家族が借りてきた本。著者は府中美術館長で大学教授も務める人で、著書も多数。中経の文庫でシリーズも出している。
そんなきらびやかな経歴の人なので、さぞお堅い内容かと思ったら、今まで読んだ中で一番親しみやすかった。
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時代の流れに沿って印象派以前やポスト印象派、さらに日本人と印象派まで、オールカラーで解説を見ながら楽しめる。
なぜ日本人は印象派の絵がそんなに好きなのか、という命題にも自説を展開されている。
絵の解説は先生と、元教え子で現在は美術館や文化施設で働く女性2名との会話になっているので、実際に美術館巡りをしている気分で気楽に読める。
この本の素晴らしいところは、著者がかなりの印象派研究者らしく実際の場所の写真(ほとんどが著者撮影)や習作、他の画家の絵が一緒に紹介されているので比較しながら見られること。また、なかなか他では読むことのできない画家の人となりや裏話なども面白い。
ただ、著者の好みが全面に強く出ているのは賛否分かれるところだろう。私はセザンヌはあまり好きじゃないのでけなしてあっても気にならないが、そんなにマネに肩入れしなくても…などと思いながら読んだ。
とは言え、ほかではあまり扱いの大きくないカサットやモリゾが大きく取り上げられていたり、ルノワールの晩年の作品を詳しく解説してあったりと興味深いところもたくさんあった。
面白おかしく書いてあるようだが、深い知識がなければ書けないのも確か。
この著者の他の本『ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか』『ルーヴルの名画はなぜこんなに面白いのか』『聖書の名画はなぜこんなに面白いのか』も読んでみたくなった。
ある程度印象派について知識のある人なら、面白く読める本。ほとんど知らない人は、正統派、アカデミックな本を読んだあとに読むのをおすすめします。知識の刷り込みは危険なので*1。
私のアクション:ポーラ美術館に行く
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