ミスゼロ、ムダゼロ、残業ゼロ! オダギリ 展子 幻冬舎 2008-06 価格 ¥ 1,365 by G-Tools |
著者のオダギリ展子さんは、特許事務所で事務業務のリスクヘッジや効率化のノウハウを身につけ、その後派遣スタッフとして貿易事務に携わってきた人だ。言わば「事務のプロ」である。この本はその事務のプロが長年働いて編み出したさまざまな効率化、ミスを減らす方法をまとめたもの。もともとメールマガジンで書かれていたものを、書籍化したのだそうだ。
ひとつひとつは簡単で「なんだ、こんなことか」というようなことだが、そのささいな工夫の積み重ねが時間を節約できたり、ミスが減ることで仕事が早く終わるようになるのだ。ご本人はあとがきでライフハック系のカッコイイやり方ではなく、「おばあちゃんの知恵袋・オフィス版」だ、と書かれているが、こういうノウハウをもつ人が派遣で来てくれれば、派遣先の会社はどれだけ助かるだろうかと思う。ひとりひとりがこんなスキルを持つ部署はきっと残業も少ないだろう。ミスをしてからフォローに追われるより、ミスをしない仕事をした方がかかる時間は圧倒的に短くなるからだ。
ただ、そもそもこの本を借りてきた家族はあまりピンと来なかったようだ。というのも、私が会社員として一番長く携わったのが貿易業務だったので、この本に出てくる例がものすごくよくわかったからだ。特許事務の経験はないが、海外相手にどう仕事をするか、というのは近い部分があったからだろう。
なので、すべての人が私と同じように感銘を受けるかはわからないが、どんな人にとっても役に立つヒントはあると思う。そのままでは使えないことでも、それを自分の仕事で使うにはどうアレンジすればよいか、と考えることが仕事の効率化につながる。というのは、自分の担当する業務の性質や流れをしっかり把握していなければアレンジできないからだ。この機会に、時系列での仕事の流れや、いつ何をするのか、というルーティンについてまとめてみると確実に仕事は早くなると思う。
実際には、私自身が工夫したことや職場で身につけたこともかなり出てきている。それは業種が同じことから来るのかもしれないし、「事務作業」という仕事の性質なのかもしれない。ほとんど紙媒体で仕事をしない場合や、社外との連絡が必要ない業種ではピンと来ないかもしれないが、事務作業はほぼどの会社でも必要なもの。期限管理の方法なども紹介されているので、効率化を図りたい人にはお勧め。
なお、著者のサイトでもいくつか紹介されているので、興味のある方はのぞいてみてください。メルマガも登録できます。
オダギリ展子さんのサイト/オフィス事務の効率学
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
- 書類の紛失・混同を避けるため、机の上に広げる案件は1件のみとする
ある案件の書類を机上に広げて作業をしている時に、他の方が別案件の書類を持って質問や相談に来られるなど、書類が混入する可能性のある事態が発生しそうになったら、自分が広げていた案件のファイル、書類などは迷わず一時的に閉じる、片付けるなどの習慣をつけよう。
- なくしやすい1枚きりの書類の扱い方
他に紛れ込まないように、応急処置としてクリアホルダーかWクリップではさむ。クリアホルダーに入れ、立てて保存する時は「しなり」を防ぐため、厚紙を一緒に入れるとよい。
- 訂正・変更前の古い書類は「履歴」として保存する
黄色の蛍光ペンで大きく×をつけ、複数ページの場合は開かないよう上下をホッチキスで留めて「封印」する。
- ファイルが完結した時は、マークをファイルの背表紙につける
市販の丸いシールなどを背表紙に貼っておけば開かなくてもわかるので便利。内容によって色を変えたり、貼る数で巻数を表すとさらに便利。
- 完結したファイルにはその旨を書いたメモを一番上に綴じる
「次のファイルあり ○年○月○日」と書いて一番上に綴じておけば、他の人が誤ってその上にファイルすることを防げる。
