毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

[読書日記]News Diet☆☆☆☆

News Diet

News Diet

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ロルフ・ドベリさんの今年2月に出た新刊。
Think Smart  間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法』でも触れられていた「ニュースをやめる」がこの本のテーマ。


ニュースを断ってすでに10年、元・ニュース依存症を自認する著者だから書けた、深い考察。
私たちが今まで漠然と思っていたイメージと違う、「ニュースの本当の姿」は衝撃です。


  • ポイント1  ニュースはなぜ「害になる」のか?
  • ポイント2 読むのをやめても困らない?
  • ポイント3 デジタル断食とはどう違う?


◆本の目次◆
1 私がニュースを断つまで その1
2 私がニュースを断つまで その2
3 ニュースは、砂糖が体に及ぼす影響と同じような影響を精神に及ぼす
4 徹底的にニュースを断つ
5 「30日計画」を立てよう
6 おだやかなニュースダイエットのすすめ
7 ニュースはあなたとは「無関係」である その1
8 ニュースはあなたとは「無関係」である その2(思考実験)
9 ニュースは「能力の輪」の外にある
10 ニュースは「リスク」を誤って評価する
11 ニュースは「時間の無駄」である
12 ニュースは「理解」を妨げる
13 ニュースは「体に毒」である
14 ニュースは「思い違い」を強化する
15 ニュースは「後知恵バイアス」を強化する
16 ニュースは「利用可能性バイアス」を強化する
17 ニュースは「意見の火山」を噴火させる
18 ニュースは「思考」を妨げる
19 ニュースは私たちの脳を「変化」させる
20 ニュースは「虚偽の名声」をつくる
21 ニュースは私たちを実際よりも「卑小な存在」に感じさせる
22 ニュースは私たちを「受け身」にする
23 ニュースは「ジャーナリスト」によって書かれている
24 ニュースは私たちを「操作」する
25 ニュースは「創造力」を破壊する
26 ニュースは「馬鹿げた話」を奨励する――スタージョンの法則
27 ニュースは私たちに「偽りの同情」を覚えさせる
28 ニュースは「テロリズム」を助長する
29 ニュースは「心の平穏」を破壊する ほか

こんな本です

もとは筋金入りのニュース中毒だった著者。


広い世界で起きていることを知りたいという思いから、図書館に通って新聞を隅から隅まで読む10代。
飛行機で世界を飛び回る20代、機内で全紙もらい受け、ホテルの部屋で読みふけるのが習慣。
1990年、インターネットが登場するとニュースの配信を読み、のちにポッドキャストも。


危険を感じたのは、たくさんの短いニュースが周りの現実と自分を隔ててしまう感覚が表れ、長い文章を読むのが苦痛になった時。
集中力が切り刻まれているように感じられるようになったそうです。


それからニュースと少しずつ距離をおくように方向転換。
ところが、簡単ではありませんでした。

ニュースレターや配信を減らしたり、見に行く回数を制限したものの効果はなく、ついにキッパリ決別することに。
そこまでして、やっと効果が現れたといいます。


この本には、そんな著者が説くニュースの害、ニュースを断つメリット、具体的なやめ方の指針が書いてあります。

キッパリやめるプランと、おだやかなプランのふたつが載ってますが、著者のおすすめはキッパリやめること。
「30日間でやめる」計画が載っていて、元に戻った時の対処法もあります。


ただし、それは内容のごく一部。
大部分はノウハウではなく、「なぜ悪いのか、どんな害があるのか」と「ニュースをやめることでどんな人生になるのか」です。

人生の質が向上し、思考は明晰になり、貴重な洞察が得られるようになり、いらいらすることが減って、決断の質が上がり、時間の余裕もできた(P41)

ニュースなしの生活は、自信を持っておすすめできる。あなたはいまよりよい決断ができるようになる。いまよりよい人生が送れるようになる。それに、信じられないかもしれないが、大事な情報を逃すこともない(P41)

ものすごく濃い内容なので、ここでは私が最初に思った3つの疑問を軸にご紹介します。

ポイント1  ニュースはなぜ「害になる」のか?

■ニュースは時間の無駄である
1日平均90分、人はニュースを消費しているそうです。
つまり、ニュースを断てれば1日あたり90分、余分に時間を手に入れたことになる。

これは、1週間分合わせると1日の労働時間に相当。「1年につき1ヵ月以上も余分な時間ができる」というから衝撃です。

1ヶ月、取り戻しましょう!
11ヵ月だったあなたの1年が、ようやく12ヵ月に戻ります。


■ニュースは心の平穏を破壊する
ニュースを読むとストレスにさらされる、という説があります。
感情を乱されるような話を聞くとストレスホルモン「コルチゾール」が放出される→免疫システムが弱まる→成長ホルモンの生成も妨げられる

「わざわざ自分の心身の健康を危険にさらしている」ことになります。


健康的な生活を送るには「意志力」が必要。ストレスが増えると意志の力は弱くなり、すべき行動を先延ばししがちになります。
「快適ではないが重要な行動」を、「快適だが重要ではない行動」に置き換えるようになる。

ニュースを消費すると慢性的にストレスがたまり、ストレスがたまれば意志の力が弱くなる。意志の力が弱いともっと長くネットサーフィンをしたくなり、その結果ストレスが増えれば、意志の力もさらに弱くなる(P103)

…身に覚え、ありますよね。


■ニュースを読むのは「短い文章に順応する訓練」と同じ
著者も実感したように、長文が読めなくなったのはニュースのせいかもしれません。


それは、ニュースを消費し続けたことで、脳の生理的な構造が変化してしまったから。
ニュースは「短い文章に、いかに人の意識を引きつけるか」という意図で作られています。
私たちは「くだらないものに注意が向くように、自分たちの脳をトレーニングしている」のと同じだ、と著者は言います。


ある機能を鍛えると、結果的に他の機能が退化してしまうことは、ロンドン大学・タクシー運転手の脳の研究で証明されています*1

長い文章が読めなくなるのも当然の結果、と言えます。
著者の経験によると、疲れを感じずに長い文章が読めるようになるには、約1年はニュースを断つ必要があったそう。

ポイント2 読むのをやめても困らない?

