毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

池上彰さん「わかりやすさ」の秘密がわかる☆☆☆

残念ながら、春ですべてのTVレギュラー番組を降りてしまった池上彰さん。解説者を変えて続けている番組もあるが、不思議なものでやはり池上さんじゃないと見ない。あの親しみやすさとわかりやすさは得がたい資質なのだろう。

この本は、その池上さんの「わかりやすさ」がどうやってできているかを余すところなく伝える良書だった。

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タイトルは「勉強法」だが、インプット/アウトプットの両方を取り上げてある。プレゼンなど特に伝えることを重視する場合は別だが*1、日常生活で理解してもらうためのポイントはすべてこの本でカバーされていると思う。

中でも興味深いのは、人はどこがわからないのか、何をどう説明すればわかってもらえるのかという池上さん曰く“キモ”の部分を抽出する方法。
ひとつひとつはむずかしい方法ではなく、誰でもできるようなもの。だが、この「ごくふつうの作業」を続けることが、池上さんを代わりのきかない存在にしているのだ。小さなことを地道に継続する大切さを改めて感じた。

手帳やノートの使い方や時間術まで、得られる情報は幅広い。いいたいことがうまく伝わっていないと感じる人、知的生産性を特別な道具を使わずに上げたい人はぜひ読んでみてください。
私のアクション:読んでいる本にA4を四つ折りしたメモをはさみ、こまめにメモする
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。

「自分は何がわからないのかを知る」の意味は(P28)

優先順位をつけられるだけ内容を理解しているかどうか自己確認をするべきだ、という意味です。

「自分はどこがわからないか」がポイント(P30)

毎日の生活にはフロー情報(=流れていくもの。日々新たに伝えられ、すぐに消えていく情報)があふれています。もし「わかりやすく伝える」ことができるようになりたいなら、ただ情報を追いかけるだけでなく、「この情報について、自分が理解できない点」を常に見つけるようにするのです。
(中略)
フロー情報で自分がわからない点を見つけ、ストック情報(=本、辞典などの形で保存されているもの)で勉強する。これをくり返していくうちに、いつしかあなたは「わかりやすい説明」ができるようになっていくはずです。

優れた専門家ほど、素人にわかりやすい説明ができる(P56)

ある分野に関して、大学の学部生が意外にわかりやすい説明ができるのに、大学院生になると、とたんに話がむずかしくなる。指導教授になると、一転してまたまた話がわかりやすくなる、という構造があります。
この場合、学部生の「わかりやすい説明」が、物事を単純化しすぎていたり、ニュアンスをゆがめたりしている可能性があります。そこで、あなたは、大学院生を経て指導教授を目指しましょう。
(中略)
最初の単純化(=大学生)で満足せず、さらに高みを目指すとスランプに陥る(=大学院生)。そこを突破すると、「わかりやすい説明」が可能になる(=指導教授)。このプロセスが、キモなのです。

自己流の「編集力」を磨く(P135)

雑多な事実の中から何を選ぶか、選んだ事実をどのように並べるか、選ぶ力と並べる力、そのふたつが言ってみれば「編集力」なのです。
(中略)
できごとを自己流に解釈して並べる力、あるいは「解釈した結果、こう言える」と伝わる形に並べ直す力、それが編集力の第2段階です。

フロー情報とストック情報の両方を集める(P140)

何かを調べる時には、新聞記事やネットに掲載されているフロー情報と、本の形にまとまっているストック情報の両方を集める。
(中略)
この基本ルールに沿って、愚直に情報を集めて、自己流の“編集機”であるクリアファイルに入れて編集し、資料を見ているうちに集めた情報が自分の中で発酵し、やがて話のキモを見つけることができる。

アマゾンの読者レビューの使い方(P147)

…レビューが文章として優れているかどうかに注目します。文章として優れているとは、感情的でなく冷静な筆致で、論理的な文章になっているか、ということです。
…レビューを読む人のことを考えた、わかりやすい書き方をしているか、ということなのです。それだけの能力のある人が高く評価していれば、あ、この本は役に立つな、というのが、私のレビューの読み方です。

A4の裏紙を四つ折りにして本のメモに(P152)

…A4のプリントアウトの裏紙を四つ折りにしたものを、本にはさんでおきます。本を読んでいて、参考になる文章を見つけると、この紙に書き込んでいくのです。読みかけのページにはさむので、しおりがわりにもなり、一石二鳥です。

