大事なのは、先に考えるのではなく、それに身をまかすこと(河合)(P195)
(つづき)それさえできれば、何か生まれてくるんでしょうね。
吉本 うまいこと、フッと。それと、「自分をたのみにする心」がとても大切なんです。それは自分に自信を持ちすぎるのでもなくて、いざとなったら自分が何とかするだろうという「自分をたのみにする」こと。それがあれば、結局最後は勝つというか、うまくいくような気がします。
偶然性と生きるということを、今、もっと考えていいんじゃないか(河合)(P199)
ぼくなんか本当にそうだから。自分の仕事を「偶然屋さん」とも言うてる(笑)。
(中略)
超能力者というのは、「自分が起こした」と思うわけでしょ。ぼくは自分でなんにも起こしてない。偶然に起こったことに、ふわっと乗るだけだからね。ただ、そういう時に、やっぱり「乗る」というか、「エネルギーを集結する」というか、それが必要なんですよ。それをちょっとでも間違ったらあかんけど。偶然は自分が起こすわけやないからね。
誰かの相談を受ける場合だったら、「治すことを目的としない」ことがとても大切(吉本)(P202)
そういうのと同じで、小説の場合も、誰かを感動させようとか、そういうことを目的にしなければ、まず大丈夫。その小説が自分に対して求めていることにこたえられるか、という部分が合致すれば、絶対大丈夫。
「どこかで偶然に治りました」というのは、発表としてはよくないと思われている(河合)(P213)
「それでは、治療者がどんな方策を講じてうまくいったのかがわからない」という非難が起こる。で、ぼくがよく言うのは
「うまいこといったやつは、わけわからんのや。失敗したのは、全部わけがわかる」。
失敗した事例は、論理的に説明が可能なんですよ。で、本当にうまくいった事例は、論理的に説明できないのではないかと思っているんです。
技術は偶然にアクセスする最低限のもの(吉本)(P214)
それがないと、結局偶然にさえアクセスできないと思います。ある程度のレベルを保っていれば、必ずどこかでフッて行けるんだけれど、技術が低いと、それに気を取られて、理屈っぽくなってしまうというか。