記憶は同じ失敗をしないためにある(P27)
次に同じようなことが起こりそうな時に、それを避けなければならない。なぜなら、そこに生命のリスクがあると感じるから。
イヤな出来事を記憶することがなければ、せっかく体験したのに次もその次も同じ轍を踏むことになり、生命のリスクにさらされ続けてしまう。
(中略)
脳のそうしたメカニズムは、生物が種を保存し生きながらえていくために獲得した、非常に大切な能力のひとつ。
私たちの記憶は過去の失敗の集まり(P49)
成功を覚えていても、次に起こるかもしれない生命の危機を避ける役には立たない。
過去は未来を制約していない(P81)
大切なことは、過去の出来事に対するこだわりを捨てること。
時間はいつも未来から流れてくる。
時間が過去に向かって流れているという事実は、私たちが過去の出来事こだわっても何も意味がないことを示している。
時間が未来から過去へと流れていく限り、未来は、過去とは無関係にやってくる。未来にこうありたいという望みが実現することと、過去に自分はこうだったということとは、いっさい関係がない。
過去に因果を感じているとしたら、それは、その人が過去の出来事に拘泥し、過去と同じ選択と行動を現在にくり返しているから。
こだわって、ドンキホーテのようにいつまでも風車と戦っているからそうなってしまうだけ。
記憶は過去を忠実にトレースしたものではない(P94)
記憶は、脳にバラバラに格納されたものをその都度再構成している。
過去の記憶なのに、それを統合するのは現在の脳。
思い出すたびに脳はリアルタイムに再構成しているので、記憶に描かれた過去の出来事が、毎回思い出すたびに同じ内容とも限らない。
記憶は「その時に何が起こったか」よりも、意味が重要。
その意味を補強するために、情報を脚色したり、別の記憶の情報を借りて来たりすることも起こり得る。
(中略)
記憶どおりの出来事が起こったと考えているのは本人だけで、他人にはまったく違った出来事として記憶されている場合も少なくない。
現在は、過去にベストの選択を積み重ねて出た、ベストの結果(P100)
「これが一番いいはずだ」と主体的に行った選択はすべてベストの選択であり、ベストの選択の結果はベストの結果と考える以外に、この世にベストは存在しない。
そのベストの選択とベストの結果の積み重ねとしての現在は「やはり最高!」と評価すべき。
怒りを鎮めるには、ひとつ上のゲシュタルトを作る(P103)
「こいつ、許せない!」と相手にカッとなるのではなく、「あ、自分のせいかもしれない」と向き直る。
そして、「なぜ、あいつを採用したんだろう?次は、もっと人物をよく見て採用しよう」とそれを防ぐ方法を考える。
「あ、自分のせいかもしれない」で始まる内省は、自らを客観的に見て、評価すること。その時に考えたことは、すべて前頭前野による評価になる。
「こいつ、許せない!」という情動のゲシュタルトには、前頭前野の評価がいっさいない。そのままにしていると、「許せない」「許せない」「許せない」という情動が無限にくり返される。
そこで、「なぜその『嫌だ』が起きたのですか?」もしくは「次は、それをどう防げばいいですか?」と自らに問いかけ、前頭前野を働かせ、その体験を評価する。
イヤな体験を評価し、前頭前野を働かせることをくり返していると、「許せない!」「嫌だ!」という情動がものの見事に鎮まっていく。
「自分が望んで選択したこと」に後悔はない(P115)
後悔が生まれる理由は、はっきりしている。
それは、得られた結果が、自分の選択によって生まれた結果ではないから。
人に勧められた、みんながそうするから、あるいは、そうしないと格好悪いからといった自分以外の理由による選択ということ。
心から自分が望んだ選択を行うと、たとえ結果が期待どおりでなかったとしても、それがベストだと評価できるようになる。
なぜなら、自分で行う選択は本人にとって常にベストの選択であり、ベストの選択によって生み出される結果は本人にとって常にベストの結果だから。
つまり、心から自分が望んで選択したことからは、決して後悔は生まれない。
その点を理解し、これからは何ごとも自分で選択するのだと決意すれば、その瞬間に過去のたいていの後悔の念は雲散霧消する。
自己責任でベストの選択を行おうとする時、人間の脳はドーパミンを出す(P210)
ドーパミンは行動を促すためのホルモンなので、意欲が高まった時などに必ず出る。
「オレはすごいヤツだ」とエフィカシーを上げてやると、ドーパミンの分泌とともにセロトニンもたくさん分泌されるようになる。
なぜなら、セロトニンが不足するのは、ドーパミンが出ないからセロトニンが出ないという因果関係になっているから。
他人が現状の自分を過去の出来事から評価して陰口をたたいたら(P216)
※「あんな優秀な大学を出ているのに…」などと言われたら
「そうか、私をそういう風に引きずり下ろそうとするということは、この人はよほどエフィカシーが低い人なんだな」と受け止めればいい。
誹謗中傷などの個人攻撃に有効な方法(P236)
攻撃されたら、過去の「うれしい、楽しい、気持ちいい、すがすがしい、誇らしい」という記憶を引っ張り出すといい。
イヤな記憶を思い出すたびに、「うれしい、楽しい、気持ちいい、すがすがしい、誇らしい」情動感覚をセットにして出すようにすれば、扁桃体はその記憶を弱めていく。
「うれしい、楽しい」をアンカリングしておく(P241)
あらかじめ「うれしい、楽しい、気持ちいい、すがすがしい、誇らしい」の情動感覚を用意しておき、イヤなことを思い出した時に、リアルな体感や強烈な情動として、すぐにバーンと引っ張り出せるように訓練しておく。
アンカーにするために、「うれしい、楽しい、気持ちいい、すがすがしい、誇らしい」を思い浮かべながら、いつも身につけているペンダントなどのアクセサリーを触る方法がおすすめ。
すぐに取り出せるものなら、アクセサリー以外でもよい。
趣味に没頭してIQを高めるのもイヤな気持ちを消すのにいい方法(P254)
リラックスして趣味に取り組み、前頭前野が働いている状態が維持されていると、毎日のようにイヤな出来事の相手を見ても、その記憶はだんだん薄れていく。