手帳のページ使い分け(P162)

…他人と時間を共有するスケジュールは左、自分一人で管理できるスケジュールは右という分け方になっています。

取材ノートのページ使い分け(P163)

…B5の大学ノートを持って取材に行くようになりました。
このノートは次のような使い方をします。
まず、現場や取材でメモを取るのは、見開きの左側のページです。そこに、キーワードや固有名詞を、1ページ5〜6個見当で、間隔を空けて走り書きでメモしていきます。
(中略)
取材が終わったあとは、なるべく時間が経たないうちに、もう一度ノートを開きます。
今度は、右側のページに書き込む番です。左ページに書き取ったキーワードや固有名詞を元にして、どういう話だったのか、今度は文章で再現していきます。
(中略)
その日のうちなら、キーワードや固有名詞が、どういう文脈の中で出てきたのか、全体での位置づけも含めて文章で表現できます。でも、1週間も放っておくと、キーワードの意味はわかっても、キーワード同士の関係や文脈を忘れてしまい、文章の形でメモを起こすことがむずかしくなります。なるべく早いうちに文章として右側に再現することが肝心なのです。
(中略)
さらに、右ページの下から数行の部分を太い横線で区切って、その下には、しゃべっている時のその人の顔つきや口調、その場にいたほかの人の様子、暖かかったか寒かったかなど気象の様子まで書き留めておきます。取材の時に自分がどう感じたのかという感想をメモしておくこともあります。

「耳で聞いてわかる」表現を(P185)

「どんな政治が望ましいか、政治家をセンタクしよう」と言われたら、一瞬「洗濯」という文字が浮かんでしまうかもしれません。言いたいのは「選択」であったら、「センタク」と言わずに「選ぶ」というだけで誤解を避けることができるのです。
(中略)
相手の耳に入った瞬間に意味がわかれば、その分、ことばの意味を考えるなどの余計な手間が不必要になり、相手にわかりやすく伝わるようになるのです。

質問してくれることに感謝する(P204)

相手が何を知りたいのかをきちんと聞き取ることができれば、それに対する説明も的確にできます。
それを、「相手はこういうことを聞きたいのだろう」と勝手に思い込んで説明すると、相手が求めていることとは違いますから、「よくわかりませんでした」ということになってしまいます。
「何を聞いてもいいんですよ、あなたが何を知りたいのか、興味があります」という無言のメッセージを常に出し続けることが大事なのです。
相手にとって何がわからないのか、私にはよくわかっていないのだから、まず、何を聞きたいのかを教えてもらいたい。そして、相手が何か聞いてくれたら、
「あ、そういうことがわからないんだな。その点を私は気づかなかったな。そういうことを私に知らせてくれてありがとう」
そんな感謝の気持ちをいつも持っていると、相手の質問をちゃんと受けとめることができるようになるはずです。

集中力を高める方法(P210)

「こういう時に集中できた」という経験は、ビジネスパーソンなら誰でもあるでしょう。そのような経験を重ねているはずです。
大勢の前でプレゼンテーションする時には緊張するし、どんな質問にも答えられるようにしようと集中するはずです。
その感覚を忘れないでいて、いつでもその力を引き出せるような訓練をしておく。一種のイメージトレーニングとも言えますね。
そのイメージトレーニングにもとづいて、実際に集中して仕事をやってみましょう。驚くほど早く仕事が片づくはずです。あるいは、集中して読書してみましょう。短時間で本が読めるはずです。

細切れ時間を有効に使うには(P211)

毎晩、手帳を見て翌日のスケジュールを確認します。スケジュールの合間に、短時間の空き時間があるはずです。この時に何が可能か、あらかじめシミュレーションをして、持って行く単行本や雑誌を選び、カバンに入れておきます。

新幹線の車内では(P214)

たとえば連載の原稿なら、…A4のプリントアウトの裏紙のメモに、太さ1.6ミリという芯の太いボールペンを使い、大きい文字で、書き出しと、記事中の小見出しだけを書いていきます。
全体の流れがまとまっていれば、あとは、帰宅してパソコンに向かい、そのメモを見て書き始めます。新幹線の車内でそのような準備をしておくだけで、すぐに書き出すことができます。

*1:その場合は『わかりやすく〈伝える〉技術 (講談社現代新書)』がおすすめ。※5月に読んだ本ですが、まだUPできていません…