毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

新しいリーダーシップ観☆☆

406215000X寛容力〜怒らないから選手は伸びる〜
渡辺 久信
講談社
2008-11-11

価格 ¥ 1,260
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去年、プロ野球日本一&アジアシリーズ優勝に輝いた埼玉西武ライオンズの渡辺監督の本。なかなか面白かった。
ライオンズは去年新しく渡辺監督を迎えたが、前年に26年ぶりにBクラス*1に低迷し、さらにFAなどで戦力がダウンしたチーム。誰も優勝するとは正直言って思っていなかっただろう。そのチームが優勝、しかも監督は1年目の若葉マークだというのだからみんな「なぜ優勝できたのか?」「どうやって強くなったのか?」と疑問に思ったはず。その答がこの本にある。

もちろん各選手のことにも触れられているし、ライオンズの球団の歴史や渡辺監督個人の野球人生なども書かれているので、野球ファン、それもパリーグファンが読めば一番楽しいと思う。でも、野球に興味のない人でも、部下や若い人たちをどう指導していいかわからない、という人に役に立つ本だ。

渡辺監督の現役時代も知っているが、まさかあんな球の速さだけで勝負するようなタイプ、しかも晩年には技巧派転向*2に失敗して早々とユニフォームを脱いだ選手*3が監督として結果を出せるなんて、と私も驚いたひとりだ。

しかし、意外にも渡辺監督はとてもクレバーな人だとこの本を読んで感じた。ご本人はそんなそぶりはみじんも見せていないところがまたすごい。自分が今まで指導を受けたすべての監督からいいところを吸収し、もっとも今の監督業に役に立ったのは、野村監督の元で過ごした現役最後のヤクルトでの1年だったという。野村監督の本を読んだばかりだったこともあるが、たった1年でそんなに役に立つ野村監督の野球もすごいと思ったし、1年でそれだけ吸収できるのもただ者ではない。


私が特に面白いな、と思ったのは「野球監督の本」なのに、まるで成功法則の本かと思う内容が書いてあったことだ。
その一番が目標を立てること。さらに期限も決める。具体的な目標を立てずに漫然と練習してもうまくならない。なので、なぜこの練習をするのか、いつまでにどんなことを習得するのか、ひとりひとりに細かく目標を立てて伝えるという。それを徹底したことで結果が出たという。

他にも、わかりやすくこと細かな指示や、まずやってみてダメならやめる、コミュニケーションの徹底など指導のヒントがたくさんある。また、失敗についてもとても納得できる方針があった。失敗した時も頭ごなしに怒るのではなく、なぜ失敗したのかを一緒に考える、やろうとしたことが間違っていなければ失敗してもとがめないなど、これなら選手はのびのびプレーできるだろうな、と思った。この人の元で野球がしたい、という選手はこれからもどんどん増えると思う。


渡辺監督はライオンズの黄金時代を支えたひとりだ。当時はとにかく強かった。しかし、選手が楽しくのびのびプレーできる雰囲気はなかったのだという。その経験もあってのびのびプレーできる環境を整えようとさまざまなアイデアを出し、改良を加えたから1年であれだけの結果が出せたのだ。

選手の能力をいかに引きだすか。同じ選手でも環境によって引きだせる能力は大きく変わってくる。その辺を冷静に分析し、選手ひとりひとりの対応をきめ細かく変えている手法は手間がかかって管理職には大変かもしれないが、やってみる価値はあると思う。人は感情で動くものなので、そこを掌握できたチームが強くなるのだ。改めてそう感じた。

若い人をどう扱えばいいのかわからない、という人には素晴らしい教科書になると思います。

*1:6チーム中4位以下のことです

*2:年をとってくると、球の速さや球威は誰でも落ちるもの。その時にコントロールやバッターと駆け引きできる投球術を身につけて本格派(速球派)から脱皮することです

*3:すみません、西武で人気も実力もほしいままにしたあれだけのスター投手が晩年あまりにも淋しかったので、そういうイメージがありました…