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“外資系生命保険で全社ナンバー1も取ったことのあるトップ営業”と聞いてイメージする営業マンと、表紙でにこやかに微笑む著者の姿はあまりに違う。「バリバリ」とか「デキる人」というイメージとはほど遠い*1。まえがきにある「本は読んでも年に3冊くらい、ビジネス書は読まない」「手帳はごく普通の薄いもの」というのを読んだ時は正直言って力が抜けた。
とはいえ、前職・リクルートの法人営業でも好成績をずっと維持してきた人なのだ。じゃあどうやって、と逆に期待が高まる。
「営業が売るのは自分自身」という言葉を何度か目にしたことがあるが、著者がされているのはまさしくそれなのだ。さらに、人と差をつけるためにはどうすればいいかを常に意識し、合格ラインが10ならいつも11を維持できるようにする。
ちょっとの違いが大きな差を生む、著者はそれを身を持って知っている。経験者の言葉は深く心を打つ。
この本を読んで思ったのは、営業とは相手を思いやるのが仕事なんだ、ということ。タイトルにもなっているハンカチとは、お客様の自宅に上がった時、土足で歩く場所に置いたかばんをじゅうたんや畳の上には置けないから、ということで常に携帯しているものだそうだ。必ずそのハンカチの上にかばんを置く。それだけで「この人に生命保険をお願いしたい」と思うお客様もたくさんいるのだとか。
他にも、徹底した「お客様の立場で考える」「お客様目線で自分を見る」姿がすごい。ここまでやるか、というエピソードの数々。
最後に書かれているが、営業とは人と人とのかかわりがあるところ、サービスのあるところには生かせる職業スキルなのだ。だからこそ、著者が講演を依頼される企業は病院など一見営業と関係のなさそうなところも多いという。人と関わる仕事はもちろん、人間関係に悩んでいる人にも役立つヒントが多いはず。ぜひ読んでみてください。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
自分を印象づける(P26)
「どうすれば、お客様に自分のことを強く印象づけられるのか」
それは周りにいる普通の営業の少し先回りをして、お客様に対して、「この人なんか違う」と何かしらの興味や感動を与えるしかない。そう考えた私は、まず「普通の営業だったらどうするだろう?」と常に自問自答することにしました。
お客様を尊重する服装(P38)
大きな声ではっきりと挨拶をしたり、お辞儀をしっかりするのと同様に、仕事上の服装は自が主ではなく、あくまでお客様を主に考えるべきではないか。その服装自体が、お客様を尊重することの表れじゃないか。
ライバルはお客様とおつき合いのある「すべての営業の人たち」(P45)
多くの営業は、どうしても一方通行の仕事をしてしまいがちです。自分目線で考え、「お客様と自分」という1対1の関係でしか、自分の仕事をとらえられていません。
しかし、お客様は、私とだけ会うわけではありません。お客様目線で考えれば、お客様と営業は、「1対1」ではなく「1対多」の関係。さまざまな営業という職種の人が周りにいるのです。そんな大勢の営業の中で、どうすれば自分だけが頭ひとつ抜け出して、お客様に「この人は違うな」「この人から買いたい」と思っていただけるのか。
そう考えると、どんな些細なことも、想像し、考え、実践していこうと思えるはずです。
ただし、単に奇をてらったり目立つことをすること=印象づけることではありません。
相手の立場に立ち、何が喜んでいただけるのか、何に感動していただけるのか、そしてそこに自分の気持ちや営業姿勢が反映されているのか。
これらを考えて工夫することが、大事なのだと思います。
基準ラインを超える営業(P67)
あるラインを超えた瞬間、人は興味を持つ――大手広告代理店の方から、そんな話を聞いたことがあります。
(中略)
テレビCMは何本以下なら、まったく効果がないのだけれど、何本以上になると急に効果が出るという傾向がある。そんな基準ラインみたいなものが、車や化粧品など宣伝する商品別にあるらしいのです。
(中略)
テレビCM同様、ある一定レベルを超えると、お客様が「この人、ちょっと違うな」と興味を持つ。そういう基準ラインを、お客様が持っているということです。
お客様の中に基準ラインを作っているのが誰かというと、いわゆる「普通の営業」の人たちです。お客様はさまざまな営業を受けながら、自然とその基準ラインができ上がっているのです。
(中略)
ただその基準値をほんの少しでも超えることができれば相手に興味を持ってもらえるのだと思います。
しかし、たとえばその基準値レベルを「10」とした場合、レベル「10」以下では、「10」も「5」も一緒にされてしまう。特に相手の印象に残らない、という点ではちょっと丁寧な10レベルの人も、さえない5レベルぐらいの人も、どちらも同じグループに入れられてしまうのです。
(中略)
