「キング・カズ」ことサッカーの三浦知良選手*1が日本経済新聞に連載しているコラム(2006〜2010年)をまとめたもの。
ビジネスブックマラソンで東日本大震災の翌日に紹介されていた本。読むと元気が出る本だから、というのがその理由だった。
確かに、読むと前向きな気持ちになれる本だった。
ビジネスブックマラソンの紹介記事はこちら
カズはJリーグの立役者であり、今でも彼を超えるスターは生まれていないと思う(プレイヤーはいるかもしれないが)。
私のようにサッカーにうとくても、知らない人はいないくらい有名選手だろう。
プレースタイルや伝えられる言動から、その人物像は豪快でラテン系で細かいことは気にしないタイプのように思っていた。
ところが、そのイメージは覆される。はじめにそれを知ったのは雑誌「Number」特集“アスリート最強の食卓”(高橋大輔選手のサポートを『勝負食』の石川三知さんが担当した記事が載っていた号)の、カズが栄養指導を受けて体重や体調を維持しているというエピソードだった。
好きなものを好きなだけ食べていた時期もあったそうだが、体力の限界を感じ始めたある時期から徹底的に食べるものの管理を始めたそうだ。
この本を読んで、食べること以外にも細心の注意を払い、熱心に練習をし、体の手入れも欠かさないことを知った。だから40歳過ぎても90分間フル出場できるコンディションを維持できるのだ、と納得した。
しかも、精神面もすごい。10代で単身ブラジルにサッカー留学した頃の話や、ヨーロッパのクラブチームを渡り歩いていた時の話、そしてなかなかJ1に上がれない現在まで、さまざまな修羅場をくぐってきたからこそ言えることばの数々には重みがある。
そして、不思議な元気が湧いてくるのだ。
新聞のコラムなので、ひとつの記事は短く、気楽に読める。自伝のような系統だったストーリーでも、『心を整える。 』のような、テーマごとにまとめられた本でもない分物足りなさも感じるが、さらっと読めて自分もやるぞ、と思えるのがこの本のよさだろう。
長く現役を続けるための体の扱い方やメンタルの話などがあるので、実際にスポーツをしている人には役に立つのではないだろうか。
カズがあまり好きじゃない人にも読んでもらいたい1冊。
私のアクション:考えてもいいけど、とにかく前に出る
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
結果よりも自分が楽しむことが大切(P57)
そして楽しむ=一生懸命やるということだ。
ゆとりと油断は違う(P154)
ゆとりと油断は似ているけれど、その違いは意識が自分に向いているかどうかだ。相手が格下だから大丈夫とか、勝てるだろうと思うといけない。必要なのは、自分はこれだけ準備してきたという確固たる自信。
追い込むことで身につくことがある(P166)
これは今まで自分を追い込んできた蓄えがあるからでもある。与えられたとおりにやるのでなく、どこかで自分と闘い、追い込むことで身につくものがある。そうしてきたからこそ、今でもちゃんとした成果を出せるというか。
真の一流はつぶれない(P207)
強いハートや自分を信じることで乗り越える。この世界、技術はそれほど差がなかったりもするんだ。一流や名門との差は、そっちの差かもしれないね。
1センチでもいいから前へ進むんだ(P244)
17歳の頃、ブラジルで悩んでいた僕は諭されたものだ。…「考えるだけで止まっている人間はたくさんいる。お前もそうだ。考え、悩め。でも前に出ろ」