7月に書店で見かけてなぜか気になり、その後新聞広告でくわしい内容を知り、読んでみたくなった本。
8月に購入し、ゆっくり読んだ。とても美しい本だと感じた。
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著者の桝野俊明(しゅんみょう)さんは、禅宗(曹洞宗)のお坊さんであり、禅寺の庭園デザイナーでもある方だ。禅をベースにした著書もたくさん出されている。
禅と言えば究極まで「削ぎ落とす」、仏教の中でももっとも簡素で厳しい宗派だ*1。
デザイナーもされている著者は、削ぎ落としてたどり着く美しさをよくご存じなのだと思う。本の装丁も、ことばも、後ろに掲載されているご自身の写真も、とても美しい。
この本で一番印象に残ったのは、「所作を整えると心も整う」という、実にシンプルなことだった。
所作は乱れているが、心が落ち着いている人はいない。心を美しくしたければ、形から入ればいいのだ。
おそらくこの本は20代女性に向けて書かれたものだろう。ひとつひとつは簡単なこと、それもやさしい言葉で書かれている。
でも、俗世にまみれている私たちには、これを一度に全部やるのはたぶん無理。正直に言って、この本ばかりを読み続けていると、お説教されているようで少々辛くなった。
でも、折に触れてページを開き、読んでなるほど、と思ったことを実際にやってみるだけで充分だと思う。
仏教用語の正しい意味や、禅の考え方もていねいに解説してあるので、仏教に興味がある人には入門書にもなりそうだ。
外見だけでなく、内側から美しくなりたい人はぜひどうぞ。
私のアクション:おじぎはあいさつの言葉を伝えてから
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
心を整えるために、まずみずからの所作を整えるのが禅の修業(P4)
立ち居振る舞いが整えば、自然と心も整う。心が穏やかであれば、言葉にやさしさや思いやりがにじみ出てくるものです。
仏教の教え「三業を整えよ」(P21)
三業とは「身業」(しんごう)「口業」(くごう)「意業」(いごう)の3つ。つまり、身(体)と口、意(心)を整えて生活することで、よい縁を結ぶ条件がそろう、というわけですね。
眠る3時間前を境界線にして、そこでその日は終わらせてしまう(P111)
仕事のミスや人間関係のトラブルがあったとしても、いったんエンドマークを打つのです。逆に気分が高揚することやうれしいことがあっても、余韻を引きずらないようにします。
禅語「即今、当処、自己」(そっこん、とうしょ、じこ)(P137)
即今はたった今、当処は自分がいるその場所、自己は自分自身、ということです。
(中略)
今、自分が置かれている場所、状況の中で、やるべきことを、自分自身で一所懸命にやる。それが生きていることだ、とこの禅語は言っているのです。
「あるべきものが、あるべきところに、あるべきように、ある」(P170)
という言葉があります。それが自然ということです。いつでもありのままの姿でいる。それ以外に本当のあなたらしい美しさを輝かせる方法はありません。
*1:と理解しています