だから、「普通の営業」との小さな違い、たった「1」の差を積み上げて、いつもレベル「11」以上の営業でありたい。そう思って、普通のことを「とことん」極めようと考えているのです。
本音の部分で相手目線にきちんと立てば(P86)
見えすいたお世辞など言う必要はありません。この心構えが、仕事の場面においても、生かされるのです。
お客様は「商品と一緒に周りの空気も買っている」(P100)
「空気」とは。会社の企業理念や、お客様に対するその営業の気遣いや思いやり、または営業の仕事に対する理念、ひいては、その人間の人生観や価値観などです。
社内でもワイシャツの腕まくりをしない理由(P102)
人とは違う営業になるということは、商品そのもの以外に、目には見えないけれども、確実にお客様の心に残る何かも一緒に提供することができる営業なのではないかと思うのです。
と同時に、ふだんの行動や言動か、「目に見えない空気」となってお客様に伝わってしまうということでもあります。
とるに足らない些細なことの積み重ねが、1人ひとりの空気を作り出しているからです。
(中略)
スーツは、シワになったり汗をかいたりするので、社内ではジャケットを脱ぐことはあっても、ワイシャツを腕まくりしたりすることはありませんし、ネクタイも外したりしません。サンダル履きで社内をウロウロなんてこともしません。
(中略)
毎年春になると新社会人が街に溢れてきます。彼らを見て、「あれ、新社会人だな」とわかるのはなぜでしょうか。
ふだんスーツを着ていないということを、空気として感じているからではないでしょうか。
同様に、お客様は目の前の私たちを見て、「ふだんのオフィスにいる私たち」まで感じているはずです。
まず、弱い自分を認めることから始める(P117)
それに対してどういった手を打つかで、周りの営業マン・ウーマンと差がつくのではないか。
辛いことと対峙せず、肩を組んで仲よくする(P118)
それは、アポ取りで「No」を受けた数を目標にするのです。
手帳のフリースペースに、「断られ目標」とか、なるべく明るい色のペンでタイトルを書いて、アポ取り電話で断られるたびに、「正」の字を書いていく。100までいったら、ご褒美としておいしいものを食べに行くとか、500をクリアしたら、新しい髭剃りを買おう!とか、そんな感じです。
(中略)
辛いことに真っ向から対決するのではなく、辛いことと肩を組んで歩いてしまうのです。
心から望むのは、どっちの「楽」か(P120)
(前職のお客様である書道家の先生に書いてもらったもの)
それは、次の言葉です。
「楽か 楽しいか」
楽とは、辛いことから逃げて得られるもの。
一方の、楽しいとは、辛いことを乗り越えてこそ、得られるもの。
今の自分をよしとした上で淡々と手を打つ(P121)
むしろ弱い自分を認めて、かっこ悪い自分をよしとして、それに対して淡々と手を打つことの方が、とても大切なんだと思います。
もっともいけないことは(P123)
契約してもらえなかったことではなく、その落ち込んだ気分を次に引きずってしまうことなのです。引きずってしまうとそこから底なし沼にはまってしまいます。
プライドを持つことよりも、プライドを捨てること(P126)
プライドを捨てること。それは要するに、弱い自分を認めることができること……私はそう思います。
生命保険営業の新人の頃に教えてもらった言葉(P168)
「お客様の自宅にプレゼンテーションに行く時、玄関に手を当てて、『今日私はあなたたちのことだけを考えてお話をします。ですからどうかご理解ください』と唱えてから、家のチャイムを押しなさい」
これはお客様にメッセージを送っているのではなく、自分に対して送っているのだと思います。
プルデンシャル生命・4つのコアバリュー(P174)
1.信頼に値すること
2.顧客に焦点を合わせること
3.お互いに尊重し合うこと
4.勝つこと
たとえば、
1.「信頼に値すること」というテーマなら、
「アポイントの5分前には現地に到着している」とか「専門知識を身につける」
2.「顧客に焦点を合わせること」なら、
「電話があったら、必ず1時間以内に折り返し電話する」とか「相手の話をよく聞く」など
3.「お互いに尊重し合うこと」なら
「元気に挨拶をする」とか「家族を大切にする」など
4.「勝つこと」なら
「目標を達成する」とか「毎朝6時に起きて走る」など
といった具合に各々がテーマに合った自分の行動指針みたいなものを自由に書き、机の上に置いておくのです。
営業は「ものごとを相手の目線で考える」究極の仕事(P209)
人を相手にする、まさに人間にしかできない仕事です。
そこに人がいて、サービスが発生すれば、何にでも生かせる仕事です。
(中略)
そこに人と人が関係してくる仕事であれば、どこででも生かせる職業スキル、それが営業という仕事です。
そういう意味で、営業は究極の「手に職」なのです。
*1:失礼はと思いますが、ご本人も文中で何度もそう書かれています