北島に関する本はたくさん読んできたが(ほとんどは平井コーチがメイン)、この本で初めて本当の北島康介がわかったような気がする。
平井コーチのもとを離れ、ひとりロサンゼルスで練習をする北島選手のことをよく言わない報道も多い。
正直、なぜこんなに結果を出してくれたコーチを離れて自分でやりたいと思う選手が多いのか不思議だった。高橋尚子さんしかり、有森裕子さんしかり。
でも、この本を読めば北島がさらなる進化を求め、実際に進化していることがよくわかる。渡米後に出場した大会で結果が出せなかったの理由も隠さず書かれていて、とても納得がいった。
オリンピック後のインタビューでのふたつの名言も、その背景がわかる。
この本を書けるのは最大のプレッシャーがかかるオリンピックで2種目2連覇を達成した北島だから。
ひとつひとつのことばに重みがある。この人だから言えること、心に響くことがたくさんある。
そして、彼を支えるのが気持ちの強さ。数々の修羅場をくぐり抜けてきた経験に裏打ちされているが、ここに書かれている気持ちのコントロール法やモチベーションの上げ方、マイナス思考にどう対処するかなどは、超一流のメンタル管理術だ。
スポーツや勝負の世界以外でも、大きなことを成し遂げたい人には、とてもいい本だと思う。ぜひ読んでみてください。
私のアクション:不安になったら初心に帰る。その思いで頭をいっぱいにして不安の入る余地をなくす
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
何が幸いするか、災いするかは本人の気持ち次第(P77)
進化する気持ちを持っている限り、人は進化し続けることができるのだ。
自分に大きな目標があるのなら(P94)
そのために必要なもの、不必要なものを見極め、ある一定のルールを設け、それを守る意識を持つことは重要だ。それによって、目標に向かうまっすぐな姿勢もできてくるはずだ。
ふたつの「目」を持つ(P107)
勝負の瞬間に向けてコンディションを整えていくために、僕は自分の体調や精神状態などを見続けるふたつの「目」を持つようにしている。自分の状態を素直に感じる「主観の目」と、その主観に対して冷静に分析する「客観の目」。このふたつを使い分けることで、正確に自分の状態を把握することができるのだ。
自分を知ることは、自分で限界を決めることではない(P115)
自分以外の全員が無理だと思っていることでも、自分だけ実現を信じるくらいの気持ちがなければ、高い目標には到達することはできない。
(中略)
無理だと思ってあきらめるか、無理ではないと自分を信じるか、それは意識の切り替えひとつで変わる。僕がいつも前向きでいられるのは、どんな時でも自分に対して、いいイメージを持ち続けるようにしているからだ。
「負けたら、次はどうしよう」と考えればいい(P119)
負けた瞬間は本当に悔しいが、すぐに頭を切り換えて「次に勝つにはどうすればいいか」を考え、自分が勝つためのシミュレーションをする。出てしまった結果をいつまでも悔やんでも意味がない。失敗や敗北もポジティブに考えれば、ライバルを知り、自分を客観視するチャンスだ。負けることは怖くない。「負けたらどうしよう」ではなく、「まけたら、次はどうしよう」と考えればいいのだ。
伸び悩む時期は次の段階への助走期間(P121)
伸び悩む時期があったとしても、それはスランプではなく、次の段階への助走期間なのだ。助走が短い時もあれば、長い時もある。助走が長いほど、そのあとのジャンプは大きなものになる。大切なのは、そこを自分の限界だと考えてしまわないことだ。
北島選手の泳ぎを支える強い気持ちのポイント3(P128)
・強い自信
・ほどよい集中力
・プレッシャーとの上手なつきあい方
自信に根拠は必要ない(P128)
目標に向かって進んでいく時、絶対に失ってはならないのは自信だ。「自分ならできる」「自分は絶対に目標を達成できる」と信じる気持ちを持ち続けていなければ、困難にも立ち向かっていくことができない。
経験や実績に基づく自信であればベストだろう。僕も長い水泳人生でさまざまな経験を積んできたし、その経験に助けられながら、今も競技を続けている。しかしはっきり言って、自信に根拠は必要ない。なぜなら、これから目指す未来においては、それが自分のものであれ他人のものであれ、前例にはほとんど意味がないからだ。