世界一幸せな国としてブームになったブータンについて紹介してくれるのがこの本。期待を裏切らない、素敵な本だった。
◆目次◆
1 仕事に悩んだときに思い出したいブータン人の言葉
2 恋愛・結婚に悩んだときに思い出したいブータン人の言葉
3 家族や子育てに悩んだときに思い出したいブータン人の言葉
4 人間関係に悩んだときに思い出したいブータン人の言葉
5 お金で悩んだときに思い出したいブータン人の言葉
6 人生に悩んだときに思い出したいブータン人の言葉
7 心を磨きたいときに思い出したいブータン人の言葉
8 幸せになりたいときに思い出したいブータン人の言葉
9 真のリーダーになりたいときに思い出したいブータン人の言葉
第5代ブータン国王 来日の際の国会演説全文
あとがき
GNHについては、「あとがき」に詳しく紹介されている。
国民総幸福度、すなわちGNH(Gross National Happiness)は、1976年ブータン国王のジグミ・シンゲ・ワンチュク第4代国王陛下が、世界で最初に提唱した経済開発の理念です(P253)。
また、サブタイトルにもなっている「世界一幸せな国」が大げさではないという根拠が「はじめに」にある。
2005年、ブータンで行われた国勢調査によると、国民の9割以上が「幸せ」と回答したそうです。
正確に言えば、「あまり幸せではない」と答えた人は、わずか3.3%。
それに対して、「幸せだ」と答えた人は51.6%。
さらに「とても幸せだ」と答えた人は、45.1%。
なんと全国民の約97%が幸せを感じて暮らしているのです(P1)。
日本では考えられない数字だ。
じゃあ、いったいブータンの人はどんなことに幸せを感じているのか。何が彼らを幸せにしているのか。
それをさまざまな角度から取材し、まとめたものがこの本だ。
目次を見ればわかる通り、たくさんの言葉をジャンル別にまとめてあるので、まず気になるところから読むこともできる。お金や家族など、それぞれのテーマについてブータンの人たちがどんな風に考えているのかがわかっで面白い。
私は特にベースに仏教の教えがあることが、この国特有の幸福感をもたらしているように感じた。だから日本人がブータンを訪れると昔の日本のように懐かしさを感じたり、お互いの国に対して通じるものがある、と思うのだろう。
この本を手にとってパラパラと見た時に、「会社は夕方4時まで」とか「ビニール袋なしデーがある」というようなことが著名人の言葉やことわざなどに混じって載っていたのでちょっと違和感があったが、気候や歴史、文化などの背景を知っていた方がそれぞれの言葉を理解しやすいからかもしれない*1。
一番印象的だったのが、「幸せですか?」と聞かれて「あなたが幸せなら」と答えた人が多かった、という話。“みんなが幸せになれないと、自分も幸せになれない”という考え方が浸透しているのだそうだ。
それを裏付けるエピソードもある。JICAブータン駐在員事務所所長・仁田知樹さんから聞いた話で
日本の風習を知ってもらおうと、ブータンの人たちを呼んで七夕パーティを開いたところ、集まった全員のブータン人が短冊に、「地球上すべての人たちが幸せになりますように」と書いたと言います(P208)。
日本人はホスピタリティーがあって人に親切だと言われるが、ここまで人の幸せを祈れる人はほとんどいないのではないだろうか。
私たちが住んでいるのは日本で、気候も風土も違うブータンの考え方や風習をそのまま取り入れるわけにはいかないが、「こういうのを幸せと言うんだったな」と初心に返れる本だと思う。
著者として名前が上がっているのは監修者である日本GNH学会常任理事の方だが、実際の取材に従事したのは「徳間書店取材班」。あの『プロ論。』シリーズ*2や『最高齢プロフェッショナルの教え』を手がけた精鋭なので、読みごたえがあるのも当然だ。
時間に追われていたり、毎日を過ごすので手いっぱい、という余裕のない方はぜひ読んでみてください。元気が出ます。
私のアクション:今の状況に満足する
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
ブータン人は幸せの達人(P3)
ブータンの人々は、過去を後悔しません。未来を心配しません。今置かれている状況とても満足して、幸せを感じています。
ブータンの人々は、無理をしません。自分を知り、身の丈にあった生活することで、心の豊かさを見失わないようにしています。
「服は、季節に合わせて着なさい。食べものは、ふさわしい時間に食べなさい」(P25)
しかるべきときに、しかるべきことをしなさい。仕事を理由にきちんとした生活をすることを怠ってはいけませんよ、という意味。
「小麦を蒔いたら、小麦が実ります。大麦を蒔いたら、大麦が実ります。すべてのことには、原因と結果があるのです」(P49)
今ある自分は、もともと自分が蒔いた種。だから、いつもいい種を蒔いておかなくてはならない。
「洞窟に宝物はなかった」(P129)
人が自分の期待に応えてくれなかった時に使う表現。
例)会社で期待していた部下が、その通りの成果を出してくれなかった時など、「いやあ、洞窟に宝物はなかったよ」などと言う。
他人を責めないブータン人の思いやりの精神が感じられる。
「起こることは何をしても起こるから、先のことを考えてもしょうがないよ」(P154)
「外側の汚れは水で清めろ。内側の汚れは言葉で清めろ」(P181)
「体についた泥は水で落とせるが、心についた泥は言葉じゃないと落とせない」という意味。
「いつもいい心でいる」(P185)
いい心であれば、何でも見える。悪い心の人は、何も見えません。何か問題にぶつかったなら、まず、いい心を取り戻すことが重要です。そうすれば、おのずと原因が見えてくるでしょう。
「人生において、永遠に続くものは何もないのです」(P200)
人生は永遠ではない。だから、私たちは何が大切で何が大切でないのかを注意高く見極めなくてはならない。そして、生活は、うまく配分されなければなりません。