テレビ番組ではよくお見かけしているので、どんな内容かなと興味を持って読んでみた。
さすがの林先生らしい、痛いところを突いてくる本だった。
◆目次◆
はじめに
PART1 仕事といかに向き合うか
PART2 必ず結果を出す人の「対人力」
PART3 すべてを勝ち負けで考える
PART4 自己演出と自己管理の方法
おわりに
20代の男性向け雑誌『BIG tomorrow』*2の連載を元に、加筆・再構成したもの。
語り口調なので、読みやすく、すぐ読めてしまうが、書いてあることはそれなりにシビア。
ただ、こうやれ、というのが目的ではないそうだ。
この本において、僕の「仕事観」に基づいた僕の考える仕事の基本、すなわち「仕事原論」を明らかにしました。その目的は、多くのこの種の本のように、このやり方を受け入れて仕事をしてください、ということではありません。
(中略)
他者の「仕事観」を知ることは、自らの仕事観を見直すことにつながります。……この本がみなさん自身の「考えるヒント」となりますように。(後略)(P6)
- 自分が勝負できるフィールドを探し、そこで勝ち残る
- すべてを勝ち負けで考える
など、非常に戦略的。
嫌いな(とご自分で書いている)予備校の仕事も、誰よりもできると判断し、工夫しながら続けてきた著者ならではの考え方だと思う。
もともと得意なのは数学なのに、生き残るために現代文を教える科目として選んだというのも普通の人にはなかなかできないことだ。
ブームの渦中にある時に「勝てるフィールドとして現代文を選んだ」とテレビ番組*3で話されているのを聞いてびっくりしたが、この本を読んでその理由がよくわかった。
と、お堅い仕事論かと思ったら、人をもてなすためのお店の選び方やプレゼントの選び方などもかなりのページを割いている。
これも仕事?と意外に感じたが、仕事を成功させるにはいいコミュニケーションが必要不可欠、という著者の考え方なのだ。
人間関係の築き方には「あざとい」と言われても仕方ないようなやり方も書いてある。
それを取り入れるかどうかは別だが、こういう視点があるのを知っておくだけでも違うだろう。
流行語大賞に輝きながら一発屋にならず、文化人枠にしっかり自分の位置を作ってしまったさすが著者ならでは、の部分も多い。
シビアなものの見方も多いし、鼻につくと感じるところもあるが、やはり結果を残している人なので納得させられてしまう。
「どんな風に考えたから生き残れたのか」という視点で読むとなかなか面白い。
かなり手の内を明かしてあると思うので、わかりやすい成功例として一読をおすすめします。
私のアクション:プロセスに責任を持つ
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
やりたいことにこだわりすぎない(P27)
※やなせたかしさんのことば
「運に巡り合いたいのならば、なんでも引き受けてみるといい」
自分の好き嫌いなどという小さなものさしにこだわらないことが、運に巡り合う秘訣だ。そう読み替えることもできる。
自らすすんでダマされていないか?(P47)
一番悪いのはダマす人だが、ダマされやすい人は「おかしいな」と思いながらも、自分に都合のいいように解釈していることも。
人を見る目を養うと共に、自分のしていること全体をいつも冷静に見ている自分を養うことも必要。
わかってほしいようにわかってあげる(P57)
「この人は、自分のことをよくわかってくれている」。そう思った時、人は相手のことを聞こうと思うもの。
ただし、正確には「この人は、自分がわかってほしいと思うようにわかってくれている」これがすべての基本。
いかに「勝負」という感覚で仕事に取り組めるか(P97)
一つひとつの仕事を「勝負」だと思って、真正面から真剣に取り組む。うまくいけばそれでいいやという感覚を捨て、よりよい勝利を目指して貪欲に立ち向かう。そうした姿勢を貫くことによって、運も味方してくれるようになる。
何かに負ける時の原因は「情報不足」「慢心」「思い込み」(P101)
この3つと、目の前に広がる時間と空間を見通す感覚、つまりは想像力が足りなかったことで大きな敗北に至る。
「この人と戦っても勝てないな」と相手に思わせる(P108)
ビジネスでは「弱いものを叩け」が鉄則。勝負を挑まれないためには、「この人と戦っても勝てないな」と相手に思わせる状況を先に作ってしまえばいい。
一般的には、自分の2倍は強いと感じたら、敵は仕掛けてこない。
2倍以上の差があると思わせる状況を作る。
敗北を喫した時には、潔く認める(P133)
そのことが、次の勝利を呼び寄せる。
時間のトラブル回避に必要なのは想像力(P150)
自分の目の前に広がる時間をしっかりと見通し、起きうるトラブルを予想し、その対策をあらかじめ立てておく。
すべてのトラブルを回避することはできないが、「この時間を支配しよう」という意識で未来を見通す感覚を磨いていけば、創造力のレベルが上がり、危機回避能力も上がっていく。
トラブルは「怠惰の産物」であることが多い(P151)
空間のトラブルによる危機回避に必要なのは観察力(P151)
モノ、人、周囲のすべてに視線を注ぎ、細かく観察を続けること。そうすると、トラブルの大半が起こるべくして起きていることがわかる。
損得を価値基準にしない(P160)
ビジネスでは特に起こりやすいが、損得を考えすぎる=儲かるかどうかで考えすぎると、判断を誤る。
「危険な気配」を察知していたのに、欲に駆られて無視してしまったというようなミスは何としても避けたい。
「プロセスには責任を取るが、結果はわからない」(P161)
林先生のスタンス。
プロセスにはこだわり、そこでは自らの力を振り絞る。だからといって結果がどうなるかはわからない。そう考えて行動していると、意外と結果が出て、利益まで伴うことが多い。
同じ本を何度も読む理由(P167)
人に対しては「何度か会って話し、つき合いを深めるうちにどういう人間かを判断していく」という人が多い。同じことが書物にも言えるのではないか。
最初に読む時は内容を理解することに追われる。しかし、二度三度と繰り返し読むうちに、内容はわかっているのでじっくり考えて読むことが可能になる。