「野球観戦ガイド」を書くのに、これ以上ふさわしい人もいないと思う。
ワクワクして読んだが、予想以上にマニアックな本だった。
◆目次◆
第1章 ピッチャーの観方
第2章 バッターの観方
第3章 守備の観方
第4章 監督の戦術の観方
おわりに
私はプロ野球を長い間見ている*2が、細かいプレーについてくわしく追究するタイプではない。バックネット裏で腕組みしながら見ているファンの方*3などに比べれば、ずっとライトなファンだと思う。
そういうファンに優しく教えてくれるというよりは、「より玄人寄りの見方をするには」という指南本に近い。
フィギュアスケートの荒川静香さんや、村主章枝さんの本よりはずっとハードルが高いことはお伝えしておきます。
ファンの人口を増やしたい競技と、すでにファンがたくさんいる人気競技の違いなのだろう。
ご本人も、最初に「あくまで自分が思う、“こう見たらもっと面白い”ガイド」だ、と書かれている。だから「古田式」とタイトルについているのだ。
時々むずかしい、と覚悟を決めて読めば、なかなか面白い。
キャッチャーが一番野球全体を見られるポジションなので、その目を通して見る試合はふわっと見ている時の何倍も深い。
私が特に面白かったのは、守備位置やポジションカバーの話と、リードについて。
キャッチャーの配球を予想しながら見ると、また違った楽しみ方ができそうだ。
ただし、テレビ観戦だと見たいところが映るとは限らないので、この本の内容に沿って見るには、球場観戦した方がよさそう。
古田さんが語る“野村監督の教え”はやはり興味深かった。今まで師弟関係についてはさまざまなところで目にしてきたが、古田さんの言葉で読むのは初めてだったので。
「超一流のキャッチャー」として球史に残る古田さんが、怖さのあまりサインが出せないイップス状態になっていたとは知らなかった。誰でも、苦しい時期を乗り越えてきているのだ。
あとひとつ、難を言えば、例に挙げられている選手がやや古め。今の試合を中心に見ている人よりは、昔から見ている、それこそ古田さんの現役時代をよく知る人の方が楽しく読めると思う。
もうちょっと深く野球観戦がしたい人、キャッチャーが何を考えているか知りたい人はぜひ読んでみてください。
私のアクション:球場で、キャッチャーがファーストまで本当にカバーに走っているか見る
※映画監督・周防正行さんとの対談をまとめた本
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
観察することで「理由」がわかる(P114)
急に(バットを)短く持つようになったからどういう心理なのかは、今はわからない。しかし、野球はその後必ず結果が出る。理由はわかる。結果を見ることで、そのバッターの考え方を知る。そこで知り得た情報が次からの対戦で生きる。
「楽しんでやる」の意味(P172)
よくテレビのインタビューなどで「結果を気にせず、楽しむことが大事」というようなコメントを耳にするが、こういう言葉は結果に対して逃げているようにしか思えない。エンジョイベースボールという理念を否定するつもりはない。ただ、「楽しんでやる」の意味を間違えないでもらいたい。
ハイ・プレッシャーでシリアスな状況になると、当然のことながら人間は緊張し、身体や精神が硬直してしまう。プロはこの硬直や緊張をほぐし、平常心を取り戻すために「楽しむ」という言葉をあえて使う。
野村監督の仕事の3原則「計画、実行、確認」(P180)
変化が進化となる(P186)
変化を好まないものは進化しない。