こんな本を書ける人はそうそういない。とても新鮮だった。
◆目次◆
第1章 勝ち続けるための決断術
第2章 全勝をもぎとる行動力
第3章 ブレないメンタルで心理戦を支配せよ
第4章 勝つ思考回路で勝ちグセをつくれ
第5章 運にもてあそばれる人 運をマネジメントする人
著者の肩書きは、「プロギャンブラー」。ギャンブルで食べている人、と言われて浮かぶのは、失礼ながら「定職がなく、競馬や競艇や競輪で一発当てて生活している人」だった。何となく、薄汚れたようなイメージ(注:あくまで個人的なイメージです)。
だが、著者はまったく違う。世界中のカジノでブラックジャック、のちにポーカーのプロとして稼いできた人だ。カジノは当然、胴元が儲かるシステムになっているので、そこで勝ち続けるのは並大抵のことではない。
しかも、著者は最終的に神の領域と言われる「勝率9割」を達成したという。
「すごい人だけど、自分とは別世界のことだ」と思いますよね。
でも、ここまで「どうやったら勝てるか」「運とは何か」を極めた人の言葉は、ビジネスにも人生にも活かせるのだ。
だからこの本が生まれたのだろうし、著者は現在、講演活動などもされているという。
読んでいると、途中で「既視感」が出てきた。考えてみると、野村克也さんの本だった。
野村氏と言えば、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」が一番印象的だ。
まさに、それと同じことが書いてあるのだ。
冷静に敗因を考え、「明日は9割勝てる」という心づもりをしておく。
そうすれば、勝ち負けを運のせいにしなくて済む。
負けた時は、必ず敗因がある。
だから、「必ず、敗因がどこかにある」と想定して反省をするべきだ(P167-177)。
あとは、いかに準備をするか。
「勝ちにこだわるな、勝つ準備にこだわれ。」
「結果よりも、まず過程にこだわれ(P56)。」
この言葉は深く心に刺さった。
ずっと勝ち続けるためには、「運」をどう扱うかも大切になってくる。
今まで「運」に関する本もいろいろ読んできたが、他の本とはちょっと違う気がした。“人生で成功する”と“勝負に勝つ”では前提もゴールも違うからだろうか。
不思議に感じたのは、「運も実力のうち」は間違い、と強く言い切っていたこと。
著者は運と実力を明確に分けている。事故で亡くなった人の家族に、医者が
「ちょっと実力がなかったですね」
とは言わないだろう、と。
そして、運に左右されないように、実力をつけてきたそうだ。
私などは、「いつも準備をしている人にチャンスがやってくる」という意味に解釈していたが、著者は徹底的に準備をする人なので、そうやって回ってくる運は織り込み済みなのかもしれない。
そして、瞬間瞬間の判断ももちろん重要だが、長い眼で見ることも「運をコントロールする」秘訣のようだ。
たとえプロでも、勝率10割ということは、ありえない。
勝率9割だったとしても、必ず負ける日がある。
たとえ、1日大負けする日があったとしても、運は全体を見ると平均化されるため、トータルで見れば必ず勝てる。
だから、その日の変動に一喜一憂する必要はないのだ(P171)。
ビジネスでも、1日集客できないくらいで慌てない。でも、1ヶ月トータルで見て予想よりも下回っていたら、すぐに手を打つ。何の対策もしないまま2ヶ月めに突入すると、傷が深くなるからだ。
――などと、不思議にビジネスに応用できる話が随所にあるから面白い。
おそらく、運の捉え方、扱い方は著者独自のものではないだろうか。ここまでシビアな勝負の世界で長年勝ち続けてきた人はおそらくいないからだ。
あまりピンと来ない、という人の方が多いかもしれないが、著者の感覚を知り、少し近づけただけでも、運に振り回されにくい人になれそうだ*2。
でも、私が一番印象に残ったのは次の言葉だった。
人生とは、今の連続。
ベストな人生とは、今のベストな連続でしか成しえない(P19)。
その時々でベストな選択をする。それをし続けることで、ベストな1日を過ごせる。そんな日を積み重ねることが、ベストな人生を生きることになる。
著者はもちろん長い眼で見る力も持っているはずだが、人生に関してはあまり先まで見ない派だそうだ。ギャンブラーというのが5年先、10年先を見越せる職業ではないからだという。
何度も書いているが、私もあまり先の未来を考えて人生設計するの苦手はタイプなので、著者の考え方はしっくりきた。
「今のベストな選択」を繰り返すことで、ベストな人生を創りたい。
人によって惹かれるところは違うと思う。上のインタビュー記事を読んで面白いと思った人は、ぜひ読んでみてください。
ただし、私が一番知りたかったミニマルライフに関することは、残念ながらこの本にはありません。
私のアクション:「勝つ準備」を徹底する
【参考】lifehackerのインタビュー記事はこちら
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※どちらも野村克也氏の本です。「メモ」の部分を読んでいただくと、似ている気がしませんか?
