毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

コミュニケーションに一番必要なこと☆☆☆

家族が借りてきた本。タイトルだけ見たら、コミュニケーションのノウハウを紹介した本だと思うが、実はまったく違う。


◆目次◆
はじめに
第一章 会議通訳の現場
第二章 通訳者への道
第三章 通訳者の生活とその技術
第四章 国際会議の日本人
第五章 言葉を伝えるための「五つのヒント」
おわりに

著者は同時通訳の第一人者で、サミットなど主要な場に欠かせない通訳者だ。あの2020年・東京オリンピック招致の時にも同行されていたそうだ。

私はたまたま以前NHK「プロフェッショナル・仕事の流儀」で、著者の仕事ぶりを見て感動した*1のでとても面白く読んだが、マニュアルを求めて手に取ったら肩すかしを食った気がするかもしれない。


一応、狙いはあくまで“通訳の手法を一般的なコミュニケーションにも活かす”ことのようだが、残念ながら同時通訳に興味のない人には読み通すのがむずかしい本なのでは。

第5章では「言葉を伝えるための5つのヒント」として、通訳の5ステップを紹介してそこからコミュニケーションのコツをつかめることになっている。タイトルに沿っているのはこの章だけかもしれない。


あとは、どうやって英語を習得したかとか*2、著者が子育てと仕事を両立するためにどんな考え方をしていたか、といった内容や、著者が長年接してきた政治家たちのパーソナリティや同時通訳の苦労といった裏話的なもの。


ただ、さすがは長年「言葉を相手が理解できるものに置き換える」仕事*3に携わってきた人だ。なぜ国際社会で通用しない日本人が多いのか、理解してもらいやすい政治家は他の人と何が違うのか*4、といった見解は非常に鋭い。

また、第5章で紹介している「5ステップを日本語でのコミュニケーションに応用できる」という考え方はとても新鮮だった。
下のメモにもあるが、日本語であっても“相手が理解できる言葉に置き換える”のは重要な作業なのだ。

「英語の単語が聞き取れないのは知らない単語だから」というのは、リスニングに苦労していた時に知って衝撃を受けたが、日本語でもやはり知らない単語は聞き取れない。聞き返されたら、「この人のボキャブラリーにこの言葉はないんだな」と察知して、その人がわかる言葉に言い換えるのがコミュニケーション能力の高い人だ。
家族は残念ながらこれが察知できず、私が聞き返しても同じ言葉を自動再生機のように繰り返す。この本は途中で読むのをやめていたが、ここは読んでほしかった。


著者の考える、伝えるために必要なものは「コンテンツ」「熱意」「論理性・構成力」の3つだそうだ。前ふたつは技術以前の問題だし、論理性もこの本から感じられるのは「どうすれば伝わるか」という、一種の思いやりのようなものだ。
コミュニケーションはマニュアルではないんだ、ということが一番の収穫かも。

一見まったく逆のように思うが、実は共通していると感じたのは阿川佐和子さんの『聞く力』。相手を理解したい、という強い気持ちがコミュニケーションの基本には必要なのだ。
ちなみに、家族はどちらも途中で挫折。安易にマニュアルを求める気持ちそのものが、コミュニケーション能力の低さを物語っているような…。

読む人を選ぶ本だと思います。英語や同時通訳に興味のある方はどうぞ。
ただ、アマゾンでは「通訳の仕事に関係なくても楽しめる」「一般的なコミュニケーションにも役立つ」とおおむね好評です。読み通せるかどうかで、ご自分のコミュニケーション能力を推し量れるかもしれませんよ。
私のアクション:伝える前に、「コンテンツ」「熱意」「論理性・構成力」が揃っているか確認

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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
注)かなり自分の言葉に置き換えて書いています

相手にしっかり伝えるために必要なもの3(P21)

1.「誰かに伝えたい」と思う内容(コンテンツ)を持っているか
2.それを伝える熱意があるか
3.話を相手にわかりやすくするための論理性・構成力があるか

著者の考える「通訳」の作業5ステップ(P144)

1.聞く
2.理解する
3.分析する
4.翻訳する
5.話す
実は、このステップは日本語のコミュニケーションにも適応できる。

ステップ4の「翻訳」は「言葉を聞く人が理解できるものに置きかえる」ことで、普段の日本語の会話でもそういう配慮はしているはず。
専門用語や略語を他のフィールドの人に話す時。
若者言葉を、違う世代の人に話す時。
その作業をおろそかにする人は、コミュニケーション能力は低いという評価に。

スピーチは「聞く人に理解してもらうこと」が目的(P147)

「理解する」ためには、教養とは別に「個別の予備知識」が必要(P148)

発言者のプロフィールや、そのスピーチをするに至った背景をできるだけ知っておく。たとえば、戦争に反対するスピーチをする人物が、過去に戦争で家族を失ったことを知っていれば、発言者のメッセージをより深く伝えることができる。

コミュニケーションを図りたいと思う相手との対話に望む際に予備知識の収集・学習を怠る人は、その程度の理解・コミュニケーションしかできない。

発言者の人物像が頭に入っていなければ、その発言は正しく理解できない(P150)

相手の人物像を理解することは、交渉を進める上で非常に有利な条件となる。そのためにも、まず相手の発言を理解しようという努力が必要。

*1:Daily motionにUPされていたのでリンクを貼っておきます http://www.dailymotion.com/video/x1fnym1_%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB-%E4%BB%95%E4%BA%8B%E3%81%AE%E6%B5%81%E5%84%80-%E8%A8%80%E8%91%89%E3%82%92%E8%B6%85%E3%81%88%E3%81%A6-%E4%BA%BA%E3%82%92%E3%81%A4%E3%81%AA%E3%81%90-%E9%80%9A%E8%A8%B3%E8%80%85-%E9%95%B7%E4%BA%95%E9%9E%A0%E5%AD%90_shortfilms

*2:といって英語をマスターする方法を伝授してくれる本でもありません…

*3:著者は「英語から日本語」「日本語から英語」の両方の同時通訳をこなされます

*4:ちなみに、著者が最も通訳しやすかったのは小沢一郎氏。とても論理的で英語に置き換えやすかったのだとか。逆に日本で嫌われるのも論理的過ぎるからでは、という分析でした