毎日「ゴキゲン♪」の法則

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ユング心理学と仏教は似ている☆☆☆☆

ずいぶん前に探書リストに入れたままになっていた本。ふと思い出して読んでみた。
とても興味深い内容で、面白く読める本だった。


◆目次◆
はじめに……中沢新一
仏教と癒し
宗教と科学は対立しない
箱庭療法の宗教性
アメリカ・インディアン神話の潜在力
善悪をこえる倫理
汎神論風夢理論のこね方
あとがき……河合隼雄

先に読んだ『仏教が好き!*1よりも前に出たおふたりの対談集。さまざまな媒体に出たものをまとめたのが中心で、ひとつだけこの本のために新たに収められている。

ユング心理学の権威と宗教学者が、あちこちに脱線しながらしだいに話が深まっていくのを文字で追っていくのは本当に楽しかった。「与太話」みたいなものでも、このおふたりにかかれば価値のある深い話になる。

中でも興味深いのは、実はユング心理学は仏教に似ているという話。キリスト教的概念では受け入れられにくいものもあるそうで、仏教に似ているから日本で広まったのではないか、という河合先生の話や、それを裏付ける中沢さんの説明は知的好奇心を満たしてくれる。


もうひとつ、感激したのは「箱庭療法」の実際の症例が、写真付きでくわしく紹介されていることだ。河合先生の古いクライアントさんだそうだが、経過を追って写真と河合先生の解説が読めて鳥肌が立った。
専門書にしかほとんど紹介されることのない症例は、箱庭療法に興味がある人なら、そのためだけでも読む価値があると思う。

ほかにも、心理学と宗教学の概要や歴史のようなものを大まかに知ることもできるし、河合先生お得意の「ものがたり」に関する話もとにかく面白い。
この分野に興味のある人はぜひ読んでみてください。専門書にとりかかる前の入門書としても楽しく読める本。
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。

普通、われわれ一般の人が言う道徳とか倫理は、あれは人間の約束事と考えた方がわかりやすい。集団で生きていくためには、ある程度の約束がいるという意味で(河合)(P172)

断片のまま持っておく(P213)

※河合先生のことば
…夢もそうやって断片をつかまえていると、ある時ふと、ひとつの作品というか、「あ、これだ」と思うものが出てくるんですね。これは断片だと思って持っていると、だんだんつながってきて作品になる。ところが、断片が出てきた時に、へんに慌てて解釈すると、そこで終わってしまうようなきがするんです。

…わからないことがすごく多いんですけど、わからないけれど意味があるんですね。わからない、わからないと言っていると、わかるものがポンと出てくる。しかし、わからない時にずっと持っているということは、分析家がいないとできないんです。ひとりでやると、すぐ簡単にわかってしまうんです。わからないと不安ですからね。

そうすると、これはあのことだとかいう風にわかってしまう。われわれだったら、それはわかりませんねえということで置いておいてあげるから、だんだん形ができてくるんです。

道草こそ、道を一番よく知っている(P217)

河合 道草をくっていない人は道のことなんか思っていないですよ。目的だけを思っているんです。道草する人は、道草を楽しんだり苦しんだりしているわけですから。
中沢 僕は河合先生を見ていてもそう思うんですけれど、こういう性格の人はファンダメンタリスト原理主義者)には絶対ならないと思うんです。

自己実現という目標を立ててそこに向かってまっしぐらに行ってしまう人というのは、ファンダメンタリストになるんです。

*1:このリンクは文庫版です