著者・行本明説さんは、「日本マネジメント普及協会」理事。著者のことを知ったのはテンミニッツのサイト内にあるテンミニSCHOOLだった。
これは、タイムマネジメントが専門の著名人がさまざまなノウハウを提供してくれるものだが、小室淑恵さんや佐々木常夫さんといったそうそうたる顔ぶれの中で、私が一番役に立つと思ったのが著者の回だった。もう少しくわしく知りたいと思い、図書館にあった本を読んでみた。
テンミニSCHOOLで著者が教えてくれたのは、たとえば
- 今日絶対に終わらせないといけない仕事をひとつふたつ書き出し、それを何時からやるかを決める。
- 1日の仕事はコンタクト業務からやる。
- 働いている時間の20〜30%を自分が主体的に進めたい仕事に使う。
というようなこと。私が興味を持ったのは、ハードルが低いというか、“これならできそう”と感じたからだ。この本にはこの3つがより詳しく説明してあり、とても納得できた。さらにそれ以外にも面白い考え方がいろいろあった。
たとえば仕事は緊急度と重要度で4つに分類するのが一般的だが、この本では6つに分けたり、突発的な仕事が発生した時に優先順位を決める基準が示してあった。これなりシンプルに考えられそうで、肩の荷が下りる気がした。
具体的なハウツーというよりも、考え方やものごとのとらえ方が役に立つように感じた。
ただ、サブタイトルに「ノウハウ87」と書いてあるが、実際には同じことが何回か出てくるのでもっと少ないと思う。くり返し出てくるので定着率は高いかもしれないが。
“1分1秒も無駄にしない”タイムマネジメントについて行けない、という人にはいいやり方だと思う。この本はまだアマゾンで取り扱いがあるようだが、著者のマネジメントの本は今は手に入りにくいかもしれない。図書館で読める方はぜひ読んでみてください。
メモの最後にも出てくるが、まずは「基本となる3つの行動」を習慣化してみようと思う。
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※要約したり、かなり手を加えています。ご了承ください。
ポイントは4つの時間(P32)
投下時間は、ある仕事を始めてから終わるまで、つまり“開始”の時間から“終わり”の時間までを言う。さらに、開始の時間には“自分ひとりでやる仕事”の開始の時間と、“他人と共同でやる仕事”の開始の時間の、ふたつがある。終わりの時間も同様に、自分ひとりでやる仕事の終わりの時間と、他人と共同でやる仕事の終わりの時間の、ふたつがある。タイムマネジメントとは、実はこの4つの時間
・自分ひとりの仕事の開始時間
・自分ひとりの仕事の終了時間
・他人と共同でやる仕事の開始時間
・他人と共同でやる仕事の終了時間
をコントロールすることなのだ。
中でも、特に「自分ひとりの仕事の開始時間」と「他人と共同の仕事の終了時間」をマネジメントすることが重要。
突発的な仕事の対処法――優先順位をつける(P34)
突発の仕事が生じた時、まず判断すべきは、その時手がけていた仕事(事前にわかる仕事)と突発の仕事の優先度。当然、いずれか高い方を選択する。優先度が同じなら、投下時間によっていずれを優先すべきかが決まる。大切なのは、事前にわかる仕事の優先度、投下時間を把握しているかどうか。
中断の優先順位
・高い すぐに対処
・同じで短時間 〃
・同じで長時間 あとで対処
・低い 〃
生産性を左右する6つの仕事(P38)
優先順位を決める方法として、“いま自分がやる仕事”をAとし、“あとで自分がやる仕事”をB、“他人でもいい仕事”をCとする。…しかし、仕事には“突発の仕事”もある。
そこで突発の仕事をXとし、同じようにグループ分けする。つまりAXを“突発の仕事で、今自分がやる仕事”、BXを“突発の仕事で、あとで自分がやる仕事”、CXを“突発の仕事で、他人でもいい仕事”とする。
(中略)
突発の仕事が発生した時、Bの仕事をしていたなら、その仕事は後回しにされてしまう。ところかぜ、このBの仕事こそ生産性向上の鍵となる仕事なのだ。つまり、突発の仕事に振り回されている限り、生産性の向上など期待できない。この落とし穴に陥らないために、突発の仕事にも3つの仕事があることを知っておかなければならない。
突発の仕事がBXなら、慌てて対処することはないし、CXの仕事なら、ただちに誰か他の人に委任すればいい。あなたがどちらの仕事を優先させるべきか悩むのは、AXの仕事が生じた時だけ。それを知っておくだけでも、大切なBの仕事を意味なく犠牲にしてしまう事態を、かなりの程度回避できるようになるはず。
自分ひとりでやる仕事の「開始の時間」管理が重要(P42)
自分ひとりでやる仕事の開始の時間は、他人の干渉を受けずに、自分だけで決定できる、唯一の時間。さらにいえば、自分でコントロールできなければ、完全にルーズになってしまう時間なのだ。期限の間際に慌てて仕事を始めるのでは、他人に振り回されて仕事をしているようなもの。
手帳に自分へのアポイントを入れる(P44)
大切なのは“自分ひとりでやる仕事”の開始の時間をマネジメントすること。この時間を自分でコントロールできれば、自分ひとりでやる仕事だけではなく、他人と共同でやる仕事をも、容易にコントロールできるようになる。その結果、自分の思い通りに仕事をやり遂げたという実感を得ることができるだろうし、仕事へのやりがいも生まれる。逆ニコの時間がマネジメントできなければ、仕事の達成感や、やりがいなど生まれるはずがない。
