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[読書日記]書評の仕事☆☆☆ 

書評の仕事 (ワニブックスPLUS新書)

書評の仕事 (ワニブックスPLUS新書)

書評の仕事 (ワニブックスPLUS新書)

書評の仕事 (ワニブックスPLUS新書)


ライフハッカーなどさまざまな媒体で書評を書いている印南敦史さんの本。
印南さんの書評が好きでよく読んでいる私には、なかなか楽しい本でした。

印南さんの文章は読みやすく、ていねいなところが特徴。
その秘訣も明かされています。


  • 要約力を磨く
  • 自分の文を好きになる
  • 文章を書く人はラッパーに学べ



◆本の目次◆
はじめに
第1章 書評家の仕事とは
第2章 書評家の「裏」話
第3章 年500冊の書評から得た技術
第4章 書評の技術・書評の教養
おわりに

こんな本です

著者・印南敦史さんはプロ書評家としてもうすぐ8年。複数の媒体に年間500冊もの書評を書き続けているそうです。

書評を始めたライフハッカーは日曜祝日以外毎日更新。
www.lifehacker.jp

他にも書いているので締め切りはほぼ毎日、というから驚き。
書評家としての1日の過ごし方、収入はどうなのか、といった裏話もあります。

でも、やっぱり一番知りたいのは、どうやって読んで、どうやって書くか、ですよね?

ポイント1 要約力を磨く

答は、全部読まないのだそうです。

ライフハッカーの書評を読めばわかりますが、「○章を中心にご紹介します」という風に、一部を切り取って書いてあることが多い。

すべてを書評に盛り込もうとしても無理に決まっていますし、多くを盛り込もうとするほど焦点はぼやけていくものだからです。逆に「重要な部分」だけをクローズアップした方が、結果的にはその本の全体像が浮かび上がってくるのです(P59)。

繰り返し書かれていますが、印南さんの考える書評とはあくまで「情報」。なので、「読者が必要とする情報だけに絞って伝える」ことを大切にしているそうです。

必要な部分を見極めて読むのであれば、時間を掛ける必要もなし。しかも、記憶に残りやすいというメリットもあります(P60)

要約とは必要なポイントをまとめることであり、要約するにあたっては「どこに焦点を当てるか」を意識するべき(P147)


読者に刺さる部分を見つけ出し、そこを読み込んで、わかりやすく提供する。
その姿は、「まるごと取ってきた野菜のおいしい部分だけを残してカットし、手際よく料理して出してくれるシェフ」のようです。


「印南流・要約の極意」は次の通り。

要約、7つのポイント(P149)

  1. 誰に向けるのか、ターゲットを明確にする
  2. そのターゲットが求めているもの(ニーズ)を見極める
  3. 当該書籍の目次をチェックし、ニーズに叶った部分を探し出す
  4. その部分を、どう伝えるべきかを“具体的に”考える
  5. “わかりやすさ”を意識しながら、その部分を簡潔にまとめる
  6. 書き終えたあとで推敲し、問題があれば修正する
  7. 「あれが足りなかったのでは?」などと考えず、よい意味で割り切る


そして、要約力は仕事にも使えます。

すぐ要約できる「3ステップ・チェック」(P155)

  1. 目次をチェックし、全体の流れを把握する
  2. 取り急ぎ必要なページを集中的に読み込む
  3. 最後のまとめ部分を確認する

これは、プロジェクトの資料を短時間で理解する時などに有効な方法。


「そんなに大胆に飛ばして大丈夫なの?」
と心配になりますが、
「わからなくなったり混乱したら、その時改めて、飛ばした部分に戻ればいいだけ」
だそうです。


戻って読み直したとしても、一から全部読み通すよりは、時間が少なくてすむはず。

ポイント2 自分の文を好きになる

これはうぬぼれるというわけではなく、「 自分がいいなあ、と思えるレベルでなければ、読者に届かない」という意味。


印南さんは、ご自分が書かれた文章を読み返して「いいなあ」と思えるかどうかでチェックしているそうです。
「いいなあ」と感じなければ、何かが間違っているということ。


そんな時は、何度も読み直して修正をするそうです。


また、スランプにも言及しています。印南さんご自身はスランプはほとんどないそうですが*1、「書けなくなったら休めばいい」と実にシンプル。


足の調子が悪いアスリートが無理して続けてもいい結果が出ないのと同じ、と言われたらうなづくしかありません。

思い切って休んで、自分のコンディションを整えることに集中した方がいいようです。


書けない理由の分析として、児童文学作家の小川未明の文章が紹介されているんですが、それが面白い。

単に流行りで書こうとしたのであれば、書けなくて当然。でも、「書かずにはいられないなにか」があるのに書けないのなら、細かなところに執着しすぎたか、自分自身の本当の気持ちをつかみ切れていなかったのか、どちらかであると思うべきである(P132)
※印南さんご自身の要約です


つまり

  1. 自分が何のために書いているのかという自覚を持つ
  2. 何が書きたいのかをとことんまで突き詰めるべき(P132)

だそう。

目的意識と、書きたいという強い気持ち。この両方が揃うように心がければ、「書けない」と追い込まれることは減りそうです。

ポイント3 文章を書く人はラッパーに学べ

一番印象に残ったのがこの言葉でした。なぜラッパー?


印南さんによれば「文章を書く上で大切なのはリズム感と自信」なのだとか。
そして、ラッパーにはそのどちらも必要不可欠(らしい)。


ラップは聞かないのでよくわかりませんが、確かに断言する歌詞が多い気がしますし、そもそもリズム感が悪ければラップになりませんよね。
最初のキャリアが音楽ライターであり、時にDJもされている印南さんらしい感覚だと思います。


なお、リズム感を生み出すために印南さんが重要だと考えているのは「テンとマルの位置」と「てにをは」だそうです。


ただし、それも人それぞれなので、オリジナリティを出していけばいいのだ、と書いています。

その人のリズム感は、その人の中にしかないもの…自分の中にある自分だけのリズム感を、自分だけの方法(感覚)によって表現すればいい(P169)

そのためには、自分の好きな文章を見つけ、真似してみるところから。

最初はただの真似ですが、続けるうちに真似を突き抜けてオリジナルになっていくそうです。

まとめ
  • 書評はあくまでも「情報」。書く人の顔はできるだけ見せない
  • 読者をイメージし、読者が必要だと思われる情報に絞って伝える
  • まずは読みやすい文章を。その上で、自分にしか書けない文章を目指す

書評家として印南さんが大事にしているのはこの3つ。


もちろん、限られた時間で「読み」「書く」技術はどんな人にも役に立つはず。

あとはどちらかと言えば印南さんの書評が好きな人が読んで楽しい本、という印象です。
文章術としては上の「ラッパーに学べ」以外はオーソドックスでした。


印南さんの書評のファンは必読!
書評を読んでこんな文章が書きたい、と感じた人にもおすすめです。

私のアクション:「ブログを読んでくれる人」をイメージして書く
■レベル:守 


次の記事は私の個人的メモです。興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
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*1:文章を書くのが好きだから、というのがその理由。アッパレ、としか言いようがありません…