毎日「ゴキゲン♪」の法則

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発想をまとめ、広げる「KJ法」☆☆☆

板坂元さんの『考える技術・書く技術』の中で紹介されていて、KJ法*2に興味を持ったので読んでみた。どういうものかアウトラインだけは知っていたが、想像以上に深く、応用範囲の広い素晴らしい方法だった。

私が知っていたKJ法の説明は、「キーワードを思いつくまま名刺大の紙に書き、机の上に広げてグループを作り、それをまとめていき、最終的に発想をひとつにする方法」というものだった。しかし、それは間違ってはいないが、大切な部分が抜け落ちている、と読んで思った。

著者の川喜田二郎氏は文化人類学者で、野外調査で世界各地をまわった人だ。そのフィールドワークでメモした膨大な記録をまとめるのに使っていた方法を体系化したものがKJ法だという。この本にはKJ法ができた背景から具体的な方法、さらにその応用範囲まで深く書かれている。
逆に、シンプルに手順を紹介することに特化されていないので、くわしく方法を知りたい人にはややわかりづらいかもしれない。何しろタイトルが「KJ法」ではなく、「発想法」だ。KJ法は著者が考える発想法のひとつなので、内容はKJ法にとどまらずどんどん広がってゆく。その内容はさすが“知の巨人”とでも言うべき面白さ深さなのだが、これだけでKJ法をマスターできるかと言えばかなりむずかしそうだ。


私はこの本を読んで、板坂元さんの「カードに書き取って整理する方法」が、このKJ法とほぼ同じだということがわかった*3。なので、逆に『考える技術・書く技術』を読めば、KJ法を理解するヒントになるかもしれない。


簡単そうに見えて実は簡単ではないKJ法。著者もこの方法を正しく広めたい、とセミナーなどを積極的に開いていたそうで、現在もそれを受け継ぐ機関があるそうだ。ただ、本質をカン違いせずに書かれたことをしっかり読めば、個人で使うことはできるかもしれない*4。著者曰く“せっぱ詰まっている方が結果が出る”そうなので、頭の中を独占している困った問題があったら、その解決のためにやってみるとよさそうだ。

たとえば主婦が、「あれもこれもしなければならならい」という雑用を抱えているとする。しかし全貌がわからないので、ゆきあたりばったりにそれをやる。 …こういうときには、やはりKJ法A型*5とパート法が役に立つ(P168)。

ここを読んで、がぜんやりたくなった。
ちなみに、KJ法は単体でやるよりも、ブレーンストーミング→KJ法→PERT法という3つの流れでとらえるとよいそうだ。PERT法というのもブレスト同様アメリカでできたもので、著者のオリジナルではない。KJ法をうまく活かすには、PERT法の本も読んだ方がよさそうだ。さっそく著者がすすめていた本を図書館で予約した*6


身につけばその生産性は計り知れないKJ法。わかりやすいハウツー本ではないので歯ごたえがあるが、せっぱ詰まった問題を抱えている人にはいいチャンスかもしれない。

 

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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ*7

KJ法のために用意する品物(P78)

1.黒鉛筆またはペン
2.赤・青など色鉛筆
3.クリップ
4.輪ゴム
5.名刺大の紙片
6.図解用の半紙大の白紙
7.文書を書くための原稿用紙
8.紙片を広げるための場所

「1行見出し」をつける(P80)

ひとりで雑多な研究資料を相手にする時には、…パンチカードにおける「1行見出し」がそれにあたる。すなわち、パンチカードの1行見出しを、紙切れ1枚に転記すれば、以後同様に処理できる。

グループ編成(P85)

