ある東京ヤクルトスワローズファンの男性が、ふと「他球団のファンクラブってどんなのだろう?」と思ったことから、12球団すべてのファンクラブに加入。何とそれを10年続け、そのてん末が本になったという。
最初は、「そんなバカな(失礼)ことをする人もいるのか…」と驚いたが、家族が借りて来たので読んでみたら、これがめっぽう面白かった。
◆目次◆
全12球団入会の“暴挙”は不信感から始まった
新サービスはロッテから!会員情報システムを構築
移籍マネー還元で西武の「松坂FC革命」スタート!
金満ジャイアンツ、ゴージャス路線を独走!
血迷ったか、ベイ!?まさかの改悪で時代に逆行
生き残りのキーワードは「レディース会員を獲得せよ!」
震災と野球――見せましょう、ファンクラブの底力を!
ファンもあきれる中日「落合前監督批判騒動」が勃発!
オリックス&DeNA、崖っぷち2球団が大逆襲!
ついに10年目!阪神ダイヤモンド会員は「カネより忠誠心」
歴代ファンクラブ特典
ファンサービス界を揺るがせた10大事件 ファンクラブ事件簿
ファンサービスも低迷していたDeNAが2014年は大躍進!ベイスターズファンクラブに何があったのか?
最初のきっかけは、“スワローズファンクラブの特典が年々ショボくなり、会費分の価値があるのか”と思ったことだという。
他球団ファンクラブの内容を知りたくても、深いベールに包まれていて、入会しなければわからない。
というわけで著者言うところの「暴挙」が始まったのだが、それを10年続けるところがすごい。
入会特典のほとんどはグッズなので*1、年々増え続けて部屋を占領してしまったそうだ。
でも、何ごとも続けることで価値が出てくるものだ。10年分、その流れをきちんと追ったこの本は、立派な“プロ野球盛衰記”になっているのだ。
「いかにお客さんを引きつけ、ファンを続けてもらうか」という戦略は、そのままマーケティングのトレンドにつながっている。
特典グッズが選択制になったり、モノよりも球場に観戦に行った時のポイント還元などに力を入れるようになったり、最近ではカープ女子に見られるように、女性ファンをいかに増やすかが大きな戦略になっている。
プロ野球の順位やニュースだけでなく、それぞれの年のできごとがコンパクトにまとめられているので、この10年を丸ごと振り返ることもできて面白い。
著者はライターなので、文章や全体の作りも質が高く、読みやすい。
それにしても、やはり他球団がどんなことをしているのかを一気に見られるのは素晴らしい。
さすがのお金持ち球団・巨人の特典クウォリティの高さは飛び抜けているし、毎年早々に募集を締め切ってしまい、継続年数によってグレードが上がっていく阪神のやり方は他球団にはおそらく真似できないと思う。
私がうらやましかったのは、東海地域以外に住む中日ファン向けの、「他球場の観戦チケットプレゼント」だった。地元以外のファンも大事にする球団はいいと思う。
地元に手厚く、それ以外のファンは別にいいです、という方針の球団もあるが*2、引っ越しなどで行けなくなる人もいるだろうし、パリーグは球団が本拠地移転しているケースもかなり多い。
著者は「地元だけ優遇」には反対派なのだが、強力に地元還元を推し進めるある球団職員との対談は平行線のままだった。それぞれ方針もあるだろうが、一度もホーム球場に行けていない*3私のようなファンにも優しいチームだとうれしい。
この本を読めば、各球団がファンクラブをどう位置づけ、どれだけ熱心に取り組んでいるかがバレてしまう。ぜひ球団関係者の方は読んで、改めるべきところは改めてください。
プロ野球ファンの方は、好きなチームのファンクラブはどのくらい価値があるかを冷静に見定められるいいきっかけになります。納得できたらぜひ入会してください。
私のアクション:京セラドームに行ったら、ファンクラブ継続者のネームプレートを探す*4
※この本のメモはありません
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※少し毛色の違ったプロ野球本ということで。こちらは中日しか出てきません