確かに、他にあまり類のない良書だと思う。
◆目次◆
はじめに
第1章 「情報整理」では差がつかない時代
「自分のスタイル」を確立しよう
第2章 大事なのは量ではなく「質」
必要な情報、不要な情報をどう見抜くか?
第3章 情報を最大限に活かすための「20の引き出し」
第4章 デジタルとアナログを使い分ける
第5章 私の情報源
メディア、仕事、日常からどう情報を得るか?
本書のまとめ――「おわりに」に代えて
この本は、出版社は違うが『スパークする思考』の続編と考えていい。
もちろん、「20の引き出し」はこの本の第3章でも紹介されている。
著者は元BCG日本代表であり、この本が出版された時には早稲田大学ビジネススクール教授をつとめられている。
その影響もあるのか、20代のビジネスパーソン向けの印象を受けた。だが、紹介されている方法は年齢に関係なく使える。
著者が一貫して主張しているのは「インプットのためのインプット」にならないように、「アウトプットから考える」こと。
張り切って情報を集めるのはいいが、集めて整理することに力を使いすぎてアウトプットできない人が多いという。
「どんなアウトプットのためにどんな情報が必要か?」がわかれば、集める情報も自然に絞られる。ビジネスでは意志決定のために情報が必要なことが多いので、意志決定するには何が足りないのか、どういう情報を揃えれば決められるのか、という視点を持つことが重要になる。
また、情報集めで差別化するポイントは「どこにアナログを入れるか」。デジタルで情報を集めるといえば、ネットで検索するのが一般的。今では誰でもほとんど同じ情報を手に入れることが可能だ。
そこで差別化するには、たとえば一次情報(現場でインタビューする、他の人の意見を聞くなど)を入れると、ネットでは得られない生の情報を盛り込める。
「自分に求められているのは何か」を意識すれば、そこから差別化することも可能だ。組織での自分の立ち位置を考えると、斬新な案を出すのか、うまくまとめるのか、人とは違う切り口を提案するのか、という方向性も見えてくる。
これは組織で働く人にしか関係のないことのように見えるが、実はパーソナルブランディングにもつながるという。個人の情報発信、ブログ運営などにも活かせそうだ。
私が一番印象に残ったのは、コミュニケーションにも「自分の立ち位置」が影響している、という話。
相手と自分の共通認識はどこなのか、相手がくわしい部分、自分がくわしい部分はどう違うのかを知っていれば、コミュニケーションのやり方が変わるという(たとえば、開発と営業の担当者同士が新製品発売についてすり合わせをする場合)。
共感を得たいのか、説得したいのか、目的によって変わってくるが、あらかじめ相手と自分の認識の違いをざっとでも知っておけば、すれ違いが減って成功する確率が上がりそうだ。
“目的を明確にし、そのために何が必要か”という成果まっしぐらな方法は、やはり外資系コンサルタントという著者の経歴によるものかもしれない。
パソコンの前に何時間も座っていたから今日はよく働いた、と思ってしまう人(私はまさにこのタイプです)は必読の本。
この記事はストレートに「成果」に目を向けて書いたので、取っつきにくそうな印象を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、文章は読みやすく、写真や図も入っているので決して難解な本ではありません。
実は文房具評論家になりたかったという著者のこだわりガジェット*1もコラムで紹介されていて、文具好きは楽しく読めます。
私のアクション:次に本を読む時、著者の文脈ではなくあえて「自分の文脈」で読んでみる
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
少ない情報で意志決定できるようになる(P39)
最初は9割でもいいが、徐々に8割が7割、6割というように、少ない情報でも決断するようにしていく。そうして最後は他の人の10分の1の情報で同じ質のプランニングなり意志決定ができるようになれば、こんなに強いことはない。
情報とは、意志決定をしたり作戦を立案するための「手段」に過ぎない(P68)
「仕事」と「作業」を区別して考える(P69)
著者の定義では、「ある目的を達成すること」が仕事、「その目的を達成するための手段」が作業。
極端に言えば作業とは、手足を動かしていれば済んでしまうようなことだ。
仕事と作業の関係は、インプットとアウトプットの関係とほぼ同じ。
「ある目的を達成すること」(アウトプット)のために、「その目的を達成するための手段」(インプット)が必要となってくる。
情報を集める目的は3種類(P73)
1.意志決定の助けとなる情報
2.アイデアの元になる情報
3.コミュニケーションの手段としての情報
「20の引き出し」を持つメリット(P111)
「どんなアウトプットのために、どんな情報が必要か」がわかっていれば、それだけいい情報が集まるが、それと同じで、自分がどんな情報に関心を持っているかがわかれば、それだけ情報に対するアンテナの感度も上がる。
自分が面白いと思えるかがカギ(P129)
「使える」「使えない」ではなく、「面白い」かどうかで判断してしまっていい。
いくら検索性が高まっても、「面白い」というキーワードで検索はかけられない。しかし、(自分にとって)「面白い」というものこそが、本当に重要な情報なのだ。
書籍は、著者の文脈ではなく「自分の文脈」で読んでいい(P181)
私(内田さん)は「著者の文脈」を完全に無視して、「自分にとって役に立つか」「面白いか」という視点で読んでしまう。
著者のもっとも言いたいことを私が重要な情報として拾うとは限らない。著者にとっては大したことのないことが私にとって重要な情報になることもあれば、ときに、著者の意図と反対のことを頭に入れることもある。
*1:デジタルの方が多いですが