毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

「負け」を最大に活かすには☆☆☆

負けかたの極意
野村 克也
講談社(2013/05/21)
¥ 1,365

ご存じ野村・前楽天監督の今年5月に出た本。「負けから何を学び、どう活かすか」というテーマは、先に読んだ為末大さんの『負けを生かす技術』と同じ*1
ただ、野村前監督はすでにたくさん本を出されているので、新しい内容はほとんどなかった。


◆目次◆
はじめに
第1章 人は勝利から学ばない
第2章 敗者の特権
第3章 再生も負けからはじまる
第4章 負けかたの極意
第5章 負けを活かすために何が必要か
第6章 負けを活かすリーダーの条件
おわりに

借りてきた家族によるこの本評は「年寄りの自慢話」だそうで、残念ながら私もそれに同意する。
ご自分の生い立ちの苦労話に始まり、テスト生から這い上がって三冠王まで上りつめた話。言うことを聞かない選手との確執や、他球団の“お荷物”選手をトレードで押しつけられたが、復活・大活躍した「野村再生工場・第1号」の話。
すでに何度も読んでいるが、だんだんぐちっぽく、頑固になってきたと感じるのは気のせいだろうか。


面白かったのが「野村再生工場」の考え方。誰をどんな風に再生したか、という話は今までにも書いてあったが、そのセオリーのようなものは初めて明かされたのではないだろうか。

…敗者が持っている悔しさ、反骨心を引き出すとともに自分の長所に気づかせる。次に、その長所を活かす方法と場所を与え、自信を持たせてやる――これが再生で最も大切なことなのである(P104)

見返してやる、という気持ちに火をつけるのはひとりでもできそうだが、長所に気づかせる、新たに必要な武器を身につけさせる、といったところはやはり目利きの指導者がいなければ難しいかもしれない。
それは著者の長年の経験と観察眼によるものだろう。

ただし、これはちょっと、と思う点もふたつあったので挙げておく。
1.昨年優勝した北海道日本ハムファイターズについて触れているところで、監督名を出さず「1年目の素人監督」としか書いていない。
前任の監督2名が野村野球を参考にしていて、去年の優勝はその恩恵だ、ということらしい。
確かに、昨シーズンコーチは全員留任だったし、梨田さんの遺産で勝ったというのもあるだろう。
だが、名前を出さないのは栗山さんに失礼ではないか。曲がりなりにも教え子なのに、と思って調べたら、野村さんがヤクルトスワローズの監督に就任した1990年シーズンを最後に栗山さんは現役引退している。わずか1年でも、自分と接点のある人をあの扱いはちょっと感じが悪い。

2.2007年日本シリーズ第5戦、中日・山井投手の交代に事実誤認がある。
8回まで完全試合ペースだったのに、9回に抑えの岩瀬投手をマウンドに送ったのは非情采配だとしているが、これが事実と違うことは落合前監督の『采配』(2011年11月)にも、森繁和前投手コーチの『参謀』(2012年4月出版)にも詳細が出ている*2
にもかかわらず“非情”と決めつけるのはどうかと思う。編集者もチェックしなかったのだろうか。
その辺もあり、全体に自説に固執しているように感じられてちょっと残念だ。


「失敗をどう活かすか」というテーマは第5章「負けを活かすために何が必要か」を読めば充分。今までの著書にも“失敗から学ぶ”方法には出ているが、よくまとまっているので初めて著者の本を読む人にはよさそう。すでに何冊も読んだ、という人はななめ読みでいいです。
私のアクション:「今している努力は正しい努力?」と問うくせをつける
関連記事
読書日記:『野村再生工場』
読書日記:『敵は我に在り』(下巻)
読書日記:『考える野球』
読書日記:『野村ノート』
読書日記:『負けを生かす技術』


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。

哲学者・鶴見俊輔さんの「敗北力」とは(P5)

※野村氏による要約
常に最悪の状況を想定し、そういう事態に陥らないためにどうするか、さらにそうなった時にはどうするかという「そなえ」――ただ漠然と毎日を過ごすのではなく、あらかじめ感じ(予感)、あらかじめ想い(予想)、あらかじめ測り(予測)、あらかじめ防ぐ(予防)という姿勢――を怠らない心構えを持つと同時に、負けや失敗から学び、それを勝ちや成功につなげる力

敗者は変化を恐れない(P78)

勝者は変化を好まない。下手に変えれば、失敗するかもしれない。
「今のままでやれているのだから、それでいいじゃないか」
そういって、それまでのやり方を踏襲しようとする。
対して、敗者は変化を恐れない。…今のやり方ではうまく行かないのだから、変わる、あるいは変えるしかない。

人間は、負けて初めて現実の自分と真剣に向かい合う(P84)

負けた自分を見つめるのだから、楽な作業ではない。その時、「自分にはもう無理だ」とあきらめることなく、「もう一度這い上がっていこう」とするだけの強い覚悟を持てるかどうか――それが、その選手が再生できるかどうかを分ける

確認を怠るな(P115)

…いわゆる「たら・れば」の事態は、確認を怠ったことが原因であるケースが圧倒的に多い

「小事」を大切にする(P154)

「一流選手とは修正能力に優れた選手」
これは小事に気づき、小事を大切にするからできること。
わずかな違い、かすかな変化に気づき、見逃さない。こうした能力に優れているからこそ、失敗の原因を究明し、修正できる。

間違った努力を避けるために「自問自答」する(P169)

「本当に自分は正しい努力をしているのか。日々、自分自身に問いかけることを忘れるな」

「言い訳は進歩の最大の敵である。責任を転嫁するのは二流。一流は言い訳をしない」(P180)

負けを活かす方法とは(P183)

目指すべきビジョンと現状との差を明確にし、つまり課題をしっかり把握し、その差を埋め、克服するための方法論を徹底的に考え抜き、それにもとづいて日々の行動を規定していく

*1:すみません、まだ読書日記は書けていません2015.2UPしました(関連記事にリンクがあります)

*2:真相は、マメが潰れて出血していたため、山井投手本人が「9回は岩瀬さんでお願いします」と言ったそうです。監督もコーチも、本人が行きたいと言ったら行かせていた、と明言しています