作家の村上春樹さんが第23回カタルーニャ国際賞*1を受賞し、そのスピーチが話題になっている。たまたま報道ステーションで一部映像が流れたので見た。いろんな意味で驚いた。
村上さんは写されるのを極端に嫌う人だ。著書でもめったにないし、それ以外ではよほど趣味の合う雑誌のインタビューくらいでしかお顔を拝見したことがない。海外では積極的に講演もされているが、それも撮影禁止の場合が多い。だが、今回は映像があった。
海外なのに日本語でスピーチしていることにも驚いた。村上さんはイギリスやアメリカの大学で教えていたこともある人だ。受賞スピーチくらいたぶん問題なくできると思う*2。
憶測だが、何らかの意図があってわざわざ日本語を選択したのだと思う。
おそらく、村上さんは現在もっとも「世界に対して発言力のある日本人」のひとりだろう。それをわかっていて、すべての責任を引き受ける覚悟で、あのスピーチをしたのだろうと思う*3。
原発反対の立場を明確にすると、仕事を干されたり事務所を辞めざるを得なくなる人も出ている。でも、村上さんは誰にも頼らず、誰からも圧力をかけられないところに立っている。
昔のエッセイに「いっぽんどっこでやってきた」と書かれていたと思う*4。誰かから圧力をかけられたり、言いたいことが言えない、書きたいことが書けないことがいやで、あえてその道を選んだそうだ。文壇というものからも距離を置いていた。
そうか、あの生き方がこの力強いスピーチに結実したんだ、と思ったら何だか目頭が熱くなった。10代の頃からファンだが、この人を長年好きでいてよかった、と思った。
私も仕事上、なかなか言いたいことが言えない時がある。批判を恐れてトーンダウンしてしまう。でも、それはやめようと思った。
「非現実な夢想家」でいいじゃないですか。何かを夢見なければ、決してそれを現実化することはできないのだ。
胸を張って前に進もうと思う。
ぜひ読んでみてください。
村上春樹さん:カタルーニャ国際賞スピーチ原稿全文(上)――毎日jp(毎日新聞)
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