奥野宣之さんの『「読ませる」ための文章センスが身につく本』で紹介されていた本。
自ら「筋金入りの雑文好き」と名乗る奥野さんおすすめの本だ。それなりに期待して読み始めたが、そのずっと上を行く面白さ。本を読んでこんなに笑ったのは久しぶりだった。
シンプルに読んで面白い本に「☆3」以上の評価をつけることはめったにない*1が、文句なしに☆4。
◆目次◆
はじめに
第1章 ロジック篇
第2章 マインド篇
第3章 現場篇
あとがき
索引
はじめに申し添えておくと、「ブルボン小林」はペンネームで、本名は「長嶋有」さん。そう、あの『猛スピードで母は 』*2の著者、芥川賞作家だ(すみません、未読です)。
でも、こういうコラムなどを書く方が先だったようで、「ブルボン小林」名義の本も何冊も出ている。
芥川賞作家の書く文章か…と思いながら読み始めたら、おかしい。とにかく着眼点も面白ければ文章も笑いのツボを直撃する。
笑いすぎて涙が出るとか、笑い続けて「腹筋痛い…」になったのはいつ以来か、と思うくらい笑った。
本の内容は、タイトルそのままで、とにかく「ぐっとくる」題名を取り上げ、あれこれ言う、というシンプルなものだ。雑誌の連載を中心に1冊にまとめたもので、題材は小説に限らず、曲のタイトルやマンガまで幅広い。
実際に読んで笑っていただきたいので、具体的には書かないが、たとえば「部屋とYシャツと私」(平松愛理)というタイトルは分析していったらホラーに!というくらい深いのに、「恋(いと)しさとせつなさと心強さと」(篠原涼子)には“哲学は微塵もない”とバッサリ*3。
タイトルを見ただけで笑ってしまうような作品を探してくる嗅覚もすごいし(しかも、実は読んでない作品もけっこうある)、切り口も思いがけないものが多くて「そう来るか」という斬新さも面白味になっている。
ただ題名について語るだけでは物足りないと思われたのか、第3章はやや実用的な内容だ。
「タイトルは実際にどうやってつけるのか?」がテーマ。
ご自身の作品の話*4や、親しい編集者に依頼された「ある新書のタイトルが数ある候補からどう決まったのか」という話は、ふだん知るチャンスのないことなので、興味深かった。
実用編の前にも、『ハリー・ポッターと謎のプリンス』*5のタイトルが実は原題とは違っている、という話があった。「いいタイトルとは何か」について考えさせられる話だった。
大笑いして楽しめるが、それだけではない。タイトルの奥深さについて考える機会もくれる、バランスのいい本だ。
著者の狙いは「実際にタイトルをつける人にとって役に立つ本」だそうなので、何かのネーミングに迷った時にもヒントになるかも。
私がネーミングで迷うといったら、とにかくブログのタイトルだった*6。次に考える時は参考にしたい。
おそらく年代的なものもあるし(著者は1972年生まれ)、笑いのツボは個人差が大きいので何とも言えませんが、はまる人には最高に笑える本です。
私のアクション:「長嶋有」名義の小説も読んでみる
■レベル:守
※この本のメモはありません
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