(中略)
アポイントを入れるべき仕事は、“あとで自分でやる仕事”。生産性向上に寄与する可能性の大きな仕事なので、この時間は他の仕事によって邪魔されないよう、最大限の努力をしよう。“突発的な仕事で、今自分がやる仕事”が生じた時だけ、どちらを優先すべきかを考え、それ以外の仕事はすべてシャットアウトすること。
“やっつけ仕事”にならないためにすること(P56)
「つまり会議用の資料も企画書も、もともとは“あとでやる仕事”だったわけですね。それを先送りしてきたから、期限が迫って“今やる仕事”になってしまった。ならば、これからはあとでやる仕事のための時間を毎日、必ず確保しましょう。そうすれば先送りを防げるし、必然的に今やる仕事、今日中にやらなきゃ行けない仕事が減るはずです」
日常業務の“水路化現象”(P60)
私たちの仕事の進め方は、
・むずかしい仕事よりやさしい仕事
・初めての仕事より慣れた仕事
・時間のかかる仕事よりすぐ終わる仕事
・期限のない仕事より期限のある仕事
・重要な仕事よりささいな仕事
・自分ひとりの仕事より他人と共同の仕事
・重要な仕事より期限の迫った仕事
・予定された仕事より突発の仕事
を先にする傾向が顕著である。
「時間予算」という考え方を身につける(P78)
ある仕事が生じた時、同時にその期限も決定されるだろう。その期限までに、新たに生じた仕事に振り向けられる時間が果たしてどれほどあるのか、余裕があるのか、余裕がないのか、確認できるような仕事のスタイルにする。
自分ひとりの仕事を1日の主要業務として、なるべく先まで書けるようにすると、仕事の先見性は向上する。
「思いのほか時間がかかった」の評価(P80)
・2割の重要な仕事で8割の重要でない仕事が遅れても気にする必要はない。
・たとえ予定したより時間が余計にかかっても、出来上がりが予定したものよりよければ、気にする必要はない。
仕事を達成できなかった原因の半数は「一切手をつけなかったこと」(P98)
よくよく聞いてみれば、仕事の“開始”を1日、1日と先延ばしするうち、始めるきっかけを失って、結局は手をつけずに終わったというのがほとんど。だからこそ、仕事に着手する、最初の一歩を踏み出すという、一見当たり前のことが、実は極めて重要なことでもあるのだ。
情報処理のプロセス(P114)
1.情報収集
2.情報化項
3.情報発信
※情報発信の目的
「知ってもらう」自分の提案を示し、理解を得る。自分を知ってもらう。
「動いてもらう」自分の提案を理解して、他の人に動いてもらう。
仕事の段取り上手になる3つのステップ(P142)
1.生産性の3要素(投下時間、質、量)を把握する
投下時間は、その仕事を完了するのに必要な時間、その仕事のために使える時間。
質と量は、その仕事を何のためにやるのか、どうしてやらなければならないのか、その目的・理由によっておのずと決まる。
2.行動計画を列挙する(仕事の棚卸し)
仕事を遂行するために必要な行動を列挙し、さらにひとつひとつの行動について、誰がするのかを決定する。
3.具体的行動の優先順位をつける
何から始めるべきかは、仕事の投下時間と質、量が把握できていれば、自ずと決定される。
専門知識を身につけるには(P144)
専門知識を質、量ともに効率的に習得する最良の方策は、新しい仕事に取り組む度に、その仕事の評価、出来不出来の要因の整理・分析を行うことを習慣化すること。
妥当な目標は「ちょっとがんばる」(P146)
・今までよりも投下時間を少しだけ短縮して完成させる
・今までとは違った要素をひとつふたつ取り入れてみる
1日のプランニング(P162)
1.1日の始まりの5〜10分で行う
2.その日コンタクトを取る相手をリストアップ
3.その日行う仕事をリストアップ
4.その中で一番重要な仕事をひとつ選択
5.その仕事を行う時間を決める
プランニングが終わったら、コンタクト業務から開始する(朝にコンタクトしておけば、1日分の時間予算をすべて有効に使えるため)。
仕事の棚卸し実施要領(P164)
1.2週間に1回をめどに実施する
2.未処理事項を書き出す
3.未処理事項に優先順位をつける
4.未処理事項に時間を貼りつける(開始と期限)
5.未処理事項に人を貼りつける
※長期間未処理のままの仕事は、取っても重要な仕事かどうでもいい仕事のどちらか
問題はなくならない。上手につき合う発想が必要(P180)
1.問題は常に存在する(なくならない)。
2.コントロールできるものとできないものがある。
3.コントロールできるところを明確にする。
4.コントロールできるところを拡大する。
5.ダメージは確実に減る(生産性向上)。
問題が問題たるゆえんは、その問題により私たちは何らかのダメージ(時間、お金や気持ち)を受けるということ。解決の方法は3つある。ダメージがゼロとなるよう対処するか、ダメージが少しでも減るように対処するか、あきらめて何もしないか。
ダメージをゼロにするのではなく、少しでもダメージを受けない方法(上記)を取ると、優先順位の重要さもわかるし、やってはいけないこと、すぐやるべきこともわかってくる。
タイムマネジメントの達人になるにはまず「型」から(P184)
まずは基本となる3つの行動を身につける。
・1日のプランニング
・仕事の棚卸し
・自分へのアポイント
この基本を継続し、行動を変えるための「型」を身につけることが達人へのスタート。