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自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

脳から心を理解する☆☆☆☆

愛は脳を活性化する (岩波科学ライブラリー (42))
松本 元
岩波書店(岩波科学ライブラリー)(1996/09/24)
¥ 1,260

日垣隆さんの『つながる読書術』で紹介されていて、興味を持った本。探書リストに入れたままだったが、ビジネスブックマラソンでも紹介されていることに気づき*1、図書館で借りて読んでみた。
脳科学の奥深さを改めて感じる1冊だった。
ビジネスブックマラソンの紹介記事はこちら


◆目次◆
プロローグ 「脳を知る」とはどういうことか
1 脳とはどんなコンピュータか
2 脳型コンピュータの開発に向けて
3 脳から見た心―内部世界が作る心の特徴
4 愛は脳を活性化する
5 科学と宗教
6 新しい科学の始まりの中で
あとがき

著者は脳の研究、中でも脳の情報処理方法をそのまま再現する「脳型コンピュータ」の開発を目指し長年研究してきた人だ。
専門家が、脳の仕組みについて一般の人にわかりやすく説明してくれるのがこの本。

脳科学の本が好きな人には意外なタイトルかもしれない。脳と愛は一見つながらないような組み合わせだからだ。
しかし、著者は脳の働きを長年研究するうちに、自然に「心」の理解につながっていったという。

…こうした脳研究と脳型コンピュータ研究の成果を基盤として、われわれは心の理解に迫ることができる。「心を理解する」とは、「人は何か」を科学的に解明することであり、人文・社会科学と自然科学が脳研究を介して融合することでもある。心とは、脳の作られ方の特殊性から生じる脳の特異な現象の現れである。私は、脳の構成的研究によって、初めて脳研究から心の理解が可能になってきたと考えている。
プロローグより(Px)


本の前半はいかにも科学的な話だが、だんだん心や情に話題が移っていく。不思議なことに、脳の仕組みで心や感情の動きが説明できてしまうのである。

本のタイトルは、交通事故で脳に大きな損傷を受けて意識不明となったある少年のエピソードによるもの。
植物人間になる可能性が高い、という医師の宣告を受けても、ご家族がベッドサイドでたえず声をかけ(右脳の損傷が激しかったため)左半身をさすり続けた結果、ほぼ正常に回復して普通の社会生活を送れるようになったそうだ。

ラットの情動実験でもわかるように、脳が損傷を受けていても「快」の情動を受け入れることは可能であるから、それによって脳の活性が向上し、脳内に入力される情報を処理する回路が作られるのである。この結果、情動情報が脳活性を制御し、脳が自ら価値を認めた情報を処理する神経回路が脳内に表現される。これが「愛は脳を活性化する」という意味である(P74)。

このような例は他にもいくつか聞いたことがある。奇跡的ではあるが、脳は愛を「快」の情報として受け取り、その結果働くという仕組みの通り機能したとも言える。


人は人に認められたいと思う生き物であり、知よりも情が情報として優先されるという。互いにわかり合うことのむずかしさにもくわしい説明があるが、それでも人はわかり合うことを求めるのだそうだ。

人にとっての情報化社会とは、人の心に潤いを与える、情の通い合う社会でなくてはならない(P79)。

この本は1996年に書かれた古典と言ってもいいものだが、最近クローズアップされいてる「人とのつながり」や「絆」は人がもともと持っている欲求なのだ、というのは驚きだった。


他にも、モチベーションや幸福感、果ては宗教まで脳科学の見地から書いてあり、意外な発見がたくさんある。
さまざまな問題も「脳の仕組みならしょうがないな」と見方が変わりそうだ。
1〜2章の、脳の科学的な説明や脳型コンピュータに関するところは非理系の人には困難なところですが、ここを斜め読みしてでも*2読む価値はあります。
下のメモや上のビジネスブックマラソンの引用を読んで興味を持った方は、ぜひトライしてみてください。
私のアクション:ムッとすることがあったら、これは自分の内部情報によるものだ、と考える
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読書日記:『つながる読書術』


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。

人が互いにわかり合うことは難しい(P54)

