ニュースアプリなどから見に行くことが多いので、熱心なファンではないが、ナタリーの記事は好きだな、と思っていた。
押しつけがなく、淡々と必要な情報を提供してくれる感じ。お笑いやマンガにはあまり興味がないので、音楽以外の記事がどうかわからないが、私がよく見るジャンルに関しては、さらっと読めて嫌な気持ちにならない*2貴重なサイトだ。
そんな好印象のナタリーが“新人ライターを鍛えているやり方”をそのまま公開した文章術の本を出した。これは読まずにはいられません。
地元の図書館にはなく、大阪の図書館で借りてもらい、やっと読めた。
細かいノウハウ満載なのに、最後はすごく深いところまで連れて行ってもらえる、不思議な本だった。
「ナタリーの秘密」がここにはぎっしり詰まっている。
◆目次◆
はじめに
第1章 書く前に準備する
第2章 読み返して直す
第3章 もっと明快に
第4章 もっとスムーズに
第5章 読んでもらう工夫
おわりに
ナタリーにおける「よい文章」の定義とは何か。実にシンプルで、その答は「完読される文章がよい文章」。
そのために、何に気をつけて、どこから組み立てればいいのかが順を追って説明されている。
必要なのは「主題」と「骨子」。具体的にはまずテーマを決め、文章の骨組みを考える。「主題」と「骨子」の両方が揃った文章を、ナタリーでは「構造的記述」というそうだ。
文章は、3つのレイヤーからなる。それが下から「事実」「ロジック」「言葉づかい」(ピラミッドの図をイメージしてください)。このうち、下の2つ「事実」と「ロジック」がしっかり押さえられれば、文章の70%くらいはできているという。
しかし驚いたことに、この本のページは半分以上が「言葉づかい」に関する細かい話に割かれている。
文章に100点はない、だからできるだけ100点に近づけるために、細かい点を何度も見直し、ブラッシュアップしていく作業が必要だという。
ブログの記事を書く時に、何度も読み返しては細かい言い回しを修正するのに時間がかかるので、もっと簡単にできる方法はないものか、と思っていたが、これを読んであっさりあきらめがついた*3。
新人ライターさんにまず課すのが、「構造的記述」のために「構造シート」を書くこと。プラモデルにたとえてあるが(下のメモにあります)、完成図があるからこそ、複雑なプラモデルも作り上げられる。
実は私も似たようなことはしていたが*4、重要なのは、きちんと書き直すこと。その通り書けば文章が完成するところまで仕上げないといけないそうだ。その方が結局、かかる時間は少なくなるという。
細かい「言葉づかい」のレッスンは、いきなり文法の話が出てきたりして、ほとんど参考書を読んでいる気分になった。とにかく微細なところをきっちり詰める。
借りてすませるのではなく、本当なら手もとに置いておいて、見ながら練習するべき本だろう。
人によって改善ポイントは違うが、個人的にはさまざまなレベルの重複をどう避けるか、というところが一番役に立った。助詞「の」の繰り返しを避ける、というところから、文章をテンプレート化しすぎると形が同じになって読み手に飽きられる、まで気をつけるべきところがたくさんあることを学んだ。
深いところ、というのは後半に出てきた「文章が書けるようになると、仕事力も上がる」というエピソードだ。
著者はナタリーでたくさんのライターさんを育ててきたそうだが、文章力と仕事力は相関関係があると感じているという。
タイトルにもした“文章力は社会人の「基礎体力」”という言葉にもそれが現れている。
プロの書き手ではなくても、「人に読んでもらえる文章を書く」能力は仕事にもちろん必要だろうし、書けるようになれば、話したりプレゼンしたりといった伝える能力も上がるだろう。
仕事を進める上でも、構造を考え、完成図をきちんと作ってから着手する習慣がプラスに働くはずだ。
しかも、この本ではインタビューの進め方まで教えてくれるのだ。きちんとコミュニケーションが取れるようになれば、もう「怖いものなし」ではないか。
最初はナタリーみたいな文章を書くコツが知りたい、と思って読み始めたが、ずいぶん壮大な話に。
ブログを書いている人はもちろん、仕事力を磨きたい人にも実は役に立つ本です。
私のアクション:構造シートをめんどうがらずにもう一枚書く
■レベル:守 まん中の「細かい文法レベル」の話は、辛くなったら後回しにしても。
次の記事は私の個人的メモです。興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
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