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説得力には「人格的要素」が不可欠☆☆☆☆

【読書感想】ツカむ! 話術 ☆☆☆☆ - 琥珀色の戯言

 

パックンマックンのパックンこと、パトリック・ハーランさんが書いた話し方の本だ。
さすがはハーバード大卒の書いた本、他の本にはない面白い視点が満載だった。


 

◆目次◆
はじめに
第一幕 理論編 話術の基本テクニック
 第一章 話術は「習って慣れろ!」
 第二章 あなた自身でツカむ「エトス」
 第三章 「感情」によってツカむ「パトス」
 第四章 「言葉の力」でツカむ「ロゴス」
 第五章 相手の懐に入り込むには

幕間対談 パックン×池上彰 対話で学ぶ「ツカみ」の極意

第二幕 実践編 現場で使える「ツカむ!話術」
 第六章 心を打つスピーチ、プレゼンの技術
 第七章 話し合いの場での話術
 第八章 騙す話術の見抜き方
 第九章 これが「ツカむ!話術だ」

付録 「ハーバード流」自己紹介
おわりに

実はパックン、東工大で非常勤講師として教えているそうだ。テーマは「コミュニケーションと国際関係」。
この本はその授業の内容がベースになっている。

 

この本で大きな軸となっているのが、「エトス」「パトス」「ロゴス」という3つの要素。聞いたことないなあ、と思っていたら、アリストテレスの『弁論術』に出てくる“話術の基本中の基本”なのだそうだ。
簡単に言うと

 エトスとは人格的なものに働きかける説得要素。話している人を信用しようという気にさせるような表現を指します。人格が優れている、品格がある、人柄がよい、センスが良い、面白そう、価値観が自分と一緒などの、その人自身の信頼性・信憑性などがエトス度を上げます。

 パトスは、感情に働きかける説得要素。怒り、喜び、愛国心など、聞いている人に特定の感情を抱かせるような表現が、説得する上で大きな役割を果たします。

 ロゴスは、頭脳に働きかける説得要素。その人の言うことを頭で考えて理解し、納得するというようなものです。だから論理性がある、理論的であるといったことでロゴスが高まります。一般にロゴスは論理による弁論という意味で使われます。でも僕は、一見論理的に聞こえるけれど実際は論理に飛躍があるもの、それっぽく感じるというものも含め「言葉の力による説得要素」という意味で、ロゴスという言葉を使っています(P42)。

しかも、驚いたのが3要素の重要度の違い。何となく「ロゴス」が一番重要なのかと思っていたら、実はこの3つは

エトス>パトス>ロゴス

の順、つまりエトスが最も重要なのだ。

 

アメリカではいまだに絶大な人気を誇るレーガン元大統領のメディア顧問、マイク・ディーヴァーによれば、

テレビにおいて視聴者が注目しているのは、85%が見た目、10%が言葉の印象、そして5%が話の内容だ(P198)。

という。彼の戦略でアメリカ大統領選のディベートを勝ち抜いたレーガン元大統領は、「ザ・グレート・コミュニケーター」としての地位を確固たるものにしたそうだ。

これはテレビでの話だが、「見た目」というのがエトスに当たる。信頼できる人か、この人の言葉を信用していいのか、を判断しようと思ったら、やはり見た目は大きなウェイトを占める。そのくらい、「エトス」は説得力には欠かせないものなのだ。

 

タイトルは話術だが、繰り返し出てくるのが「説得力」という言葉。つまり、会議で自分の主張を通したり、プレゼンで採用されたりといった、極端に言えば「相手を変える」ことが目的なのだ。ふだんそういう考え方で話すことがなかったので、とても新鮮だった。「ちゃんと話して伝えなければ、コミュニケーションできない」という考えが根底にあるのだろう。
それは、日本がハイコンテクスト文化なのに対し、アメリカがローコンテクスト文化だからだとパックンは書いている。

ハイコンテクスト文化とは、

  • 社会常識を共有している
  • 単一に近い民族国家に多い
  • 狭く、深い関係性を好む
  • 団体主義の傾向

これに対し、ローコンテクスト文化とは

だという(どちらも一部紹介)。
そう考えれば、日本とアメリカのコミュニケーションスタイルの違いも納得がいく。

 

こんな風に、この本は比較文化論としての要素も強い。これは、大学卒業後に来日して20年以上、ふたつの文化を深く知っているパックンにしか書けない本だと思う。
グローバル人材になるには、日本のよさと欧米圏で求められるものの両方を備えるのが近道らしい。それには、この本を読むのが一番早そうだ。

 

さまざまなテクニックを教えてくれて、しかもそれをところどこに散りばめてあるので、読みながら少しずつ慣れていける。もちろん、お笑い芸人としてのツッコミ・ボケもあるので、むずかしそうな内容でも楽しく読める。

 

「アメリカ人はみんな陽気でフランクなのに自己主張をきちんとできる」と日本人はつい思ってしまうが、パックンによれば、それは子どもの頃から繰り返し練習しているからだそうだ。
日本人でも、大人になってからでも、練習すればできるようになる。と背中を押してくれる心強い本。

中身が濃すぎてうまくまとめられなかったので、ぜひ読んでみてください。
ただし、読んだあとは練習が必須です。

私のアクション:コモンプレイスを見つけて、そこに働きかける
■レベル:破 

次の記事は私の個人的メモです。興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。

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