- ポイント1 コンテンツ化のポイントは「エンターテインの精神が流れているか」
- ポイント2 ライターとは「取材者」である
- ポイント3 文章の構造は映像で考える
◆目次◆
ガイダンス取材
第1章 すべては「読む」からはじまる
第2章 なにを訊き、どう聴くのか
第3章 調べること、考えること
執筆
第4章 執筆 文章の基本構造
第5章 構成をどう考えるか
第6章 原稿のスタイルを知る
第7章 原稿をつくる
推敲
第8章 推敲 推敲という名の取材
第9章 原稿を「書き上げる」ためにあとがきにかえて
- 読んだきっかけ
- こんな本です
- ポイント1 コンテンツ化のポイントは「エンターテインの精神が流れているか」
- ポイント2 ライターとは「取材者」である
- ポイント3 文章の構造は映像で考える
- まとめ
- 感想
- こんな人にオススメ
読んだきっかけ
2021年4月に出た本なのですが、私が存在を知ったのはつい先日。
あ、『嫌われる勇気』の人だ、面白そう、と思って図書館で予約。
現物を見てびっくり。
これより分厚い本(辞書類を除く)は読書猿さんの鈍器として名高い『独学大全――絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』しか知らない、という存在感と重さ。
そして価格は3000円(税抜)!
めちゃくちゃ濃い内容で、最後まで目は通したものの、とても2週間で読んでものにできる本ではありませんでした。
Kindle版買います…
こんな本です
著者はライター・古賀史健さん。
www.batons.jp
ライター学校で教えた経験もあるそうですが、「教科書」がないため教えるのに苦労したとか。
「もしもぼくが『ライターの学校』をつくるとしたら、こんな教科書がほしい」を出発点に作られたのがこの本。
対象読者はこんな風に書かれています。
現役のライターや編集者はもちろん、これからその道をめざす人、そして「書くこと」で自分と世界を変えようとするすべての人達に(P3/裏表紙)
テクニックやノウハウを教えるというよりは、考え方、取り組み方などのベースを身につけられる本です。
※あまりにも内容が濃くて、半分を過ぎたくらいで脳がキャパオーバーを起こしたため、今回は主に前半部分から印象に残ったことをお伝えします。
ポイント1 コンテンツ化のポイントは「エンターテインの精神が流れているか」
古賀さんはライターは「文章を書く仕事」ではなく、「コンテンツ」を作っているのだ、という考え。
ライターは、ただ文章を書いているのではない。書くことを通じて、コンテンツをつくっている(P8)
そしてコンテンツの定義は
「エンターテイン(お客さんをたのしませること)を目的につくられたもの」はすべてコンテンツ
(中略)
お客さんの存在を前提にしていること。そして、お客さんの「たのしみ」や「よろこび」に主眼が置かれていること。この原則を守ってつくられたものは、すべてコンテンツだ(P9)
だそうです。
コンテンツというと、ストーリーやキャラクターの存在をイメージすることが多いですが、古賀さんはそこは重要なポイントではないと書かれています。
分岐点は、その根底に「エンターテインの精神が流れているか」。
読者が夢中になって読む、ただの情報を超えた「読書体験」を提供できるもの。それがコンテンツ。
つまり、自分が書いた(作った)ものが、それだけのレベルに達しているか、読者の要求に応えられているか、そこがゴールになるのです。
それだけの視点と覚悟を持っている人は、おそらくごく一部だと思われます。
だからこそ、ここをゴールにできる人はどんどんレベルが上っていくはず。
ポイント2 ライターとは「取材者」である
古賀さんは「ライターとはからっぽの存在」だと言います。
だから、取材が必要なのだ、と。
読み、人の言葉に耳を傾ける。さらには自分にも問いかける。
読んだり聞いたりしたことをただ書くのではない。
古賀さんは「返事」だと書かれていました。
ライターは、取材に協力してくれた人、さまざまな作品や資料を残してくれた作者、その背景に当たる文化、あるいは河川や森林などの自然に至るまで、つまりからっぽの自分を満たしてくれたすべての人や物ごとに宛てた、「ありがとうの返事」を書いているのである。
