毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

現代を生き抜く力を養う☆☆

著者は元・大蔵相財務官で、外国為替に積極的に介入したことで「ミスター円」と呼ばれた人物だ。テレビにもよく出演されていたので、ご存じの方も多いと思う。そんな著者が、今の社会で活躍するために必要なのは素早く判断できる「スピード思考力」だ、という自説を説いた本。長年第一線で活躍してこられた方の考え方はなかなか説得力があり、面白かった。


海外に対して日本人はどうあるべきか、というような直接テーマと関係ない話が出てきたりして散漫な印象もあるが、ひとつひとつはやはり著者が実践して上手く行ったことなので重みがある。

また、ご自分は脳科学のプロではない、と言われているが、脳科学者の友人から学んだという脳科学の知識が随所に出てきて、その点からも楽しめた。


問題に正解があるのは学校の試験だけ、世の中では正解がない。間違う可能性は必ずあるので、決める時もやめる時も即決できなければならないそうだ。だから、求められるのは「スピード思考力」だという。
その思考力をつけるために何をすればいいのか書いてあるが、やはり大事なのは自分をしっかり持つことのようだ。人の話を鵜呑みにしない、常識はまず疑ってみる、目標やスケジュールは自分で決めて人任せにしないなど、自分で決断するための基礎体力はここから始まるのだろう。

ややまとまりに欠ける感はあるが、ひとつひとつはなるほど、と思うことが多い。正解のない決断が求められる仕事についている人*1には、一読の価値がある本。


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。

知的謙虚さを持つ(P18)

…「考える」の土台になる能力として、最も重要なのは「自分はわかっていない」という事実を認識できることなのです。私はそれを「知的謙虚さ」と呼んでいます。

世の中の常識を疑ってみる(P30)

たとえば会社でも、「こういうルールが正しい」とされている常識が、よそに行ったらまったく通用しないということはよくあること。常識というのは、“何となくそう思われていること”の経験的な積み重ねであるだけで、それを“疑う”という思考を持っていないと、いつまでも自分の無知に気づけないことになってしまいます。

「考える力のある人」は変わり身が早い(P66)

仮説・検証を繰り返していけば、今まで自分が考えてきたことや、培ってきた理論を覆さなければならない時がしばしばあります。
覆してしまえば、周囲の人から「あれっ?今まで言ってきたことと違うじゃない」とか、変わり身が早いと言われかねません。しかしそれができる人こそ、スピード思考ができる人、本当に考える力のある人だと思います。俗に言う「君子は豹変する」とは、実はこのことです。

頭の柔らかい人が生き残れる(P67)

今までと違うことが起こった時に、それに対応して自分の意見を変えられる頭の柔らかさを持った人が、生き残れるのでしょう。ダーウィンの言う適者生存です。

「今年やること」を決める大切さ(P140)

私は決して大きなことを目標に掲げたわけではないのです。たとえば「今年は外為法の改正をやろう」とか、「今年はこの法律を変えることに専念しよう」とか、とにかく、“当面やるべきこと”をふたつくらい決めただけ。
そして目標を決めたからには、とにかくそのことにできるだけ集中するようにしました。
(中略)
…「目の前のやりたいこと」を見つけ、それに集中できるようなプログラムを組んでいけば、自然に「自分のやっていること」が「自分の望んでいること」に近づいていく可能性が高いような気がします。

毎日の計画の立て方(P142)

私は朝にジョギングをするという話をしましたが、走っている時に「今日1日は、どういうパターンで何をやろう」と、だいたいその時にプランを描いてしまいます。たとえば執筆中であれば、「今日はどんなテーマの、どんなことを書く」とあらかじめ決めてしまうわけです。
(中略)
「10年経ったら何をしよう」などという目標は、極めて不確定要素が多いし、どうなるかわからないもの。けれども「今日1日に何をするか」だったら、誰もが現在の自分の力で、集中しさえすれば必ず実行できる目標を選べます。
実はこの実行こそが、なりたい自分や成し遂げたい仕事に近づくために重要なことなのでしょう。1日、1カ月、半年、1年と、現実に実行可能な計画を立てて実行していけばかなりのことができます。

新しいことを“実験”として試してみる(P186)

現に科学者などは、ひとつの証明をするために、何回もの実験を繰り返します。文系のビジネスパーソンはあまり実験ということを意識しませんが、たとえば目の前のお客さんに新しいアプローチを試してみたり、あるいは上司に新しい案を提出してみたりと、いずれも問題解決のための“実験”ととらえてみてはどうでしょう。

撤退も迅速に(P190)

戦争でも、名将と言われた人は必ず退却が上手だったもの。たとえば戦国の覇者である織田信長も、非常に多くの退却戦を経験しています。しんがりを務める武将の功績もありますが、ここで大打撃をくらっていないからこそ、結果的には頂点に立つことができているわけです。
退却の時に何より重要なことは、スピードです。

平和が文化レベルを上げる(P200)

長く平和が続くと、普通の国が戦争に使うようなエネルギーが文化の方に向かいます。それもあって日本の文化のレベルは、非常に高くなったということができるのでしょう。
(中略)
平和だからこそ生まれる文化や思想を持っている、これは平和の時代をなかなか体験できていない文明から見れば、ある種の憧れになります。海外から見られる日本のポジションや期待されることは、この部分にあります。

日本の“性善説”、ヨーロッパの“性悪説”(P203)

歴史的に外国による侵略を経験してこなかった日本は、「異質なもの」と遭遇する経験には乏しいのです。だからどうしても最初から相手を信頼しきってしまうような“性善説”の発想に陥りがちです。
(中略)
しかし、「異質なもの」にしょっちゅう遭遇してきたヨーロッパ文化を見れば、明らかに最初から人を疑ってかかる“性悪説”を前提としているわけです。だから最終的には
性善説”で相手に渡り合うにしても、自分が“性悪説”で相手から見られていることは、ヨーロッパ人を前にした時に意識しておく必要はあります。

日本の文化の取り入れ方は「苗代方式」(P208)

日本人はそもそも「異質」や「違い」を認識することを非常に苦手とする文化を持っています。むろん歴史を通じて海外から異質なものはどんどん入ってきているのですが、それをどういうわけか、全部“日本式”にして理解してしまう。これを松岡正剛さんは「苗代方式」と呼んでいます。
苗代方式では、いきなり土壌に種をまくのではありません。まず苗代に入れて、小さい苗を育ててから、それを大地に植えるわけです。同じように外国から入ったものは、まず苗代のようなもので日本式に加工したあとで、それを日本文化に融合させていきます。
(中略)
実は世界中を見ても、これだけ翻訳本が多く出ている国はほとんどありません。
(中略)
…日本ではすべて“日本語”にして、大勢の人に読ませてしまいます。そうすると普及性は高くなるのですが、理解は必ず“日本式”になります。こういうことが当たり前と思っている日本人は、世界的に見たらかなり非常識。文化の違いに対して、極めて鈍感になってしまっているのです。

*1:たぶん、ほとんどの人がそうだと思いますが