三五館(2007/03)
¥1,260
著者・織田直子さんは就職先のデパートでインフォメーション配属になったことがきっかけで、声と話し方を磨くことに目覚めたそうだ。その後フリーアナウンサーを経て、現在は人材育成コンサルタントとして多くの人を指導している。
著者によれば
声は人格、話し方は品格、言葉は知性を表す(P12)
そうだ。声を意識し、話し方を磨く過程で、自然に言葉にも意識が向くようになるという。さらに、自分の声を意識することで精神状態などに敏感になり、やがて他の人に対してもわかるようになるとか。それぞれが相乗効果を発揮し、自分自身を磨くことになる。
今まで、声や話し方は自分の一部分だとしか思っていなかったので、この考え方は新鮮だった。そんなにいろんな面に効果があるのなら、練習にも熱が入るというものだ。 ====
発声練習は「ういろう売りの台詞」*1という、歌舞伎の口上が紹介されていて、これを毎日読む*2。話し方教室でもよく使われているようだ。
CDがついていないのが残念だが*3、書かれているポイントに気をつけて読むだけでも効果があるという。
【参考】こちらのサイトにふりがな付で全文紹介されています。
さらに、敬語や聞き上手になるコツ、プレゼンやスピーチまで幅広く書かれているので、いろんな人に役に立つと思う。
自分磨きの最短コースのひとつ。自分の声や話し方を改善したい、と思っている人にはお勧めです。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
声は人格、話し方は品格、言葉は知性を表す(P12)
声を磨けば自分自身を知り、相手を知ることができるようになる(P15)
「いい感性をしている」というのは、「人間を知っている」ということです。人の心の真のありようを知っているから、人の欲するものがわかる。人が好感を持ちそうなものがわかる。
NHKアナウンサー・故青木一雄氏による好ましい声(P30)
- 明るい、さわやか、うるおい、ふくよかさのある声
- 状況に応じた声の大きさ
- 適度な速度
- 単調で一本調子にならない
- 人間的魅力、人間としての温かさがにじみ出ている
さらに著者がつけ加える要素
- 聞いていて疲れない声
自分の体は自分の筋肉で支える(P39)
風が吹いても、人に押されても、倒れないよう下半身をしっかりさせ、上半身はまったくどこにも力を入れず、ラクにしましょう。
話し方の上手・下手を決定するのは「テンポ」「間」「抑揚」の3つ(P57)
鼻濁音にしないガ行音(P75)
- 語頭のガ行
- 数詞の「5」
- 外来語、外国語
- 擬音語、擬態語
- 接頭語に近いが行(例:朝ごはん、お行儀、お元気)
鼻濁音にするガ行音
- 語中、語尾のガ行
- 名詞化した数詞の「5」(例:十五夜、七五三)
- 助詞の「が」(例:わたしが、恐れ入りますが)
ココロを動かすスピーチ10ヵ条(P132)
1.話し手の体験などを通した「思い」が込められている。
2.話し手にふさわしい言葉遣いや話し方になっている。
3.自然な口調で語りかけている。
4.適度な声の大きさである。
5.早口すぎず、間をうまく取っている。
6.話の構成に工夫がある。
7.大勢の人に話していても、ひとりに話しかけているように感じる。
8.「えー」「あのー」「ですからぁ」というノイズが少ない。
9.ひとつひとつの話のセンテンスが短い。
10.話を通して、話し手の個性やその人らしさがにじみ出ている。
「やっぱり」「すごく」「非常に」というような副詞も使わない方がよい。(P136)
プロの情報収集テクニック(P139)
1.基本的には、浅く広くでよいから、見出しは全部拾って読む。
2.自分が興味あるもの、あるいは今、話題になっているものについては、固有名詞と数字をきちんと覚える。
3.聞き慣れない言葉やキーワードを声に出す。
4.人に伝えることを前提に読む。
1分間で話せる量は(P140)
だいたい400字詰の原稿用紙を、3分の2から1枚を埋める活字量だと思ってください。
1分間スピーチは3つのブロックに分ける(P141)
最初のブロックが「入り」の部分、最後が「まとめ」、真ん中が「内容」と3つに分けます。
こうして見ますと、もっとも言いたい「内容」の部分は原稿用紙の半分くらいしかスペースがありません。残りの半分ずつが「入り」の部分と「まとめ」の部分になります。
そうすると「まとめ」とは、「内容」や「入り」の部分、あなたにとって一番大切なところをもう一度繰り返して言うのが効果的だということになります。
自己紹介は、最初と最後に自分の名前を繰り返した方がよいでしょう。(P143)
プレゼンテーション(スピーチ)する時のポイント(P144)
