月刊誌『CUT』の連載を加筆・訂正したもの。
おそらく帯と思われる部分の切り抜きに*1
吉本ばななの小説、奈良美智の絵画、そして中島英樹の装幀、世界が認めた3人の日本人アーティストによる本格的コラボレーション(以下略)
とある。なのに、奈良さんの絵は中には全然ないのが不思議*2。
装幀は文章の組み方というのか、詩のようになっていたり、台本のように上下にあったりで飽きさせない作り。
表紙の手触りもきっと素敵なのだと思うが、カバーがかかっているのでわからない。残念。
◆目次◆
崖の途中の家の夢
居候生活
いちぢくの匂い
再生
写真
雨
首の話
予備知識なく読み始めたら、短編集ではなく、ひとつのストーリーだった。
上でさんざん文句を言った(すみません)のに何だが、きっと文庫で読むのと、この本で読むのとでは感じがずいぶん違うだろうと思う*3。何となく、“愛らしい掌編”という印象だ。
きっと、小説の内容と、この本の作りの両方が醸し出しているのだと思う。
主人公は「ひな菊」という名前の女の子で、母子家庭に育っていたが、小さい頃に母親を亡くし、おばさん夫婦に育てられた。今はおばさん夫婦のやっている焼きそばの店を手伝っている。
やっぱり、「偉大なるワンパターン」を継承していると思う。
それでも、初めて読むのに懐かしさすら感じる、吉本ワールド全開だ。
今まで読んだ作品の中でも、「夢」が特に深い意味を持っているのも印象的だった。
ここまではっきりした夢が見られる吉本さん*4がうらやましくなった。
読み終えた時にしんとした気持ちになりますが、同時に前向きに生きていこうとも思える、不思議な作品です。
さらっと読めるので、ピンと来た方はぜひどうぞ。
私のアクション:文庫版で奈良さんの絵を見てみる
※この本のメモはありません
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