「ニュースはよいもの」であり、「世の中を知るのに必要不可欠」と思ってきた私たち。
いきなりニュースを完全に絶ってしまって大丈夫なのか、心配になります。

しかし、著者は「ニュースを断つのはメリットしかない、デメリットは一切ない」と断言。


それは、「報じられていることが重要とは限らない」から。
「ニュース」は私たちの思っているものとは違っていたようです。


■ニュースも商品
「売上が得られるもの」が、メディアにとって「重要なニュース」。
「内容が重要かどうか」は問題ではありません。


結果的に、「クリックされるもの」「飛びつきたくなるもの」「センセーショナルなもの」が“重要な”ニュースになります。
あなたにとって重要ではない場合がほとんど。

あなたにとっての重要事項を、メディアからみた重要事項と混同してはならない。メディアにとっては、読者の注意を引くものはすべて重要なのだ。…メディアは、私たちとは無関係なニュースを重要なことと称して私たちに提供している(P67)


■ニュースはあなたとは(ほとんど)関係ない
面白いワークがあります。
「自分の人生を変えたニュースはあるか?」調べてみるというもの。


世の中で大きなニュースになった出来事を過去10年分、書き出してみます。
その下に、自分にとって重要な出来事を書き出す。

すると、世の中のニュースと自分の重要な出来事がほぼ無関係なことがわかります。
あっても、10年にひとつかふたつ程度だそうです。


その他、

  • 民主主義の番人として必要なのでは?――大丈夫、民主主義は新聞より古い。ローマ時代からあります!
  • テロが増えるのでは?――テロは多くの人に注目されなければ成り立たない。ニュースを見る人が減った方が抑止力になる
  • 大事なことを見落とすのでは?――リーマンショック直前の新聞を今読んでも、それを予想するような記事はひとつもなかった

など、私たちの疑問は次々と論破されています。

ポイント3 デジタル断食とはどう違う?

この疑問は、実際にやってみたい人ならほぼ全員思い浮かべると思います。

違いは、「断つのはあくまでニュースのみ」ということ。
他に関して制約はありません。


「何かを知ろうとしてたどり着いたのがニュースでも、自分がコントロールしている(見るかどうかの判断が自分でできている)ならOK」、というスタンスです。
ただし、そこからリンクをクリックしまくったらダメ、なのですが*2


もうひとつの大きな違いは、「能力の輪」を使うこと。

「能力の輪」とは、ウォーレン・バフェットのことば。著者の『Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法』に出てきます。

人間は、自分の「能力の輪」の内側にあるものはとてもよく理解できる。
だが「輪の外側」にあるものは理解できない、あるいは理解できたとしてもほんの一部

だといいます。

輪の内側にあるのは、専門分野、得意なこと、興味・関心のあること、などでしょうか。


バフェットは人生のモットーを

「自分の『能力の輪』を知り、その中にとどまること。輪の大きさはさほど大事じゃない。大事なのは、輪の境界がどこにあるかをしっかり見きわめることだ」

としています。


この本では、

「能力の輪」の中に入るものは読む。それ以外は無視する

というシンプルな判断基準を使うことを勧めています。

常に「能力の輪」を意識しながら生活すると、メディアで読んだり、見たり、聞いたりすることの99%はあなたには無関係だということに気づくだろう。不要なものは、切り捨ててしまおう(P80)

目指すは「広く知る」ではなく「深く知る」。

じっくり考えることで「ものごとのつながり」を探り当てられます。
これは次々と新しいニュースに飛びついていてはたどり着けないものだ、と著者は書いています。

まとめ
  • 本当に良質な情報は本であり、深い考察をまとめたジャーナリストの記事である
  • ニュースに飛びつくことをやめ、良質な情報を選ぼう
  • そうすることが、世界によいものを残す手助けとなる

紹介できた以外にも、ニュースをやめたくなる事実がいっぱいです。

もちろん、いいこともたくさん。
どんな人生になるのか知りたい人はぜひどうぞ。


ただし、具体的な「やめ方」を知りたい方にはちょっともの足りないかもしれません。
そういう方には『デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する』がおすすめです。
私のアクション:PCでTwitterを見ない*3
■レベル:破

 


次の記事は私の個人的メモです。興味のある方はどうぞ。※メモのスタンスはこちら
book.yasuko659.com



【関連記事】
book.yasuko659.com

*1:多くの通りと観光名所を記憶しなければ仕事にならないロンドンのタクシー運転手。一人前になるのに3-4年かかります。タクシー運転手と、同じロンドンのバス運転手(決まったルートを走る)の脳の機能を新人の時から追跡比較したところ、タクシー運転手の脳は道を覚える神経細胞が発達していた。しかし、新たな図を記憶するのは苦手で、むしろバス運転手の方が支障がなかった

*2:著者も何度か“猿のように”クリックし続けたことがあるそうです…

*3:私の場合、一番危険なのがTwitterの右側に出る「トレンド」なので