記録された紙片群を拡げる。畳もしくは大テーブルなどのスペースに、正月のカルタ取りのように自分で見やすい形に、紙切れ同士が重ならないように四角く詰めて並べる。きっちり詰めるより、少しゆとりのあった方がよい。…そして拡げ終わると、その紙片を、あわてず騒がず、端からでも真ん中からでも読んでいく。読むというよりも眺めてゆけばよいのである。
(中略)
やがて紙切れ同士の間で、その内容の上でお互いに親近感を覚える紙切れ同士が目についてくるだろう。「この紙切れとあの紙切れの内容は同じだ」とか、「非常に近いな」と感ずるもの同士が目にとまる。そう気がつけば、その紙切れ同士をどちらかの1か所に集めるのである。このようにして、まもなく紙片群があちこちにできる。いわば紙切れ同士の小チームができていくのである。
このようにして数多くの小チームがだんだん編成されてきたならば、かなり集まったあたりで、その中の1チームの紙片群を手にとってみる。この5枚が1か所に集められたのは、もともとその5枚の間に何となく親近感が「感じられた」からであった。しかし今や、もう一度手にとって検討する時には、今度は「何となく親近感があった」というのではなく、はっきりと5枚の内容をよく読むのである。熟読する。そして、「なぜ自分はここに5枚の紙片を集めたのか」ということを理性的に反問する。
(中略)
「この5枚の内容を、1行見出しに圧縮して表現するとすれば、どういうことになるか」ということを自分に問うてみるのである。このようにして、5枚の内容を包みつつ、圧縮化して表現しうる1行見出しを発見すれば、それを新しく別のメモ用紙1枚に書いて、その5枚1組のチームの紙片の上に乗せるのである。言うなれば、これは表札みたいなものである。…この表札を、今まで黒鉛筆で記してきたメモ用紙の記録と区別しやすくするために、表札は違う色の鉛筆、たとえば青鉛筆で書く。そして紙片5枚プラス表札をクリップで仮留めする。
(中略)
小チームの編成がひととおり終わったら、まったく同じ手続きで小チーム同士を編成して、いくつもの中チームを作る。さらに中チームを集め、同様にして大チームを作るという手続きを踏む。チームの次元を識別しやすいように、中チームの表札には赤鉛筆を、大チームのそれには赤と、その上に赤の輪ゴムを使うなどする。だいたい300枚ほどの紙切れは、黒鉛筆1本と、赤・青鉛筆各1本ずつあれば用が足りるという状況である。束ねるのは、小チームはクリップだが、中チームや大チームは…輪ゴムでまとめる。そして最後に5ないし10ぐらいの大チームを全部集めてみると、それを包み込む表札は、すなわちその時の討論の主題になっているはずである。この手続きを「グループ編成」と名づける。

グループ編成にあたっての注意(P88)

1.紙切れの小チームを作る時に、最後までどうしてもどのチームにも入りにくい紙片が若干出る。これは群から離れている離れザルみたいなものである。その離れザルを、無理にどれかのグループにくっつけてはならない。これはどのグループにも入らないこと自体に、それだけの意味があるからである。小チームを編成する段階で離れザルがあっても、次の段階として中チームを編成する時には、それらの離れザルも無理なく中チームのどれかの中に入る。それでもまだ所属チーム不明の紙切れがあっても、その離れザルは、もう一段上の段階である大チーム編成の時に、どこかの大チームに自然に参加することになるのである。

ふたつの方法(P92)

ひとつはグループ編成をした材料に基づいて、これを図解に持ってゆく方法で、これを「KJ法A型」と名づける。もうひとつはグループ編成の材料に基づいて、直接紙切れの資料を文章につないでゆく方法で、これを「KJ法B型」と名づける。そしてその利用法を結合した方法もまた、ふたつあり得ることになる。すなわち、グループ編成した材料をA型に従って図解し、それに基づいてさらに文章化に移行する。すなわちB型に移行する方法である。だからこの方法は「KJ法AB型」とでもいうべきものである。逆に、まず文章化し、そのB型の内容を図解として展開する方法もある。これは「KJ法BA型」である。

KJ法A型図解法(P93)

グループ編成が終わると、紙切れ群は何段階ものチームに編成されているわけである。そこで、その1チームの紙切れの束をもう一度取り出し、その中に含まれた紙切れ、または紙切れチームを、もう一度机上に拡げて、内容(紙切れチームならば表札だけ)をよく読むのである。その結果、これらの紙切れをどういう風に空間的に並べたら、論理的にもっとも納得がゆくかについて考え、そのような配置のしかたを探すのである。
1チームの紙切れ(または紙切れ束)の数はそうたくさんではない。たいていは、3枚から10数枚までである。このような数が少ないからこそ、それらの紙切れ群を目の前に拡げても、紙切れ同士の意味のつながり、すなわち相互の関係を空間的に表現した配置が見いだせるのである。

ここで面白いことは、まずそれらの紙切れ群は、すでにグループ編成によってお互いに「何らかの意味で」関係があることが保証されているのである。ところが「どういう意味で関係があるか」ということは、グループ編成の段階では、まだわかっていない。それをA型によって空間的に配置してみて発見するのである。
この空間的配置を実行してみると、「これが落ち着きのよい理解のしかたである」という空間配置が、必ずひとつは見つかるのである。もしそれが見つからない場合には、その紙切れの束はそもそも1グループに編成しておくべきではなかったものである。それでは逆に、たった1種類の意味のつながり、すわなち、それを暗示する空間配置しかできないというと、そうとも言えない。それなりに首尾一貫して理解しやすい配置が、2、3種類、あるいはそれ以上もできることがある。このような、意味関係の配置を見いだすことを、「空間配置」と呼んでおく。

「空間配置」の適切さを確認する方法(P96)

