快感自転車塾―速くはなくともカッコよく疲れず楽しく走る法。 長尾 藤三 五月書房 2008-08 価格 ¥ 1,575 by G-Tools |
著者は現在67歳。45歳から自転車に乗り始め、「中高年でもカッコよく走れる」をモットーに平均年齢60歳以上の自転車クラブを主宰しているそうだ。さっそうと自転車を乗りこなす姿はとても60代後半には見えない。
本格的な自転車に乗る事を勧める本は、どうしても著者のこだわりが見え隠れするものが多い。特に「ロードバイクにあらずば自転車にあらず*1」というあからさまな偏見が多いように感じる。その点、冬はMTB、それ以外の季節はロードバイクに乗り、速さよりもカッコよく楽しくをかかげる著者はそういうスノッブ感があまりなく、文章も読みやすかった。
ただし、自転車に関するこだわりはやはりすごい。アクセサリーはできるだけつけない派だそうで、サイクルコンピューターなんかつけるな、と言われてしまった。
数字で表示するということは、他と比べられるということです。比べるから、速いの遅いのと気になる。時計を持つから時間が気になるのと同じです。のびのびと自由に暮らしたいのなら、朝7時になったから起きるのではなく、よく眠って自然に目が覚めたから起きるのが理想でしょう。昼12時になったからメシを食うのではなくて、おなかが空いたから食べるのがいい。ビジネスならともかく、遊びや趣味にまで数字にしばられた悪い習慣を持ち込むことはありません。
理想の速さとは、時速○kmではなくて、走って気持ちのいいスピードです。当然道の状況、その日の健康状態、お天気や風向き、乗ってるジテンシャによって変わってきます。
すべてカラダに聞けばいいのです。
まさしくその通り。ごもっともでございます。しかし、心拍数や消費カロリーも測れる最新のサイクルコンピューターを買うことに決めている私は確かに、と思いながら見ないふりをすることにした。
全編を貫くのは、自分が気持ちよく走ること。速さを目指さなくても、慣れればカッコよく乗れるようになり、カッコよく乗れれば自然にスピードも上がってくるのだそうだ。
この本を読んで一番驚いたのは「カッコよく乗る」ということについて。ウエアがどうの、パーツがどうのという話ではない。著者に言わせれば、長年走っている人も基本フォームができていない人が多いそうだ。そこで、正しい姿勢やブレーキのかけ方、コーナリングなどについてかなり詳しく書かれている。
自転車なんて乗れるようになれば誰でも一緒、と思っていたがカッコよくきれいに歩くためのウォーキング教室があるように、自転車にも「理想の乗り方」があるのだ。そういう考え方をしたことがなかったので新鮮だった。まずはまたがり方から練習しよう。
年配の人向けではあるが、初心者にも役に立つことがいろいろ書いてあるのでお勧め。