毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

気軽に読めて、時々深い村上さんのエッセイ☆☆☆☆

サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3
村上 春樹 文/大橋 歩 画
マガジンハウス(2012/07/09)
¥ 1,512
※文庫版あり→『サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3(新潮文庫)』(¥ 562)
女性誌ananに、定期的に連載している1ページエッセイをまとめたもので、これが3冊目。

もともと、村上さんを読むきっかけになったのはエッセイ*1だったので、このシリーズも大好きだ。
先日やっと大阪市立図書館再デビューを果たした*2時に書棚で見かけて、「あ、まだ読んでなかったわ」といそいそと借りて来た。

やっぱり村上さんのエッセイは面白かった。


◆目次◆
まえがき 村上春樹

忘れられない、覚えられない
ブルテリアしか見たことない
愛は消えても
真の男になるためには
オペラ歌手のシャム猫
ギロチンを待ちながら
オムレツを作ろう
裁判所に行こう
スーパーサラダが食べたい
献欲手帳
死ぬほど退屈な会話
チップはむずかしい
知りません、わかりません
シェーンブルン動物園のライオン
この曲を聴くと
僕の好きな鞄
ああ困った、さあどうしよう
とりあえず小説を書いているけど
プレゼントする人、される人
ジャズは聴きますか?
占い師としての短いキャリア
ブルー・リボン・ビールのある光景
岩にしみ入る
いわゆる新宿駅装置
すまないな、ルートヴィッヒ
楽しいトライアスロン
さあ、旅に出よう
秋をけりけり
そうか、なかなかうまくいかないね
自分の体で実験する人たち
カラフルな編集者たち
私が死んだときには
たくさんの人の前で
昼寝の達人
ムンクの聴いたもの
犬も歩けば
コップに半分
二番じゃだめなのか?
猫に名前をつけるのは
無口なほうですか?
愛欲の根っていうか
高いところが苦手
貧乏そうに見えるのかな
とんでもない距離、ひどい道
信号待ちの歯磨き
こういう死に方だけは
ワシントンDCのホテルで
想像の中で見るもの
濡れた床は滑る
ひどいことと、悲惨なこと
いちばんおいしいトマト
椰子の木問題

あとがき 大橋歩

なぜananにエッセイを書くのか、とたまに問われて、村上さんはとても困っているのだそうだ。特に理由はないらしい。
読者の大半が若い女性、という雑誌に書くのは大変じゃないか、と私も人ごとながら気になっていたが、村上さんは「共通する話題なんてない」と腹を括ってしまい、意外に気楽に好きなことを書いていた、とまえがきに書かれていた。
そんなものかもしれない。

その気楽さが今回も楽しめる。つまらない(失礼)ダジャレが炸裂する回もあるし、どうでもいいこと(これまた失礼)を楽しそうに書いてあるので、つられて楽しく読んでしまう回も。
でも、そのはしばしに凄みを感じさせる言葉があったりする。それが村上さんのエッセイの醍醐味かもしれない。


一番その凄みを感じたのは下の回だった(タイトルは「愛欲の根っていうか」)。
京都のとある女子大の正門前に掲げられていた「愛欲の根を断たなければ、人生の苦悩は永遠に去らない」ということばについて*3

愛欲に根はあるのか、とあなたは尋ねるかもしれない。
その答として村上さんはこう書いている。

 でもその根の具合や土壌の様子が当人にもよくわからないからこそ、その機能が今いち把握しづらく、成り行きが予測しづらいからこそ、人生の展開は面白いんだぜ、というところはある。すべてが論理的に倫理的にきちきちと、取扱説明書・保証書付きで解明されてしまったら、生きていくことはきっとずいぶん退屈な作業になってしまうだろう(P172)。

そうだよなー、確かになー、と納得してしまった。
全部わかってしまったらきっとラクなんだろうけど、つまらない人生になってしまう気がする。

こんな風に、時々すごく含蓄のあることばが顔を出すのだ。
そこを目的に読むのは、少し違う気もするけど。


3冊目のタイトル「サラダ好きのライオン」は、初回の

眠れない夜は僕にとって、サラダ好きのライオンくらい珍しい(P10)

という文から採ったものだ。

この本でも毎回大橋歩さんの素敵な版画が添えられているが、このライオンがめちゃくちゃかわいい。表紙にもなっているので、ぜひ見てください。
村上さんのよさは“より”エッセイに現れる、と個人的には思っています。「村上春樹ってどんなの?」という方に特におすすめです。

関連記事
読書日記:『おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2』


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。

英語は今では、リンガ・フランカ(世界共通語)としての機能の方がむしろ大きい(P52)

ので、極端に言えば「意味が通じりゃそれでいい」ということになる。となれば、そこで大事なのは、「流ちょうに話す」ことよりは「相手に伝えるべき内容を、自分がどれだけきちんと把握しているか」ということになる。つまりどんなにスラスラ英語が話せても、話の内容が意味不明だったり、無味乾燥だったりしたら、誰も相手にしてくれない。僕の英語は流ちょうではないけれど、手持ちの意見だけは何しろたくさん、(文字通り)売るくらいあるので、相手はそれなりに耳を傾けてくれるみたいだ。

プレゼントを選ぶのがうまい人を見ていて思うのは、選び方にエゴが入っていない(P85)

たとえ優れた服装のセンスを持っていても、多くの人は「この服は自分が気に入っている」とか「この服をあの人に着せてみたい」とか、自分がという気持ちが先に立つ。ところが見立のうまい人は、自然に相手の立場に立ち、相手の気持ちになってものを選ぶ。

年を取るということを、いろんなものを失っていく過程ととらえるか、あるいはいろんなものを積み重ねていく過程ととらえるかで、人生のクォリティーはずいぶん違ってくるんじゃないか、という気がする(P113)

*1:正確には橋本治さんとの共著で、雑文に近いかも

*2:奥野宣之さんの『図書館「超」活用術』で、「大阪市立図書館は住民や仕事をしている人以外も本を借りられる」ということを知って先日行ってきました。以前は大阪市内の会社に勤めていたので、当時は普通に利用していた

*3:気になって調べてみたけど、どこの学校かは残念ながら特定できず