毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

ブームの作り方がわかる☆☆☆

著者は、PRの仕事を25年以上も続けているPRプロデューサー。これまでの実績がすごい。
今年の漢字」や「佐世保バーガー」「さぬきうどん観光」の仕掛け人はすべて著者だという。
たまたまネットでこの本の紹介を見た時に、「ひこにゃん」の全国PR戦略を手がけた、と書いてあったので驚いた。まったく知らなかったからだ。ひこにゃんファンとしては、これは読まねば、と思い借りてみた。内容の濃い、面白い本だった。

この本のターゲットは予算はないけどPRしたい、できればテレビで取り上げてもらいたい地方の観光課や小さな企業などだろう。どうやってテレビに売り込み、取材に来てもらうか。そのノウハウがこんなに手の内を見せていいんですか、というくらい書いてある。

テレビ局とのコンタクトの取り方やホームページとの連動方法まで、至れり尽せりだ。
テレビに売り込むには「プレスリリース」と呼ばれる書類が必要だそうだが、この書き方も細かく説明してある*1
この本1冊あれば、かなりのことができそうだ。


ターゲット以外の人でも面白く読める。たくさんの事例が紹介してあり、ブームの起こり方を知ることもできる。
ひこにゃんを全国区にするために著者が取った作戦は「プレスツアー」*2のメインにひこにゃんを据えること。観光担当記者は若い女性が多いことを見越して、母性本能に訴えるプレスリリースを作ったのだそうだ。
その結果たくさんの新聞記事にひこにゃんが写真入りで登場し、それがインターネットニュースになり、という連鎖報道で広がったという。
こんな仕掛けがあったのか、と驚いた。


また、新聞、雑誌、テレビという媒体の違いでアピールポイントが違うという話も興味深い。
さまざまな温泉のPRを請け負った時、著者はずらりと温泉の情報を並べて見せたそうだが、新聞、女性誌、テレビで取り上げた温泉はすべて違ったのだそうだ。新聞は文豪の愛した歴史ある温泉、女性誌は世界一の効能をうたった温泉、そしてテレビはビジュアルで訴えられる白濁した温泉だったとか。
“いかにしてテレビに取り上げてもらうか”という視点は、裏返せばテレビ番組はどんな風に作られているかを知ることにもなる。極端な形の「やらせ」までは行かないにしても、テレビが好む演出というのはこうして作られるのか、と納得した。


この本は団体がPRする方法を教えてくれるが、理論や基本的な戦略などは自己PRや自分ブランド構築の戦略としても充分使える。人にどう見せるか、というところを知りたい人にはヒントになると思う。
本来のターゲット以外でも、世の中の流れや流行のしくみなどに関心がある人には面白い本。おすすめです。


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。

テレビが注目するPR企画のポイント(P38)

…「何だこれ?」というようなビジュアルをプラスすると、必ずといっていいほど取り上げられます。

「広告からPR戦略に移行する」とは:童話『北風と太陽』のたとえ(P112)

…「自分の主張で人を動かしたい」場合は、北風のように力(お金)をもって人を動かそうと努力しなければなりません。しかし、「人に自ら行動を起こさせる」には、太陽のように旅人の周囲を温めなければならないのです。言ってみれば、北風は、“お金”を使って情報を流す「広告」であり、太陽は“仕掛け”によって世論を動かす「PR」にたとえられるのです。

「ひと言表現」は新聞やテレビのタイトルになりやすい(P117)

ひと昔前になりますが、当時の小泉首相の「ひと言表現」が話題になったことがありました。「小泉チルドレン」「小泉劇場」、そういえば「郵政民営化」もそのひとつかもしれません。
これらの「ひと言表現」は、新聞やテレビのタイトルになりやすいため、取り上げてもらえる確率がアップするようによく使われます。キャッチフレーズと言ってもいいかもしれません。
(中略)
…テレビに取り上げてもらうためには、話題の一部市場がビジュアルで語れるような「ひと言表現」で表現できることが必要なのです。

*1:著者の会社運営のサイト「メディアデビュー・ドットコム」では、必要事項を入力するだけでこのプレスリリースが作れる自動作成サービスが利用できます。しかも無料

*2:新聞記者や報道関係者に取材に来てもらうために企画するツアーのこと