世界的に著名なデザイナー・佐藤オオキさんと、『暗殺教室』の大ヒットが記憶に新しい、漫画家・松井優征さん。
実はマンガ好きな佐藤さんが松井さんを指名して行われた対談だったそうだが、この回がとにかく面白かったのだ。
人気も高かったようで、書籍化されたと聞いて楽しみにしていた。放送ではカットされた部分や、その後の話などもあり、本になってもやっぱり面白かった。
◆目次◆
はじめに 松井優征
第1章 漫画の時間
第2章 デザインの時間
第3章 ひらめきの時間
おわりに 佐藤オオキ
視聴者としてテレビを見ていてもわかったのが、「このふたり、相性いいんだな、波長が合うんだな」ということ。初対面なのに意気投合して話が盛り上がっていくのが手に取るようにわかった*1。
たとえが失礼かもしれないが、カップルマッチング番組で「ここ、絶対つき合うよね」というのと同じ感じだった。
やっぱり番組後にお友達として交流を深め、今では定期的に会ったり、コラボレーションできるかも?という間柄なのだそうだ。
第3章は、親しくなってしばらく経ってからの対談続編になっている。
番組との違いは、商品名やメーカー名などNHKでは避けられる固有名詞がちゃんと載っていてわかりやすいことと、松井さんのマンガも部分部分で掲載されているので、ふだんマンガを読まない私にも理解しやすかった*2。
松井さんは私のイメージする「漫画家」像とずいぶん違っていて新鮮だった。勢いのほとばしるまま描くとか、キャラクターに思い入れがありすぎて、殺す予定が殺せなかった、とかそういうことはまったくないという。はじめから緻密に流れを決めていて、しかもアンケートハガキの人気まで考えて描くそうだ*3。
サブタイトルに「弱者」とあるのは、ふたりともが自分の弱点を認め、「それをどうカバーし、あるいは強みに変えていくか」という点を考え抜いてきたクリエイターだからだ。
この「弱者の生き残り戦略」的な話が面白い。恵まれていたから成功したのではなく、足りないところを自覚し、そこから戦略を立てるというのは、多くの人に勇気をくれる。
佐藤さんの言葉でなるほど、と思ったのは「デザイナーには2種類いて、それは“ガンダム派”と“ドラえもん派”」という話。佐藤さんの仮説だそうだが、ガンダム派というのはメカに興味を持ってデザイナーになった人で、対するドラえもん派はメカのような無機質なものよりも、親しみやすさややさしさ、ユーモアのような要素を持ったデザインを好むという。
確かに、佐藤さんのデザインは「こんなものがあったらいいのに」という願いが形になって出てくる、まるでドラえもんのポケットのようだ。
おふたりそれぞれの仕事に対する考え方や切り口は独自のものなので、ハウツー本のようにそのまま真似はできないが、読んでいるだけでも面白い。
また、佐藤さんが前著『問題解決ラボ』のあとがきで明かしていた“先に答をイメージし、そこから問題を見つける”という謎解きのような手法が、この本ではもう少しくわしく説明されていたのもうれしかった。
あまりむずしいことは考えず、楽しんで読むだけでも充分な本。それでも、きっと何かがフィルターに引っかかって残るはず。
ピンと来た方はどうぞ。
※この本の問題点は、読むと「やっぱり番組を見たかったー!」と思ってしまうこと。
探したらありました。消えないうちにどうぞ
私のアクション:「先に答をイメージする」練習をする
■レベル:守
次の記事は私の個人的メモです。興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
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