毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

「悪」を薄めてラクになろう☆☆☆☆

※文庫版あり→『偽善入門 (小学館文庫)』(\520)
だいぶ前に「探書リスト」に書いたままになっていた本。リストを整理した時に思い出して借りてみたのだが、まさに今の私にぴったり、という本だった。


◆目次◆
まえがき
1) 道徳の猥褻(わいせつ)さ
 1 タダ乗り偽善
 2 脳内ストーリー正当化ツール
 3 安心偽造ツール=良い子トリック

2) 偽善を使いこなす
 1 偽善グラデーション
 2 アウトロー気取り
 3 偽善プレイ
 4 悪より偽善

3) 善悪の威力
 1 善/悪/偽善/偽悪の勢力地図を描き直す
 2 善悪式・やる気コントローラー
 3 道徳教育の嘘
 4 時間差カルマ
あとがき

何だか不思議な言葉が並んでいるが、書いてあることはむずかしくない。
「偽善って何?」というところから始まって、仏道*1の3つの悪に絡めてこの世を(できるだけ)ストレスなく生きていく方法を教えてくれる。

悪は、ちょっとした考えや反応で生まれるものだそうだ。私たちは毎日悪にまみれて生きているようなものだ。
そして、それが実は自覚のないままストレスになって、やる気をそいでしまうという。

「あの女の子のメイクが下手だな」と些細な苦の感情を抱いただけでも、その傲慢さや人を見下した反発心が心を締めつけます。それは不道徳な感情として、ストレスになり、知らず知らずのうちに、やる気のエネルギーをそいでいるのです。…「あの車いきなり割り込んできやがって」と興奮しても同じように、精進するためのエネルギーのストックは、その都度すり減っていくのです(P175)。

この日々「悪」が生まれる状態を避けるためには、今目の前のことに集中する。今この瞬間を実感することが大切だという。

外の現実や実際に生じている細やかな感覚を無視し、欲や怒りに取り付かれて脳内で勝手にあれこれとこねくり回すことは、実感や充実感をだんだん損なっていく「生きる喜びの不感症」への道なのです(P182)。

「今、ここ」というのは心理学やスピリチュアル系の本でもよく見かけるが、ルーツは仏道の教えにあったとは。

また、いわゆる「カルマ」というものも、ふだん見聞きして何となく思っているものとずいぶん違っていた。

カルマと申しますのは、なにも「殺したから殺されて報いを受ける」といったような単純なものではありません。過去に作った何かに対する「嫌だなあ」というガソリンが心の中に蓄積し、それが原因でたかが風や雨のことにすら心がネガティブに波打ってしまうのです。これがカルマの報いを受けたということなのです(P76)。

「善」が一番いいのはもちろんだが、これは仏道で言えば坐禅などの修業をして得られる貴重なもの。
だが、たとえ「偽善」に感じられても意識して使えば、自分の中の悪を減らすことができ、少しずつでも自分の中の「悪」を薄めることができるのだそうだ。


お坊さんが「善」「悪」について説いているというと、「悪いことはいけません」と怒られるのでは、と思うかもしれないが、この本はちょっと違う。

誤解のないように申し上げますと、私は悪いことをしてはいけない、と申し上げているのではありません。単に、「悪い心を作ると自分自身が報いを受けるから、損をしますよ」と心の法則を伝えているだけなのです(P158)。


怒りや欲、迷いなどの悪が生じることで体にどんな反応があるのか、そのメカニズムがシンプルに語られている。まるで脳科学や心理学のようだが、これが仏道によって説明できるところがすごい。
さすが、池谷裕二さんが『考えない練習』で対談されていただけのことはある。


内容は☆5つつけたいところだが、著者の初期の本は持って回ってような言い方で少し読みにくい*2ので☆は4つ。
最近の私のように、自分にイライラするとか、なぜか怒りっぽいという人はぜひ読んでみてください。
私のアクション:怒りが湧いたら、どこから来たものかさぐってみる
関連記事
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読書日記:『貧乏入門』
読書日記:『考えない練習』


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。

(P25)

もしも相手に直してほしいところがあるなら、それを指摘して相手を責めるより、「ここを直してほしくてしょうがない!」と思ってしまう自分の反応パターンが、自らを操っている様子をチェックして、自分の反応パターンを組み替えてみた方がよい。

(P38)

相手が(たとえば)嘘をついてしまいたくなるのは、相手の脳内ストーリーゆえのことで、相手の都合。それに対して不愉快な感情、責めたい気持ちを作り上げてしまうのも、自らの脳内ストーリーゆえのことで、自分の都合。

(P163)

・映画を観て、つまらないなと思ったら悪人
・今日は蒸し暑くて嫌だなあ、と思ったら悪人
・ごはんを食べながら、味わいに集中せず食後のデートのことを考えていたら悪人
……
こんなものも悪と見なして遠ざけることによってこそ、自分自身が良質なエネルギーによって強力に満たされるので、信じられないくらい得をする。
(中略)
「悪をゼロにすることなんてできるわけがない」と考えて投げ出す前に、今やってしまっている悪を5%なり10%なり減らすと、その分だけ必ずよい報いを得るのが道理。
(中略)
コツコツと悪のパーセンテージを薄めていくことが肝要。

道徳と仕事に対するやる気の間には、強い結びつきがある(P167)

やる気のエネルギーは、欲や怒りなしに集中して何かに取り組んだ時に得られた、過去に詰んだよいカルマのエネルギーを原材料にして作られる。
(中略)
欲望だけたっぷりあっても、それを実行に移すだけの善いカルマを心に蓄えていなければ、欲望にストレスを感じるだけで、結局何もできなくなる。

(P173)

ありとあらゆるストレスは、煩悩から生まれるのであり、ストレスが一定以上溜まると、人のやる気はブレイクダウンしてしまう。
自らの心を見張って、不道徳な感情が侵入してこないよう、厳重にチェックしておくことが肝要。

(P174)

その場ですべき事がこなせずに、ダラダラと過ごしてしまうのは、すべて自分自身が過去に作った欲望や怒りや迷いのカルマが、心の底から浮かび上がってきて、活性化し、報いを受けているのだ。

*1:著者は仏教ではなく、そのもとである仏道の実践者です。仏教と仏道を区別されています

*2:口述筆記をまとめた本なので、説法のようになっているのかもしれません