※空間配置=カード同士の意味のつながり・相互関係
一応ある種の空間配置ができて、これが落ち着きのよい理解のしかたらしいと考えたとしよう。この時、果たしてこの空間配置が適切かどうかについて、簡単に一応試してみる方法がある。それは、その空間配置が意味するところの内容を、試みに口の中でつぶやいてみる方法である。それがすらすらと説明でき、内容がつながって言葉になったら、それはそれなりによい理解のしかたであるといえる。空間配置が悪い時には、つぶやきの説明がどこかで引っかかる。話がつながらない。つぶやいてみてうまく言えない場合には、どこか理解のしかたが悪いのである。
このように、空間配置は、どんなかっこうになるのか、並べてみるまでは決して予断できないところに、非常な面白味がある。それは、一列になるのか、T字型になるのか、三角、放射状になるのか、あるいは碁盤状かドーナツ型になるのか、はじめにはさっぱりわからないのである。
このような空間配置が一応できたら、次に、別の清書用の白紙を持ってきて、その空間配置が表すものを図解すればよい。
図解する時には、ひとつの1行見出しは鉛筆で輪にして囲むのがよい。そして、長い1行見出しなら、2、3段に分けて書き、その全体を輪で囲む。1行で書くと、輪どりがあまり細長くなりすぎてしまう。
(中略)
空間配置ができているから、紙切れ群の意味するところを図解に移すのは楽なことである。この写し取りの時、内容さえ損なわないのなら、もっと誰にもよくわかる、よりよい1行見出しに書き換えてもよい。
(中略)
次に1行見出しのひとつひとつの輪どりの間をどうつなぐか。すなわち、どう関連づけるか。その表現はそれぞれの創意工夫次第で、どんな表現技術を使ってもかまわない。
しかしふつうに使って便利な方法がふたつある。それは1行見出しの間、すなわち単位と単位の間を棒線でつなぐのがひとつの方法である。これで、関係のあるものを結びつける。これの応用として、相互関係のあるものを←→としたり、対立するものを>−<としたり、原因・結果の関係があるものを→としたり、いろいろな記号を創ればよい。
もうひとつはリングで包み込む方法である。リング状の利点は、グループ編成の場合と似た力を持っている。すなわち、関係があり同類であることを示す一群のものを、それと示す力を持っている。このようにして、同類的な関係を、グループ編成の原理に従って、何重にも表現できる便利さがある。リングの強みは、このように関係を何重にも表すのに具合がよい点にある。
たとえば、鳥取県庁の開拓課は、他の諸部課とともに、鳥取県庁というリングの中に囲われる。しかしさらに、鳥取県庁と他の府県庁とを含む、同類のリングの中に、二重に入るであろう。他方その開拓課は、開拓民の諸組織と一括した、異なったリングの中にも同時に取り込めるのである。

図解化の注意(P99)

図解化に当たっては、今度はグループ編成の時の注意、すなわち、「小チームから大チームへ」とはまったく逆に、まず大分けのチームから先に図解化するのが正しいのである。このように、大分けチームの図解をまず作ると、この図解が、いわば索引の役割を果たす。そして、もっと細部の空間配置がこれに基づいて行われ、最後には1枚ずつの紙切れに該当する細部まで、リングで囲われたキャッチフレーズが図解されるのである。
…A型の場合に1枚の図解用紙に描ききれない場合はどうするか、という問題も、おのずから解決が示唆されよう。すなわち、大分けチームの図解に1枚の清書を費やしたとすると、この図解が、その後の細部的図解を誘導する索引の役目を果たす。そして、細部的図解は、必要に応じて別の紙に…描けばよいのである。そして大分けの図解は索引に使えるのだから、それにはイ、ロ、ハなどの索引符号を図解中に記入し、それ以降の別のシートの細部図解と照合できるようにすればよいのである。このようにちぎっても、200枚の紙切れ分くらいは、上手に描くと4枚くらいのシートに収まる。
(中略)
さらに、細部図解の中に記入すると大変便利なものは、そもそも個々の紙切れを作るもとになった原資料の通し番号である。…私の野外研究資料のように、野外観察の資料がすべてパンチカードになっていたとすれば、そのパンチカードの通し番号がそれに当たる。

*1:第40版となっています

*2:参考:KJ法Wikipediaより)

*3:見出しのつけ方や文章を組み立てる時の使い方など

*4:板坂さんも、この本だけで身につけたように書かれていました

*5:A型とB型があり、A型はカードを並べて図解化する方法、B型は並べたカードから文章化する方法

*6:加藤昭吉『計画の科学

*7:私なりにKJ法の取り組み方をまとめてみましたが、全部通して読んだほうが本質的な部分が理解できるのでおすすめです