最近よく読んでいるライター・日垣隆さんの本。タイトルだけ見ると、スパルタや根性論のように感じるかもしれないが、とても実用的な本だった。それもそのはず、これは日垣さんの実体験からできた本だからだ。
プロローグで簡単に触れられている、日垣さんの「ウツに至る過程」。これを読めば、よくここから自分で何とかできましたね、と言うしかないような“連続する喪失体験”なのだが、日垣さんは病院や薬に頼らずに自力で再生したという。
ただし、この本は病気としての「ウツ病」と「ウツ」は別のものとしてとらえているので注意が必要だ。「ウツ」にならない、なっても克つための本として書かれている。いわゆる「うつ状態」に該当すると考えていいと思う*1。
ウツになってから読むのはちょっと辛いかもしれないが、落ち込みやすい人や、万一に備えておきたい人にはよさそうだ。“ウツは病気ではないのだから、どうやって落ち込みから回復するかがすべて”という考え方はある程度元気な状態ならまあ納得できる。予防として使うなら、ふだんから心の柔軟性を作っておくことが大切、ということだろう。ポキッと折れないためにどうするか、という方法が具体的に紹介されている。経験から出ているので、無理はさせない、うまい折り合いのつけ方や回避の方法が多い。
ポイントは「客観視」すること。むずかしいが、無理にでも自分の状態を客観視しようとすれば、少しずつものの見方が変わってくる。ウツになってしまってからこれをやるのはかなりむずかしそうだが、あらかじめそういうやり方に慣れていれば何とかなるかもしれない。
個人的には第1章「勝手に自己診断」編が面白かった。あらかじめ自分の弱い部分を知っておき、そこを補強するとか、どこがイヤなのか分析して、そこを回避する解決策を考えるとか。こういう方法を知っていると、いざという時にずいぶん回復が早いと思う。また、第5章の泣ける映画紹介*2も映画好きなら楽しめそう。
ウツじゃなくても、処世術としても使える方法だと思う。興味のある方はぜひ読んでみてください。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
ちょっとむずかしい課題を引き受けて、「自分の器を大きくする」
広義のストレス(それをやるのが本当はイヤな状態)でも、狭義のストレス(不本意に引き受けてしまったこと)でも、その対処法は以下の3つです。
- あとで放り出すようなものは最初から引き受けない
- 引き受けてしまった以上は、楽しむ(そのストレスを育てない)
- ストレスのままだったとしても、その仕事に対する評価を確保する(とにかく誰かから評価してもらう)
(中略)
少しずつ「自分の器」を大きくしていくのが人生の楽しみでもあるのですから、「ちょっとむずかしいかもしれない」という課題を常にあえて引き受け、それを途中で放り投げず完遂することによって(つまりストレッチですね)、少しずつ成長してゆくのが理想形でしょう。