毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

もうひとつの「ハルキワールド」☆☆☆

村上春樹 雑文集
村上 春樹
新潮社(2011/01/31)
¥1,470
図書館で見かけて借りた本。私は村上春樹ファンを名乗っているが、現在はすべての本を発売日に買って読むほど熱心ではない。申し訳ないが、この本のことは図書館で見かけるまで知らなかった(すみません)。
この本はいろいろなところに書いた村上さんの短い文章をまとめたもの。何年も前から構想があったそうだが、その時に仮のタイトルとして「雑文集」と読んでいたら、そのままタイトルになったそうだ。


内容は実にさまざま。いろんな雑誌に頼まれて書いたエッセイや、授賞式のあいさつ(国内では村上さんが書いたものを編集者が読み上げる、というパターンが多かったようだ)、ご自分の小説が翻訳された時に依頼されて書いた序文、さらに短編集で没になった作品まで、熱心なファンでも初めて見た、という文章が多いのではないだろうか*1

ジャンルごとに分類され、それぞれに村上さんの短いコメントがつけられているので、その文章の背景がわかるようになっている*2
音楽についてと翻訳に関するところは、ジャズを聴く人や村上さんの翻訳作品をよく読む人には面白いと思うが、残念ながら私にはどちらも疎いジャンル。いくら村上さんの文章とは言え、よくわからないものをえんえん読むのはハードだった。

反対に楽しめたのは、海外版に載せる序文の数々。村上さんのことをよく知らない(であろう)海外の読者に向けて、ていねいに書いてあるのでなるほど、と思うところが多かった。
あとは巻末の安西水丸さんと和田誠さんの対談。どちらも村上さんとは長年のつきあいの方なので、いろんなエピソードが面白い。

でも、この本で一番読むべきものは、やはりエルサレム賞受賞のあいさつ「壁と卵」だと思う。
YouTubeに一時出たものの、すぐに削除されてしまった村上さんのスピーチが、日本語で読める。村上さんの決意のようなものが伝わってくる。

いろいろな時代の、村上さんのいろいろな面が読める本。ピンと来た方はどうぞ。
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※この本のメモはありません

*1:あのスポーツ誌「Number」に書いた記事まであります!

*2:必ずしも年代順ではないようです