毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

[読書日記]脳はなぜ「心」を作ったのか 「私」の謎を解く受動意識仮説☆☆☆☆

※私が読んだのは単行本(2004年刊行)
※Kindle版はありません

この本を読むきっかけになったのは『明日、機械がヒトになる ルポ最新科学 (講談社現代新書)』。

最終章に登場した前野隆司さんが、幸福学を始めるきっかけになったのが「受動意識仮説」の発見だと語っていました。


それを発見してからずっと幸せ、と話しているのを読み、がぜん興味が湧きました。
だって、「ブッダが悟った状態と同じ」なんですよ*1


著者が幸福になったという「受動意識仮説」とは何なのでしょう?


  • ポイントはココ!→「意識」とは、受動的な体験を主体的体験として錯覚するシステム



◆本の目次◆
プロローグ 死んだら心はどうなるんだろう
第1章 「心」――もうわかっていることと、まだわからないこと
第2章 「私」は受動的――新しいパラダイム
第3章 人の心のたねあかし――意識の三つの謎を解く
第4章 心の過去と未来――昆虫からロボットまで
第5章 補遺――「小びと」たちのしくみ
エピローグ <私>は死なないんだ

こんな本です

2004年に出た古い本ですが、いまだに著作の中で一番売れている本なのだそう。


著者はもともとロボットの研究をしていました。
人と同じようなロボットを作るには、まず「意識」や「心」を理解する必要があります。

長年研究が続けられていますが、これという共通認識にはまだ至っていません。


しかし、「こう考えれば全部説明できる」と著者が気がついた。
それが「受動意識仮説」。


この本は論文をもとに、「もっと多くの人に知ってもらいたい」として書かれたものです。

ポイントはココ!→「意識」とは、受動的な体験を主体的体験として錯覚するシステム

「私が最上位で、すべてのことをコントロールしている」と考えているから、意識や心は複雑で再現できないものになってしまう。
逆から見てみたのが「受動意識仮説」です。


この仮説のきっかけになった実験があります。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校のリベット博士(神経生理学)が1983年に発表した論文によると、

被験者に指を動かしてもらうと、意識が「指を動かせ」と意図したよりも速く、指を動かす準備が始まっていた

というのです。
何度やっても、他の研究者が実験しても同じ結果に。

リベットの実験結果を信じるならば、人が「意識」下でなにか行動を「意図」するとき、それはすべてのはじまりではない。「私」が「意識」するよりも少し前に、小びとたちはすでに活動を開始しているのだ。言い換えれば、「意図」していると「意識」することを人に感じさせる脳の部分は、脳内の小びとたちの活動結果を受け取って、自分が始めに「意識」したと錯覚させていると考えるしかない(P77)
※アンダーライン部分は、本では傍点

小びとというのはたとえで、脳のニューラルネットワーク(神経回路網)のこと。それぞれ独立して、おのおのの処理をこなすモジュールが存在する。その各モジュールを指します。

「意識」はすべてをコントロールしているのではなく、小びとたちがやったことを観察し、それを自分がやったことのように錯覚しているだけ。


とてもわかりやすい図が本にありました。

こちらが、従来の「意識の役目」イメージ。
すべてをコントロールしなければならず、大変そうです。


それに対し、こちらが「受動意識仮説」イメージ。
意識は脳の小びとたちの働きの結果、川下にやってきたものをただ観察しているだけ。
これなら簡単です。


受動意識仮説というのは、私の理解だと

  • 「私」がすべてコントロールしている、というのは錯覚
  • 主体的に行動を起こしている、と感じるのも錯覚
  • 「私」とはエピソードを記憶する必然性から生じたもの。「私」が体験していると感じるのももちろん錯覚
  • クオリア(人生の質感)も錯覚

「いやそんな全部錯覚にしたらゼロやん!」
と思わず叫んでしまいそうだったのですが。

これが前野さんが言う“悟り”なのかもしれません。


私が得られたものは「錯覚なんだったらしょうがないね」というお気楽さでした。


「全部をコントロールしようなんて、しょせん無理やったんやー!」
と開き直れた、という意味では、いろいろとラクになれた気がします。

他には…

しかし、全部錯覚だとして。

  • なぜそれで「輪廻転生がない」ことになるかわからない
  • なぜ「神や神秘体験や霊魂は、すべて脳が作り出したもの」になるかがわからない
  • なぜ「死ぬのが怖くなくなる」のかわからない


理系のアタマがまったくない私のような人にもわかりやすい文章です。
上の「わからない」は文章ではなく、論理の飛躍のような気がします。


東洋と西洋の違いや宗教のあり方など、第4章は科学を超えて哲学的な内容に近づいていきます。
それはそれで面白かったですが、「悟って以来、毎日が幸せ」という前野さんの状態に近づくことはできませんでした。
ちょっと残念。


実はまだ、この本と星渉さんとの共著『99.9%は幸せの素人』以外に、前野さんの著書は読んだことがない私。

次は「幸福学」の本を読んでみたい。
ここからどう変遷したのかをたどると、面白いかもしれません。

私のアクション:何かする時、コントロールしそうになったら手放す
■レベル:離 文章はやさしいですが、理論としてはぶっ飛んでいます


次の記事は私の個人的メモです。興味のある方はどうぞ。※メモのスタンスはこちら
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*1:表現は違ったかもしれませんが、こういう意味合いの発言がありました