをスタートさせたら、手当たり次第に片づけていく。タイマーが鳴ったら作業は終わり。何の未練も必要なし。悪くないだろう?

史上最高の大学バスケットボール・コーチのひとりジョン・ウドゥン*3の言葉(P196)

「毎日小さなことを改良していけば、やがて大きなことが起こる。大きな改良を早急に期待してはいけない。日々、小さな改良を求めるのだ。それが変化を起こす唯一の方法だ――こうして変化が起きれば、それは持続する。

心理学者カール・ワイクの論文より(P197)

「小さな成功によって、困難が和らぎ(これはどうってことない)、欲求が抑えられ(これだけやればいい)、能力レベルの認識が向上する(これならできる)」と述べている。この3つの要素すべてが変化を楽にし、持続的にするのだ。

環境をシンプルに変える(P246)

環境を変えるというのは、適切な行動を取りやすくし、不適切な行動を取りにくくするということだ。実にシンプルだ。たとえば、アマゾンのワンクリック注文について考えてほしい。電話をかける10分の1の手間で、新しい本やDVDが買える。これぞ瞬時の満足だ。

アクション・トリガー(行動の引き金)(P280)

たとえば、あなたがずっとジムをサボっているとしよう。そこであなたは、「明日の朝、アンナを学校に送り届けたらまっすぐジムに向かおう」と決意する。このような心理的な計画を本書では「アクション・トリガー」と呼ぶことにする。あなたは、「翌朝に娘を学校に送り届ける」という環境の「引き金」に直面した時に、「ジムに行く」という「行動」を実行しようと決意したわけだ。
(中略)
…自分がしなければと思っていることに関しては、アクション・トリガーはやる気を生み出す大きなパワーとなるのだ。
この分野の研究の第一人者、ペーター・ゴルヴィツァーは、アクション・トリガーの価値は、意志決定の“事前充填”にあると述べている。先ほどの例で言えば、「アンナを学校に送り届ける」という行動が、「ジムに向かう」という次なる行動の引き金になっている。「次は何をしようか」と頭で検討したりはしていない。「意志決定の事前充填」を行うことで、象使いのセルフコントロールを温存しているのだ。

アクション・トリガーに期待以上の価値(P282)

があるのはそのためだ。ゴルヴィツァーは「意志決定の事前充填」を行う時、「行動の支配権を環境に委ねる」のだという。アクション・トリガーは「心を惑わす誘惑、悪い習慣、対立する目標から目的を守り抜く」効果があるとゴルヴィツァーは述べている。

アクション・トリガーが効果を発揮する場面(P283)

さらに、ゴルヴィツァーは、アクション・トリガーは象使いのセルフコントロールを極度に消耗するような困難な状況でこそ効果を発揮することを証明している。ある研究では、人々が「簡単な」目標と「困難な」目標を達成する度合いを分析した。簡単な目標の場合、アクション・トリガーを設定しても成功率は78から84%へとわずかに上がっただけだった。しかし、困難な目標の場合は、アクション・トリガーによって成功率が3倍になった。目標の達成率は22%から62%に急上昇したのだ。

*1:例など本を読んでいなければわかりづらい部分があります。ご了承ください

*2:SMARTの法則のこと。ブライアン・トレーシーや神田正典さんの本に出てきます。
S specific…具体的である/M mesurable…計測ができる/A agreed upon…同意している/R realistic…現実的である/T timely…期日が明確

*3:“ジョン・ウッデン”と同じ人のこと。両方の表記が同じくらい使われているようです