それはわれわれが、それぞれに生まれ育った学習体験の中で、脳の情報処理の特性を獲得し、脳の内部世界を作り上げるためであり、脳にそういう仕組みがあるからである。われわれ1人ひとりの内部世界が異なるのは、外部世界を他人と共有していても、生まれ育った環境や文化的背景はそれぞれ異なり、そこで体験してきたことも1人ひとり異なるからである。
(中略)
人が互いにわかり合うことが難しいということは、脳が学習によって作り上げた内部世界をもとに外部出力する、きわめて自己中心的な情報処理システムだからなのである。したがって、人と人とのコミュニケーションは、「わかり合えない」ということがむしろ普通(以下略)。

すべての脳の出力情報は、われわれの内部から引き出される(P57)

悲しいことやうれしいことがあるというのは、外部の情報が悲しい(うれしい)からではない。外部の情報によって、悲しい(うれしい)感情が内部世界から引き出されるのである。「あいつはけしからん」と思うのは、「あいつ」の言動が、われわれの脳から「けしからん」という感情を引き出すからである。

脳は基本的には「嫌いなものは嫌い」「好きなものは好き」(P61)

動物の情動応答は、相手から不快な情報を得たと思うと、その相手に不快な応答を返し、快の情報をくれたと思う相手には快の応答を返すというものである。われわれ人も、基本的にこれと同様である。…人の場合には…たとえば言動面で不快応答を抑制して隠すということも起こり得る。しかし、いくら出力を抑制しても、脳は基本的には「嫌いなものは嫌い」であり、「好きなものは好き」ととらえている。

脳は意欲で働く(P74)

…われわれは情を受け入れ(価値を認めて)、意が向上し(脳の活性が上がって)、知が働く(脳が働く)生物であることがわかる。すなわち、情がマスター(主人)で、知はスレーブ(従僕)である。脳は意欲で働くのである。特にわれわれは、人から受け入れられ、人からわかってもらうことで意欲が上がり、知が働くように作られている。

人は感情を受け止めてもらいたいために会話をする(P76)

会話が生き生きと成り立つのは、単に事実や考えのみが交流されている時ではなく、感情にしっかりとした焦点が当てられている時であろう。実は、人は感情を受け止めてもらいたいために会話をし情報をやりとりするのだ(以下略)。

人を理解するということは(P76)

その人の発した言葉の内容を理解するだけでなく、その言葉を発する基盤となる情報を理解することなのである。
例)子どもが母親に、「お父さんからお小遣いをもらったので、絵本を買いに行く」と言ったとする。「父親から小遣いをもらった」事実と「絵本を買いたい」という考えを伝えている。だが、子どもが一番伝えたいのは「自分がどんなにうれしいか」という感情。
母親がこの子の感情に焦点を当てた受け答えをしないと、この子は真意が伝わっていないと思い、自分が理解されていないと感じてしまう。この時母親が「よかったわね。お父さんからお小遣いをもらって好きな本を買えてうれしいでしょう」という趣旨の受け答えをすれば、心のやりとりの会話が成立し、この子は理解され支えられているという安心感を得る。

情報の中で最も重要な事柄は「情」(P78)

人は人との関係において生きる。そのため、われわれは情報なしに生きることはできない。…情報の中で最も重要な事柄は「情」である。人の存在は情によって支えられ、その行為や言葉はその情を表現する担体、手段に過ぎない。

欲求を達成しようとしている時、人は幸せを感じる(P79)

…人は現在その人の置かれた位置がたとえ他人から高くうらやましいと思われていても、その位置そのものには満足できない。むしろ、欲求のベクトル(方向)が上向いていると思うことによって幸福感が得られるのである。したがって、人の幸福度とはその人が居る位置ではなく、そこから向かうべき方向が上向きかどうかによって決まるといえる。

確信がなければ脳は働くことができない(P86)

脳は「できる」と確信する(仮説を立てる)と、その「確信」の論理的な後ろ盾を与えるべく認知情報処理系が振る活動する。そのため「できる」と確信したことは必ずできるようになる。逆に「できない」とかくシンしてしまうと、脳は「できない」ことの論理的理由を明らかにするように働き、できる可能性をどんどん縮小する方向に働く。また、確信するものが何もない場合には、脳は情報処理の向かうべき方向が与えられず混乱してしまう。確信とは、脳の向かうべき方向の強固さの尺度であり、これなくしては脳は充分に働くことができないのである。

*1:これも溜まっていたのを先日整理していて発見。紹介されていたのは1年前でした…

*2:飛ばしても読めないことはないと思いますが、時々“1章で説明したように”のような「理解していることを前提」とした箇所があるのでちょっと大変かも