毎日「ゴキゲン♪」の法則

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くまモンは「もったいない主義」が育てた☆☆☆☆

ゆるキャラ界でも特に人気のくまモン。もともとは九州新幹線全線開業に備え、熊本をアピールするための「くまもとサプライズ」運動のキャラクターとして生まれたそうだ。
なんだか気づいたら人気者になっていた、というイメージしかないが、実はくまモンを全国区の人気者に育てた「チームくまモン」の陰の努力は並大抵のものではない。
この本は、くまモンのサクセスストーリーを裏から丹念に追いかけた、熱い物語だ。
くまモンのことが書いてあるから、と気軽に手に取ったが、とても奥の深いストーリーが展開していた。


◆目次◆
第1部 くまモン関西戦略の秘密―熊本県庁チームくまモン関西部隊
 第1章 熊本をPRしないPR戦略
 第2章 くまモンは日々進化する
 第3章 費用対効果は予算の8倍
 第4章 ゆるキャラから売るキャラへ
 第5章 ダメ出しにくじけずアイデア量産
第2部 くまモン地元戦略の秘密―熊本県庁チームくまモン熊本部隊
 第6章 原点は保育園・幼稚園の子どもたち
 第7章 迷ったらGO!
第3部 くまモン・トップ戦略の秘密―熊本県知事・蒲島郁夫

くまモンが、実は「おまけ」のように誕生したことを知っている人は少ないだろう。生みの親が小山薫堂さんというのは知っていたが、小山さんがもともと依頼されていたロゴマークと一緒に「ついでにキャラクターも作ってみました」と提示したのがくまモンのイラスト。名前もこの時から「くまモン」とついていたという。さすがはもったいない主義の小山さん。

実は、この本の大部分を書いている熊本県庁職員の方がもともと『もったいない主義』をはじめ、小山さんの著書を読んで仕事に役立てていたそうだ。その後「チームくまモン」に加わることになり、小山さんの本を読み返し、その手法を取り入れた結果が、あのくまモンのブレイクだという。
というわけで、この本は「もったいない主義・実践編」とも言えるのだ。


PRなど素人の県職員の集まりが、どうやってくまモン知名度を上げ、本来の目的である熊本県のPRにつなげたのか。
くまモンも、最初は相当苦労したそうだが、その苦労を包み隠さず、しかも笑えるように書いてある。この本を読めば、どんな大ヒット事業も最初は試行錯誤・失敗の連続なんだなということがわかるし、いかに失敗を成功に結びつけるか、どこをどう工夫すれば思うように成果を上げられるかというヒントが山のようにある。
第5章の「ダメ出しにくじけずアイデア量産」などは、とてももともと素人の県庁職員が考えたとは思えないアイデアの数々に驚く。

レベルの高さで言えば、全国区の人気者になったくまモンを今後どうしていくのかをまとめた「くまモンフェーズ2」も注目だ。目的は「末永く愛されるキャラクターを目指して」であり、3つのコンセプトも定めたという。

  1. くまモンのブランド価値を向上する
  2. くまモンと熊本の関連性を強化する
  3. そのための持続可能な仕組みづくりをする(P212)

もちろん、くまモンをここまで育てた経験は大きいだろうが、県庁職員だけの「チームくまモン」で、ここまでしっかりとコンセプトが決められるというのはすごいレベルだと思う。コンサルも広告代理店もいないのだ。
失礼ながら、人ってここまで成長できるのか、と感動してしまった。


さらに、どうしたらできるかを考え続けた結果、「チームくまモン」を離れた今の職場でも、その経験が活きて県の職員らしくない活躍をしている人が多数いるそうだ。奇跡の物語として映画化してもよさそうなくらいだ。
はじめは、くまモンの裏話だからと読んでいたが、途中から別の興味のスイッチが入るくらい面白かった。


また、熊本県知事ご自身が書かれた第3部も興味深い。私は常々ゆるキャラを生かすも殺すもトップ次第と思っているが、間違いなくくまモンの成功はこの知事じゃなければなかったと思う。
他県の知事を表敬訪問するのに(デビューしたばかりの)くまモンを連れて行こう、とトップが考えるなど、普通はあり得ない。知事が職員出身ではなく元大学教授だから、前例のないことを積極的にできたのかもしれない。


全編サプライズについて語った本だが、さらに最後にこの本の出版にまつわるサプライズが。これがかなり感動的だ。
最初は大笑いしながら読んでいるのに、知事の第3部と最後で涙が出るほど感動した。こんな本はなかなかない。

この本のはじめにも書いてあるが、『『もったいない主義』にある手法を素直に取り入れられている部分が多いので、先に読んでおくとより深く読めると思う。ぜひ一緒にどうぞ。
くまモンファンはもちろん、これからゆるキャラを世に出したりお世話する方、その他たくさんの“アイデアを形にする”力をつけたい人必読です。
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※この本のメモはありません