毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

願ってるだけじゃ、ジャンプは跳べない。☆☆☆☆☆

今年の3月、現役を引退したフィギュアスケート元選手・鈴木明子さんの本。
ネットでこの本のことを知った時から読みたいと思っていたが、期待どおりの素晴らしい本だった。


◆目次◆
はじめに
第1章 地道な努力で夢をつかむ
第2章 逆境が人を強くする
第3章 心の強さが技術を伸ばす
第4章 「いまできること」が未来をつくる
おわりに

鈴木明子さんのことをよくご存じない方のために、どんな選手だったのかを私なりに解説すると、

  • 難易度の高いジャンプをバンバン跳ぶタイプというよりは、表現力で魅せるタイプ
  • 自分の世界観を表現するのがとてもうまい。見ていて引き込まれる
  • 大学時代のブランクを乗り越えて現役に復帰、スケート選手としてはベテランだった

という感じだろうか。私のまわりはジャンプをガンガン跳ぶ選手が好きな人が多いのか、あまり評価されていなくて残念だったが、私は毎シーズン「今年はどんなプログラムを滑るのだろう」と一番楽しみにしていたのが鈴木さんだった。ご自分をよく知っていて、それに合った演目を作り、練り上げていくのがとてもうまい選手、という印象だった。

 

この本は引退を機にご自身のスケート選手人生を振り返ったものだが、拒食症という病気を乗り越え、“あまりジャンプは得意ではない”自分を奮い立たせてソチ五輪入賞を果たすまでがストレートに書かれている。

拒食症でスケートから離れていた時期があることは聞いていたが、くわしいことはこの本で初めて知った。
この病気は母親との関係の問題が根底にあることが多い。鈴木さんも包み隠さず書いてあるので、ここまで書いて大丈夫なのか読みながら心配してしまった。
でも、それを乗り越えてオリンピックに2回も出場する選手にまでなったプロセスは、今この病気で悩んでいる人や、さまざまな理由で足踏み状態に置かれている人にとっては素晴らしいメッセージになると思う。
私も感銘を受けるところが多くて付せんだらけにしてしまった。

 

技術的な話になってしまうが、近年ジャンプで必須なのが3回転−3回転の連続ジャンプだ*1。当然単発よりも連続ジャンプの方が得点が高く、連続でも3回転−2回転より3回転−3回転の方が高得点になる。
上位に来る選手はこの3回転連続ジャンプを組み込むのが当然なのだが、鈴木選手は確かオリンピックシーズン直前まで、3回転−2回転しか入れていなかった。
なぜなんだろうと思っていたが、その理由も書いてあった。

一般的には、10代のまだ体が軽いうちに、この大技を練習するそうだ。
ところが鈴木選手はその時期に拒食症で練習できなかったため、習得できないままになっていたという。
しかし、オリンピックを狙うならやはりこの技が必要、ということで20代後半になって習得にチャレンジしたそうだ。

そこに書いてあった、「ジャンプを跳びたいと願っているだけでは跳べるようになりません」という言葉が胸を打った。みんな当たり前のように跳んでいる(ように見える)が、できるようになるためには必死で練習し、転んで痛い思いもたくさんしているのだ。
私は願望を持って祈ることはよくするが、そのための行動が圧倒的に足りない。「そりゃそうだ、祈るだけでジャンプが跳べるようになるわけないや」とバカみたいだが衝撃を受けた。

 

鈴木さんは特に運動神経がよかったわけでも、センスのあるタイプでもなかったそうだ。だから、コツコツやるしかなかったのだという。

「おわりに」にある言葉が心に染みた。

 一歩一歩しか進めないと、すごく時間がかかります。途中で「大丈夫かな?」と不安になることもあります。
 でも、前進していることが感じられればそれでいいのです。

 ひとつ進んだことを喜びましょう。
 少しだけ上達したことに幸せを感じましょう(P154)。

 一度にいろいろなことを覚えるのには要領がいります。
 3段も4段も飛ばして成長するのには特別な力が必要です。
 でも、ひとつずつ、少しずつがんばることに、センスも才能もいりません。
 ただ、「そうしよう」と思えばいいのです(P155)。