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
「今のベストは何か?」を常に考える(P17)
時間が空くたびに、「今やるべきベストな行動は何か?」を考え、決断し、実行する。
「今のベストは何か?」という視点を持つことで、つい、無駄に過ごしてしまいがちなマイナス時間を、プラスの時間に転化できる。
「ベストな1日」を過ごす方法(P18)
1.この瞬間、「今やるべきことのベストな選択は何か?」(通称「今ベストは?」)と自らに問いただして行動
2.1ができたら、その日寝るまでの行動を選択する時に「今ベストは?」と自らに問いただし、続けて行動
3.2ができたら、翌日丸1日の「今ベストは?」と自らに問いただし、続けて行動
3までを実行でき、「ベストな1日」を過ごせた日が訪れたら、「今日はベストな1日だった」と素敵な気分で眠りにつける。
ベストな1日を過ごすと、最高に充実した気分で眠りにつくことができる。
自分の「実力」=「自分がやりたいことを、実行できる能力」(P31)
言い換えれば、「自分の描いた夢を実現させた力」。
「ケリー基準」から人生の勝ち方を学んだ(P34)
※ケリー基準とは、数学者が導き出したギャンブル必勝法の理論。「各勝率に対し、いくら賭けるのがベストか」を導き出したもの。掛け金が、勝率に対してのベストな金額より、高くても低くても結果は悪くなる。
「過信も謙遜もせず、実力分の自信を持つこと」。
日本人の多くは謙遜しがち。もっとあなたの本気になった時の実力を信じてほしい。
スランプなんて存在しない(P35)
実力を過信し、思った結果が出なければ、自分はスランプ状態だと勘違いしてしまう。
スランプに陥ってしまうのは、そもそもスランプという概念を勘違いしているから。
はじめから自分の実力をシビアに把握していれば、うまくいかなかった理由が理解できる。すると、スランプに陥らなくて済む。
勝負で大切なのは、過信しないこと。
過信はスランプを呼んで、負のスパイラルを生んでしまう。
だからこそ、「実力分の自信を持つ」ことが大切。
まずはベターを目指す(P43)
初めからベストが見えていない人がほとんど。
ベターが見えたら、まずはベターの方へ動いていく。ベターへ動いている間にさらなるベターが見えてくるので、そこへ乗り移っていく。
そうやってベターを積み重ねていくことが、ベストへたどり着く手法。
「想定外」を作らない(P64)
「想定外」というのは、つまり「準備不足」ということ。
世の中の大半のことは、過去に必ず同じような事態が起こっている。
それを予想できないということは、これまでの事例を調べ切れていなかった、ということ。
過去に事例がなかったとしても、さまざまな方向から検証し、仮説を立てるなどをしておくことはできる。
不安をエンターテイメント化する(P96)
何か起きた時、落ち込んだり慌てたりするのではなく、
「この不安をどう乗り越えようか!」
と不安をエンターテイメント化する。
これも、常に自分自身のゴールに向かい続けるための施策。
理論と経験はバランスよく身につける(P129)
「10という時間を用いて、理論と経験を積み重ねた2人」がいたとする。
ひとりは理論5:経験5 5×5=25
もうひとりは理論8:経験2 8×2=16
大きな差が出る。
今の自分は理論と経験のどちらが上回っているのか?バランスはどうか?を考えてみる。
足りないと思った方を伸ばす努力をすることが、実力を高めることにつながる。
直感に理論的裏付けができたら、すぐに従え(P137・146)
理論のある直感とは、「自分の中の成功体験から生まれるもの」。
自分が今まで勝ち越していない分野の場合、その直感には乗るべきではない。
負けていた場合は、今までのやり方が「正しくない」から。
運はその都度リセットされる(P165)
サイコロの目は「6」が5回連続で出たからといって、「次は絶対に6は出ない」ということはない。
6回目も同じように、6が出る確立は等しく6分の1。
人生における運も同じで、その都度リセットされる。
だから、不運続きでツイてないと思っても、次に何が起こるかはわからないし、不意にいいことがあっても「こんなところで運を使ってしまった」と嘆くこともない。