- 作者: 横尾忠則
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/04
- メディア: 単行本
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雑誌の連載をまとめたものなので気軽に読める。
横尾さんは不思議にかっきり10年に一度大きな事故に遭っているが、ご本人曰く事故のたびに大きな転換を迎えたのだそうだ。もともと病弱な子供だったそうで入院するような病気も何度かされているのだが、病気に対する考え方も普通とは違う。
われわれは病気を悪魔のように考えているが、場合によっては神と呼ばれたって不思議ではないご利益だってあったのではないだろうか。「病気にして頂いてありがとうございました」と感謝こそしないものの、病気は神が本人に気づかないようにしてソーッと差し出した贈り物だったりするような気がする。病気が治って時間が経った後でじっくり考えてみると、ウンウンと頷けることがたくさんある。
そう考えると病気もまんざら捨てたものではない。世の中には偶然が満ち満ちているように見えるが、実は偶然は目に入る部分の出来事で、目に見えないところでは全て必然的な作用が働いているような気がする。ふとした偶然から病気になったと思っていても、高次元のレベルから見れば、すべてが必然です、ということになるかもしれない。人間が生まれるのも死ぬのも必然と考えれば、自然に身を任すのが一番賢い。
私自身病気になって気づいたことがたくさんあるので、「病気はギフト」だと思う。
横尾さんの考え方にも共感できるところが多かった。
一般的な病気に対する考え方「病気は悪いものだから闘わなければいけない。患部を切り取ったり、薬で症状を抑えればよい。いい病院・いい医師に任せよう」というのは本当に正しいことなのか?と病気以来考えるようになった。
そういうことに何となく違和感を感じる人はこの本がお勧め。横尾さんは普通は病院で治療されているのであまり抵抗なく読めると思う。
不思議なエピソード満載なのだが、一番面白かったのはお父さんの話。ある病気で死期が近いといわれ、医師からはものを食べさせたら死にます、と止められていた。だが本人は
「死ぬ前にぼたもちが食べたい」
と言う。それで親族で相談して横尾さんがぼたもちを買いに行ったのだそうだ。お父さんはふたつぺろりと平らげ、その後10年近く生きたのだとか。
同様に横尾さん自身も具合が悪い時にどうしても食べたいと思ったマロンクレープやぜんざいであっさり治ってしまった体験があるそうだ。どれも普通、調子の悪い時には止められるような食べ物なのに、ふと食べたいと思うものは体が欲求しているからいいのかもしれない。
この本には心の声を聞くのも大事だが体の声を聞くことも必要と書いてあり、つい心に意識が傾きがちだが体の声も大切なのだ、と改めて感じた。