まず最初にあなたの名前が呼ばれます。あなたがスッと立ち上がり、前に歩いて出て行く姿が重要なポイントです。すでにそこからプレゼンは始まっているのです。聴衆は見ています。あなたができる人か、できない人かを……。
お辞儀や姿勢も重要です。手は前で組、視線はまっすぐ前を見、会場の一番後ろの人を見渡すようにします。お辞儀をした時は、下げた頭が2秒間静止しているのが望ましいといわれます。
話し始めたら、聴衆全体に意識を向けること。慣れないと、前に座っている人にばかり意識が向いてしまいますが、それでは後方の人の心をつかめません。
(中略)
プレゼン(スピーチ)が終わったら、感謝の言葉を述べてお辞儀をします。この時の所作も美しくしましょう。「フー、終わった〜」なんて、最後まで気を抜いてはいけません。
これらひとつひとつの動きにメリハリがあり、かつ連動していて完結することにより、洗練されたイメージとして聞き手に受け入れられるのです。
それが「この人の話には説得力がある!」という印象を与えるのです。
オーラを発するコツ(P146)
話す前に、「遠くまで自分の声を飛ばそう」という意識を持つだけでよいのです。
著者の考える「プロ」の定義(P178)
私は、人に感動や勇気や元気、明日を生きるエネルギーを与えることができるのが、プロであると考えています。
実践編:美しい姿勢が生み出す美しい声(P37)
1.足元は立ちやすいように、60度くらい開く
2.目はまっすぐ前を見る
3.あごは床と水平
4.肩の力は抜いて、中指の先を脇の縫い目に沿わせる。猫背の人は脇の縫い目よりも1センチほど背後にずらした位置に
5.左右の肩の高さを揃える
6.胸はそらせる。バストトップの位置を2〜3センチ高くするような意識で
7.おへそを立てに伸ばすようなイメージで丹田(下腹部)を伸ばす
8.お尻はキュッと引き締める。新聞紙をお尻ではさむイメージ
9.左右の膝を合わせる
10.その姿勢のまま半歩前へ出て、良い姿勢をキープ
※慣れるまでは、壁に背をつけて、この姿勢ができたらそのままの状態で半歩前へ出る。
「ういろう売りの台詞」の練習(P70)
3ヶ月続けた時の成果
1.知らないうちに身についてしまった話し方の悪いクセを取ることができる
2.滑舌訓練と発声練習をあわせて行えるので相乗効果がある
3.自分の声を毎日チェックしているうちに、自分の声から体調と感情の関係が何となくわかるようになる。
2の相乗効果ですが、発声練習の際はきちんと呼吸し、声を音にして出します。一方、滑舌練習はひとつひとつの音を明瞭にするという目的があります。このふたつをセットにして行うと、声が音として響くようになり、ひと言ひと言、はっきり聞こえるようになってきます。
早く上達するための秘訣(P72)
それは、「なるべく息継ぎを少なくして読む」ことです。
(中略)
始めた当初は、自分の呼吸に合わせて息継ぎをしてもよいですが、慣れてきたら一気にある程度の長さまで読んでください。
この訓練で、どこまで息を調整しながら話せるかという能力が培われます。こうすることにより腹筋が鍛えられ、滑舌もさらになめらかになっていくはずです。
また、毎回でなくてもよいですが、できれば録音して自分の声を聞いてみましょう。思わぬクセに気づくはずです。
注意しなくてはならないのは、これは早口言葉ではないこと。(中略)「ういろう売りの台詞」はひと言ひと言をはっきり発音させることが大事であり、それが目的であることをお忘れなく。
「ういろう売りの台詞」上級編(P76)
読むことになれてきたと感じたら、次は原稿を見ずに「ういろう売りの台詞」を言ってみてください…毎日行っているうちに台詞が体にしみ込んでしまい、知らぬ間にスラスラと台詞が口をついて出てくるようになっています。
そらで言えるようになると、今度は鏡に映る自分の口の形や動き、さらに表情もチェックできるほど、意識に余裕が生まれています。
それにも慣れてきたら、今度は顔の筋肉を見ながら、目に力を入れてみたり、笑みを浮かべてみたり、声の調子を低くもしくは高くしたり、早くもしくは遅くしてみたりと、さまざまなバージョンも試してみましょう。
声帯はとても繊細な楽器(P78)
無理して声を出したり、間違った出し方をすると傷めます。発声練習や「ういろう売りの台詞」を練習する時も、喉に力を入れながら声を出してはいけません。ゆっくり呼吸をしながら、楽器を温めていくようなイメージで、取りかかってください。
朝に練習をする際は、声帯が起きてくるのを待ちましょう。
声がよく出る食べ物は(P79)
甘いもの、小豆などです…即効で効き目があるのは、のど飴よりもチョコレート。逆にのど飴は、飴の外についている粉やハーブの作用で、声帯を締めつけてしまうこともあります。