連載当時に楽しく読んでいたので、本になったことを知っていそいそと借りて来た*1。
まとめて読んでも、楽しかった。
失礼ながら、私は連載を読むまで益田ミリさんのことを知らなかった。
療養でしばらく実家にいた頃、週1回の「大人になった女子たちへ」というリレーエッセイを何とはなしに読んでいた。書き手は複数いるので、最初はまんべんなく読んでいたのだが、いつも「面白かった」と満足するのは益田ミリさんの回だな、と気がついてから楽しみにするようになった。
益田さんが大阪出身というのと、世代的にも近いので感覚が似ているのかもしれない。
連載を毎回読めたわけでもないので、どれが書き下ろしかはわからない。はっきり、「これ読んだわ」と思ったのは2つくらい。それも、ほぼ最後まで読んでから、「あ、これ読んだことあった」になった。
というのは、新聞のコラム1回分では分量的に足りないので、長くしてあるのではないだろうか(勝手に推測)。そのせいなのか、段組になっている紙面と改行の位置が違うからなのか、新鮮な気持ちで読めた。
まとめて読んで驚いたのは、「ミリさんってこんなに食べることばっかり書いてたっけ?」ということだった。
ご自分が食べたいと思うデザートのひと皿に何を盛り込んで欲しいかを真剣に考える回と、甘党の話の回が特に印象的だ。
ミリさんにかかると、仕事の打ち合わせも話題のブラジル料理を食べに行ったり、銀座でパンを自分でトーストする店のランチだったり、パフェを食べるついで(しかも担当編集者は男性)だったりする。
何で読んだか忘れたが、村上春樹さんが打ち合わせでパフェを頼んだ編集者にあきれ果てた、というエピソードがあった。村上さんは出版社でそういう教育はしないのか、と(控えめに)苦言を呈していた。
その編集者がミリさんの担当だったらよかったのに、と思った。
見方を変えれば、編集者も打ち合わせはビジネスライクにささっとすませたい人もいるだろうに、ミリさんの担当になったら打ち合わせが食事レベルになったりして、それはそれで大変じゃないのか…、と要らない心配をしてしまった。
もうひとつ、すごいと思ったのが友人がたくさんいること。あちこち出かけたり、いろいろな集まりがあったり。男性も参加する会もある。ふつう、ミリさんくらいの年齢になったら、子育てだったり、仕事だったりでなかなか気楽に集まれず、疎遠になることも多いのに、とちょっとうらやましくなった。
益田さんのエッセイの魅力は、大人になっても子どもの頃の記憶・感覚を忘れていないことだろう。
読みながらそう思い、この記事を書くためにパラパラとまためくっていたら、まえがきにこんなことが書いてあった。
幼い頃や中学生の自分が、成長して今の自分になった、というのをいぶかしく思うミリさん。
あの子たちは、あの子たちのままなのではないか。
全員が今の「わたし」に変化したとも思えない。それぞれが、わたしと似た顔で元気に暮らしているような気がする、大人になったわたしの中で(P2)。
こういう感覚が好きな方はどうぞ。
※この本のメモはありません
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