何が違うんだろうな、と思って見ていたら、去年までよかったピッチャーが揃いも揃って調子を落としているようだ。
「それってコーチが変わったから?」と疑問が湧いたところに、去年まで投手コーチを務めた吉井氏がこの本を出していることを知り、さっそく借りて読んでみた。
なかなか通好みの1冊だった。
◆目次◆
第1章 投手のダンディズム
第2章 投手に必要な三つのコントロール
第3章 投手コーチが教えられるたった一つのこと
第4章 エースの条件
第5章 プロフェッショナルな指導者
第6章 メジャーへの挑戦
吉井氏は、あの40年会のメンバーだ*1。一流選手が多数生まれた年だが、読んで感じたのは、「あれっ、過小評価していたかも」だった。
何しろ、仰木さん、権藤さん、ボビー・バレンタインさん、野村さんと超一流の指導者のもとで野球経験を積み、メジャーにも5年間在籍、きちんと結果を出した投手なのだ。
現役引退後、即コーチに就任したので大丈夫かな、と心配したが、この本を読めば非常に明確な考えのもとに指導していたということがよくわかる。
中でも最大の特徴はメジャー仕込みの「コンディショニング重視」の調整法。“コーチは教えすぎてはならない”という権藤さんの考え方はもちろん、メジャーに渡って最初についたコーチの「選手のことを一番よく知るのは選手自身」という姿勢に感銘を受けた著者は、コーチは競馬でいう調教師の役割だと言い切る。選手のコンディションをいかに整えるかが仕事というのだ。
日本式の「中6日」が実は調整がむずかしいことなど、新鮮な話が多数あった。
ピッチャーがコントロールしなくてはならないことは三つある。
1.ボール
2.力の入れ加減
3.感情(P48)
先発ピッチャーの判断の目安としては、「三回登板して、一回よくて一回悪くて一回普通」というのは普通だということ。これが三回ともダメとなると、チームに迷惑がかかるから、降格やローテーションのスキップを考えないといけなくなる(P74)。
ピッチャーにはおよそ三週間周期のバイオリズムがある。三週間調子が悪くても、そこを乗り切ると次は調子がいい三週間がやってくる(P75)。
試合でピッチャーを見る目が変わりそうだ。
5年間のコーチ経験についてくわしく書いてあり、ファイターズファンにとっては文句なしに面白い。選手のことまで実名で詳細に書いてあるので、ここまで書いていいのか心配になるくらいだ。
もちろんコーチの話だけではなく、自身の現役時代の話やメジャーの話もあり、野球ファンにも楽しめる。
ピッチングの組み立て方や球種もくわしく、投げ方まで言及してあるので、野球経験のある人ならさらに面白い本だろう。
監督と方針が合わず退団になったのは残念だと本を読んで改めて思った。ぜひ投手大谷を育ててほしかった。苦労している斉藤投手も、独り立ちするまで見てほしかった。
どちらかと言えば古い時代のプロ野球を知っている人の方が、より楽しく読めるはず。
ピンと来た方は読んでみてください。
私のアクション:ピッチャーのバイオリズムを意識して試合を見る
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※この本のメモはありません