自分のことがよくわかっていなければ、こんなことは言えないし、きっと結果も出せない。
学ぶことがたくさんある本だった。

 

フィギュアスケートファンとしてはいろいろと要望があるようで、アマゾンでの評価は低め。
確かに、これまでの成績とか、シーズンごとの衣装やプログラムもあった方がうれしいし、カラー写真もほしい。
ただ、書かれている内容は素晴らしいし、フィギュアスケートにあまり興味がなくても、今の状況があまりよくない人にはぜひ読んでほしい本だ。
押しつけがましくないので、心がちょっとひねくれてる時でも読めますよ。
私のアクション:願うだけじゃなくて、行動する
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。

「いまできること」を最大限にやろう(P12)

最後まで自分らしさを失わないようにしよう。

生きているから痛みもわかる(P16)

苦しいのもつらいのも、生きているからだと思いました。

底辺を上げる(P27)

私がずっと取り組んできたのは「底辺を上げる」こと。どんな時も、「自分の演技」をすることを考えました。
自分の「底辺」とは、「最悪の状態」のことです。
「一番ダメな時でもこれくらいはできる」というラインを上げようと考えていました。

3回続けて成功してはじめて本物(P28)

1回目はまぐれでできるかもしれない、2回目も勢いで成功するかもしれません。でも、大事なのは3回目だと。…不思議なことに3回目に失敗することが多くて…「3回続けて成功してはじめて本物」だと考えていました。「3回連続でうまくいけば、本番でもやれる」と。

目立たないことをコツコツと(P31)

ジャンプは成功と不成功がはっきりしているので、「できた」ことがひと目でわかります。でも、滑りは、上達したかどうかがなかなか見えません。
(中略)
今日これだけ練習したから明日できる、というものではありません。でも、ずっと続けていると、ある日突然なにかをつかめるのです。自分で「滑りが変わった!」と思える瞬間があります。

「ジャンプを跳びたい」とどれだけ祈ってみても、できるようにはなりません(P58)

「何をしなければならないか」を具体的に考えることが大切なのです。(中略)
まずは目標を掲げること。足りないことをひとつずつ積み上げていくこと。うまく行かなかったことを修正していくのです。

心が折れることがあってもいい。でも、あきらめないことが肝心です(P65)

「もし、病気になる前に戻れたら?」(P90)

そう考えても、何も変わりません。
「戻ろうと考えているうちはダメなんだ」
ある日、そう気がつきました。
「元に戻る」ことを目指すのではなく、成長しようと。
過去ではなく、未来を見るようになりました。
「戻る」んじゃなくて、「進む」んだ、と思った時に、一歩前へ進めた気がします。
「3日前は跳べたのに……」と思っても、3日前とは違う体になっています。
大切なのは、「今の自分がどうか」です。
人間は思考に左右されるものですが、思考は自分で変えられますから。

その時の自分が決めたことを信じる(P96)

私はいつも、その時の自分が決めたことは、「ベストだ」と思っています。あの時の自分がたくさん迷って決めたこと、出した結論を、自分で信じないでどうするんですか?
自分の選択は、その時一番必要だったこと。あとから「違うかも」と思っても、もう迷わない。
(中略)
間違ったことは修正すればいいんです。

反省も後悔もせずに、活用しなさい(P118)

反省を反省で終わらせないで、次に活用する。これが大事なのだと思います。
いくら反省しても、そこで感じたことを活用しないと意味がありません。

活用するかどうかで、大きく違ってきます。
反省を活用することで、マイナスをプラスに転換できるのです。

願うだけでは何も叶わない(P129)

願いは叶わないかもしれないけど、叶うと信じてがんばることが大切です。
願うだけでは、何も叶いません。
願いを叶えるために自分が何をするかを考え、行動することが大事です。

*1:女子でコンスタントに4回転を跳ぶ選手はまだいないので、3回転の連続ジャンプが最も難易度が高くなります。どのジャンプをふたつ組み合わせるかによって得点は変わります