- 期限管理は「縦割り」と「横割り」で二重に行う
「案件」と「時間」をそれぞれ基準とし、別立てで期限を管理しておくとミスやモレを防げる。
・案件管理1――案件リストを作り、ファイルからはみ出すように期限日(処理日)を書いた付せんを貼っておく。
・案件管理2――書類ごとにクリアホルダーに入れ、ボックスファイルに立てて保管している場合、期限日(処理日)を書いた付せんをホルダーからはみ出すように貼り、期限の迫っている順に並べておく。
・時間管理――業務内容や環境に合わせ、1日1枚のシート、1週間ごとのタイムテーブル、卓上カレンダー、スケジュール帳などを使って期限をチェックできるようにする。
- 文字やセルに色をつけ、上書き忘れのミスを撲滅
上書き作業だけで使える原稿を用意する場合、上書きする箇所を見落とさないよう色を変えておくとよい。エクセルはセルをごく薄い色に変えておけば印刷では色が出ない。ワードは赤や青などの濃い色にしておくと、白黒でプリントすれば黒と色の差が出ない。
- ファイルの添付忘れを防ぐには、先に添付作業をしてからメール本文を書く
- ボックスファイル+Wクリップで書類紛失ゼロ
ボックスファイルを並べる場合、Wクリップではさんで連ねておく。間にすきまがなくなるので書類紛失を防げる。ただし、メーカーによってはWクリップではさめないものもあるので注意。
- 書類のインクが変質してデスクマットに移るのを防ぐ方法
クリアホルダーにはさんでから入れると移りが防げる。
- 付せんは台紙をはがしてデスク周りに固定する
書類に紛れ込むのを防げるし、すぐ使えて便利。
- A4用紙をきっちり三つ折りするワザ・台紙を作る
A4横の用紙に99ミリの幅になるよう真ん中に線を2本引く。上の線に折りたい用紙の上を合わせ、下の線に用紙の下を合わせて折ればきっちり3分の1になる。上を下の折った部分に合わせて折れば完成。
- 進化したコピー術(複数の書類を同時にコピーする)
ホッチキスをはずし、書類の上下の向きを交互に変え、重ねて一気にコピー。書類の上下をチェックしながら種類ごとに分け、抜けがないかチェックしてホッチキスで留めれば完成。
- ファイル背表紙に明記するのは明確なタイトルとファイリング期間/巻数
誰が見てもひと目でわかるようにしておくのが基本。探す手間が省ける。
- 書類の四隅をカットして進捗状況が一目瞭然
自分で管理している書類に限るが、進捗状況によって隅をカットしておけば、作業がすんでいないものがひと目でわかる。たとえば、売り上げ計上がすんだら左下隅、入金確認ができたら右下隅などと決めておくとよい。カットできない書類は隅に蛍光ペンでチェックしても。
- メール、FAXを受領した時のルールを決める
出勤直後はメール、FAXなど確認の必要な書類がたまっていることが多い。この時、気になる案件や緊急のものを見つけても、とりあえずすべてに目を通すようにする。後で訂正や補足が届いている場合もあるため、早合点は禁物。
日中は、何かの作業中に新しくメールやFAXが来たら、必ず手を止めて内容を確認する。今処理中の件の内容変更や書類の差し替え、より緊急の案件の場合があるため。
- 未読メールがたまったら、新着順に読む
連休明けや出張後、未読メールがたまっている場合は、新着順に読むとよい。訂正や変更があったため、同じようなメールを何度も受信していることがあるので、新着順に読むと無駄にすべてのメールを読まなくてよくなる。
これははらたいら氏が新聞を読む方法(多忙のため新聞を読むのは週1回、日付の新しい方から読む)を応用したもの。事件などは日を追って真相が明らかになるため、最新の記事から読んでいけば、1週間前の真相が明らかになっていない記事を読む必要がなくなる、という考え方。
- 頻繁に使うメールのブランクフォームを署名欄に作成・保存しておく
署名欄は何種類も保存でき、スペースもあるのでブランクフォームを保存しておくと便利。