今まで読んだ本はすべて(恵美子夫人の本含む)面白かったので、今回もワクワクして読んだ。さすが、期待に応えてくれる内容だった。
◆目次◆
はじめに――二軍監督は「中間管理職」
第1章 プロ野球の二軍は何をしているのか?
第2章 日本の二軍とアメリカのマイナー
第3章 二軍の試合が100倍面白くなる!?観戦ガイド
第4章 新人監督のマンスリー・ダイアリー
第5章 二軍監督という仕事
おわりに
2016年、オリックスは完全最下位*1という不名誉な記録だった。6月には、田口さん自身が体調不良で入院するニュースもあったので、大変なのだろうな、とは思っていたが、具体的にどんなことをしているのかはまったく知らなかった。
今回、読んで初めて「2軍監督ってこんなことをしているのか〜!!」と驚いた。
第4章をのぞいて書き下ろしだそうだ(第4章は、日経新聞電子版連載を加筆修正したもの)。さすが田口さん、アスリート界でも抜きん出た文才は今回も健在だ。
ところどころ笑える小ネタもはさみつつ、日米の下部組織の違いを明確に解説し、まるで一緒にワクワクしたり反省したりしている気持ちにさせ、読み終わる頃にはしっかり2軍に興味がわいている。
優秀な営業マンのようだ、と思ったら、2軍監督は私たちのイメージとは違ってまるで営業マンか、中間管理職か、というような立場らしい。
2軍監督の重要な仕事のひとつは、1軍監督に「活きのいい選手いまっせ、どうですか?」と売り込むことだという。
上からの要請に合わせて選手を上げることも多いが、推薦するのも仕事。「誰かいない?」と言われて提示するだけでなく、「売り込み」も重要なのだ。
確かに、2軍の選手のコンディションを一番把握しているのは2軍監督(とコーチやスタッフ)だ。使ってほしい、とアピールすることも選手のチャンスを増やし、活躍につながる。
自分の選手時代はこうだったから、と同じやり方を強要すれば、今どきの選手はだれもついて来ないという。その涙ぐましい努力や工夫を見ていると、確かに中間管理職だよなあと思う。プロ野球界なんてサラリーマンとは違い、夢のある世界だと思うが、案外サラリーマンにも役に立ちそうだ。
いろんなコーチがいろんなことを言って選手を混乱させないために田口さんが考案したしくみが素晴らしい。いろんなコーチがバラバラのことを言って選手が迷ってダメになるケースは多いと聞く。12球団全部が取り入れればいいのに、と思った。
読んで一番印象に残ったのは「当たり前のことを当たり前に続けられなければ、1軍にいられない」というシビアな環境であること。
アメリカに比べて日本の2軍は恵まれている。食べるものやお給料の心配は要らないし、野球だけに集中できる。それでものほほんとして過ごしてしまう選手もいるそうだ。
田口さんはできるだけ多くの選手に少しでもいいから1軍を経験してほしいと思っている。なぜなら、1軍で何かつかんできた選手は、2軍に戻ってきてもハングリーさが違っているからだという。
もちろんあがったり落ちたりは個人の成績や調子だけではなく、チーも事情も大きく関わってくる。レギュラー格の選手がしばらく2軍で調整する、となると誰かは自動的に上がれるが、その選手が復帰すると今度は無条件でひとり2軍に落とされることになる。
それでも選手を送り出す時に「二度と戻ってくるなよー=1軍に定着しろよ」と念じる、というところにはじーんとした。
第2章は、毎回思うが日本ではメジャーも3Aも経験した田口さんにしか書けない。「オプション」システムについて、今まで見た中で一番わかりやすかった(P95)。納得した*2。
オプションで誰も落とせないから、と田口や川崎がマイナー落ち、とよく報道されていたがこういうことだったのか、と納得。
選手に細かく心を配り、手塩にかけて育てている田口さんの姿が伝わってくる。
この本に書かれていることは昨シーズンのことがほとんどだ。不祥事ですでに退団した選手にも大きな期待をかけていたことがうかがえて、悲しくなった。
現在2軍の選手たちには、ハングリーさを前面に出してがんばってほしい。
この記事をUPするために2軍の順位をチェックしたところ、オリックスは今年もウエスタンリーグ最下位…。
田口さんもがんばってください。
※引用がなくてわかりにくい記事になってしまったので、Fujiponさんの書評もリンクしておきます。
私のアクション:2軍の成績もちょっとだけ気にしてみる♪
■レベル:守 気軽に読めます
※この本のメモはありません
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