そんな人が「ドラえもん」をテーマに*1お金の話をするという。どんな本なのか興味がわき、図書館で借りて読んでみた。
私がよく覚えているのは“持ち家はソンかトクか”というテーマの回で、森永卓郎さんや勝間和代さんなどに混じって複数の専門家が自論を競わせる内容だった。坂口さんは賃貸派で、数字をきちんと出してわかりやすく説明する姿が印象的だった。
この本では、その「家を買うべきか」はもちろん、「保険に入るべきか」「結婚するべきか」「子供にかかる費用を冷静に考える」*2「転職・起業するべきか」について書かれている。
この本のスタンスは、どちらがいいと結論を出すものではない。根拠となるデータや概算、仮説などを並べて「自分で決めてね」というものだ。そのクールさがいい。
著者自身のスタンスでは「家は買うより賃貸」「保険は入らなくてもよい」「結婚は相手がいるなら早くしたほうがよい」「家を買うなら、子どもにかかる費用をよく考えてから」となる(最後の転職・起業だけはやや趣旨が違うので割愛)。特に、既婚でお子さんが生まれたばかりなのにお住まいは賃貸、保険にも入っていないそうなので、いわゆる“常識”では「無責任な夫・父親」と言われかねない。
でも、それにはきちんと根拠があり、それはこの本を読めばわかる。
この本が説いているのは、一般的に常識と呼ばれているものが本当に正しいのか、一度考えてみたらどうですか、ということだ。
たとえば、生命保険は本当に必要なのか、必要と判断したとしても、今の加入額がベストなのか検討したことがあるだろうか。言われるまま加入し、言われるまま保険料を払っていないだろうか。
以前は土地の価格も給与も右肩上がりという前提だった。今はそれが変わってきているのに、人生設計が昔の前提のままになっていないだろうか。
非常にわかりやすい。ともすれば数字の羅列で頭が痛くなりそうなところを、ドラえもんのさまざまなエピソードを挟んであるおかげで読む気が持続するのも、この本のよさだろう*3。
最後の章は実際に独立・起業した著者の経験から、これまでの章とはやや違う、熱い思いのこもった話が展開する。具体的な方法はほとんど書かれていないが、独立・起業をする時にどう考えればいいのか、何が大変なのかという貴重な言葉がここにはあると思う*4。独立・起業を目指している人はぜひ読んでいただきたい。
私が一番面白いと思ったのは、ファイナンシャル・プランナーでも立場によって言えないことがある、ということ。たとえば、生命保険系のファイナンシャル・プランナーなら、「保険は加入しなくてもいい」とは口が裂けても言えない。住宅を売るのが目的の場で家計相談を受けているファイナンシャル・プランナーは、当然のことながら家を買っても何とかなる「前提」の元に算出する。
その前提が果たして現実的なものなのか、それは私たち自身がきちんと検討するしかないのだ。
人は「こうしたい」と決めたら、それを裏付けする情報しか目に入らなくなるという。そうなってしまう前に、検討材料のひとつとして読んでみる価値のある本です。
私のアクション:自分に独立する価値があるか、再検討する
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
人間の仕事の能力は「没頭×経験×学習」で決まる(P210)
ムダの中からしか、チャンスは生まれない(P219)
確かに多くの広告は出すだけムダで、お金をドブに捨てているようなものですが、それでも出し続ける必要があります。
独立・起業するかどうかの判断は(P224)
その選択肢の方が、自己の幅が広がり、自分が社会に提供できる価値が上がると判断した場合です。