毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

誰もハッピーにしない本☆☆

※ [Kindle版] はこちら

武田砂鉄さんのことはネットの記事で知ったのが最初だった。切り口が新鮮で、面白いと感じたので一時期Yahoo!個人のページを定期的に見に行っていた(現在は更新されていません)。

その武田さんが本を出していた。しかも、

とあったら、これは読まなくてはと思う。図書館で予約して、しばらく待った。読んでみたら、想像をはるかに超えて読みにくい本だった。


◆目次◆
はじめに
乙武君」………障害は最適化して伝えられる
「育ててくれてありがとう」………親は子を育てないこともある
「ニッポンには夢の力が必要だ」………カタカナは何をほぐすのか
「禿同。良記事。」………検索予測なんて超えられる
「若い人は、本当の貧しさを知らない」………老害論客を丁寧に捌く方法
全米が泣いた」………〈絶賛〉の言語学
「あなたにとって、演じるとは?」………「情熱大陸」化する日本
「顔に出していいよ」………セックスの「ニュートラル」
国益を損なうことになる」………オールでワンを高めるパラドックス
「なるほど。わかりやすいです。」………認め合う「ほぼ日」的言葉遣い
「会うといい人だよ」………未知と既知のジレンマ
「カントによれば」………引用の印鑑的信頼
「うちの会社としては」………なぜ一度社に持ち帰るのか
「ずっと好きだったんだぜ」………語尾はコスプレである
「“泣ける"と話題のバラード」………プレスリリース化する社会
「誤解を恐れずに言えば」………東大話法と成城大話法
「逆にこちらが励まされました」………批評を遠ざける「仲良しこよし」
「そうは言っても男は」………国全体がブラック企業化する
「もうユニクロで構わない」………ファッションを彩らない言葉
「誰がハッピーになるのですか?」………大雑把なつながり
おわりに

この本は初めての著作だそうだ。しかも、書き下ろしらしい*1

読みながら、ずっとモヤモヤしていた。このモヤモヤは何だろう、と考えていて、途中でハタと気がついた。
著者紹介では「ライター」となっているが、この人の立ち位置は「評論家」なのだ。そう思って読めば、納得がいく。

もうひとつ、著者の立ち位置を知ることばが中にあった。

 先日、気の合う同い年の女性とこんな会話をした。口から出る八割が皮肉、残り二割が諦めという、体内成分が合致する友人だ(P89)。

この後、『情熱大陸』批判へと続く。この本の中身も、ほぼこんな割合と思えばいい。


切り口はやっぱり新鮮で、時々ハッとするところもある*2のに、皮肉が強すぎて、斜めから見すぎで読んでいて疲れてしまう。

奇しくも、私のモヤモヤを形にしたことばが最後の記事に出てきた。

……批評性が比較的強い原稿を出した際に、「面白いんですが、この原稿を読んで、誰がハッピーになるのですか?」と問われたことがある。メールで送られてきた文面を見ながら目を疑った次に相手を疑い、「原稿とは、ひとまず人をハッピーにしなければならないのでしょうか?」と返すと、「まぁでも、わざわざdisる必要はないですよね〜」と再度返されてしまう(P273)。

このメールの相手(編集者だろうか)の気持ちがよくわかる。
この本は、誰も幸せにしない。おそらく、それはここに書かれていることが「批評」ではなく「批判」だから。

深イイ話だけを集めろとは思わない。何か重要なことから注目をそらすために、動物や子供やカワイイものでごまかすやり方が正しい、とも思っていない。
伝えるべきことを伝えるのに、もっとわかりやすくて読んだ人を不快にしない書き方はあるはずだ。つくづくそれが残念。


一番違和感があったのは、音楽に関するくだりだった(15 “泣ける”と話題のバラード)。
著者は「プレスリリース」をまとめただけの記事を、“こういうのはライティングとは言わない”と書いていた。

……提供されたパーツだけを使い、そのパズルの枠組み自体も変えない。こんなものをレビューと呼んではいけない。
 ここに批評性はあるのか、と議論に持ち込む以前の問題なのだ。……恥ずかしさは宿らないのだろうか(P200)。

この人、何かまちがってね?と思う。この記事は、私が感激したナタリーの指針を真っ向から否定しているので、こちらも受けて立つことにした。


情報を情報のまま受け取りたい時や場合、人だっているのだ。
たとえば、好きなアーティストの新しいアルバムが出ることがわかった時。収録されている曲が何なのか、タイアップの曲はどれが入っているのか、などの情報を知りたい人は、その情報に批評性など求めていない。
自分が知らないアーティストが話題になっている、という記事なら、やはりどこで使われているのか、何が評判なのか、どの程度売れているのか(セールスの枚数や主題歌になった映画がどのくらい人気だったのか、という数字は客観性のためにほしい)は必要だろう。

プレスリリースは事務所やレコード会社などが正確に伝えてほしい点をまとめた資料なのだから、それをこねくりまわさずにそのまま出してくれれば、この場合読む側は満足する。情報がほしい時に、そこに批評が混じっていたら、それは読み手のニーズを無視したダメな記事と言われてもしかたない。ネットは違うかもしれないが、紙媒体なら字数制限がある。批評性を保つために何かが削られるとしたら、そこで読み手にとって必要な情報が落ちてしまう可能性だってあるのだ。


この本に☆5をつけているレビューもあるので、好みの分かれる本だと思う。

ネットでコラムを読んだ時には面白かったのにな、という疑問をわかりやすく説明すると、こうなります。
――お寿司屋さんで時々つまむショウガはおいしいのに、それだけをどんぶり一杯出されて食べても、あんまりおいしく感じないね。

体内成分の7割以上が皮肉、という方はどうぞ。このブログの☆の基準は「どれだけ人に勧めたいか」なので、今回は2つ。
「最初の10ページで読むのをやめた。時間の無駄。」というレビューがアマゾンにあったが、「禿同」です。
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※この本のメモはありません

*1:どこにも「初出」という言葉がなかったので

*2:24時間テレビの嘘くささがどこから来るのか、「日本」と「ニッポン」の違い、国の「女性政策」の根本に実は差別的な考え方がある、など