(中略)
ライターとは、「取材者」である。
そして取材者にとっての原稿とは、「返事」である。
取材者である我々は、「返事としてのコンテンツ」をつくっている(P35)。
自分の中に伝えたい何かがある人は、ライターにはなりません。小説家や詩人などの表現者になるはず。
だとしたら、ライターは自分自身はからっぽであり、興味を持った対象を取材し、そこからコンテンツを作る人、になるのが自然。
こんな面白いことが起きている、こんな素晴らしい人がいる、それを取材して伝えたい、というのがライターの仕事です。
でも、ただ読者の方を向いて書くのではなく、取材対象に自分はこんな風に感じたよ、と返事を書くのだ、というのがとても新鮮に感じました。
著者はインタビューなどに強く、時に「憑依型ライター」と呼ばれるそうです。
膨大な取材をした上で、直接本人が口にしていない言葉を書いたとしても、当人は
「自分が言いたかったことを代わりに書いてくれた」
と喜んでくれることがほとんどなのだとか。
それはきっとこの「返事としてのコンテンツ」という考え方から来ているのだろう、と感じました。
ここまで取材対象に目や気持ちを配れる人は、きっとほとんどいないはず。
ポイント3 文章の構造は映像で考える
分厚い本ですが、この本に出てくるワークはひとつだけ。
それは、「桃太郎のストーリーが最も伝わる絵本を作るため、用意された挿絵30枚から10枚に絞り込む」というもの。
「何を捨て、何を残し、どうつなげるか」の練習です。
正解はありませんが(一応例として著者版「桃太郎」の10枚は提示されるが、唯一絶対ではない)、なぜその10枚を選んだのか、明確な意図が説明できることが求められます。
この時、どう選ぶかのベースにあるのが「シークエンス」という考え方。
シークエンスとは映像のひとつのまとまりのこと。
古賀さんは桃太郎をシークエンスに分けて考え、そのひとつずつに1枚は挿絵が配置されるように考えることを勧めています。
これなら、物語が理解しやすくなるそうです。
たとえば、鬼ヶ島に船で渡るシーンは端折りたくなります。
しかし、これがないと、犬、猿、キジを家来にしたあといきなり鬼成敗のシーンが来て、話の流れがわかりにくくなってしまいます。
また、犬、猿、キジにきびだんごをあげる各シーンはぜひとも入れたいと思いますが、全部で10枚のところに3枚そのシーンを入れてしまうと、物語のバランスが悪くなってしまう。
なのでここは1枚だけに抑える。
これが、構造をしっかりしたものにする基本的な考え方。
ちなみに、古賀さんは以前、映画監督になりたくて勉強を続けていたそう。
この手法はだからこそ編み出されたものなのかもしれません。
ワークでは絵本の絵を使いましたが、この考え方を身に着けられれば、バランスよくわかりやすい文章が書けるようになれそうです。
まとめ
- ライターがつくっているのはコンテンツ。「エンターテイン(お客さんをたのしませること)を目的につくられたもの」はすべてコンテンツ
- ライターそのものは空っぽであり、取材によって得たものへ「返事としてのコンテンツ」=原稿を書いている
- 何を捨て、何を捨てないか。映像で言えばカット(ひとつの「文」)、シーン(段落)、シークエンス(章や節)で考えるとわかりやすい
感想
文章はとても読みやすい。内容も興味深い。
しかし、こんなに情報量の多い本はめったにありません。やっぱり教科書だからでしょうか。
私はプロのライターにも、編集者にもなる予定はありませんが、読者という立場として読んでも面白かったです。
特に、インタビューや対談の取材の方法や文章の書き方。こんな風に書いているのか、ダメな記事はここがマズいのか、という話は今まで聞いたことがなく新鮮でした。
こんなことまで書いてしまっていいのか、とこちらが恐縮するくらい手の内は全て書いてあります。
「秘伝のタレのレシピ全公開」レベルで。
手元において試行錯誤しながら実践するタイプの本です。
ここでご紹介できたのはごくごく一部。
興味のある方はぜひ、読んでみてください。
こんな人にオススメ
ブログを書いてるだけ、とかメールをもっと伝わるように書きたい、というレベルの人でも受け取れるものがたくさんあります。
■レベル:離 ボリューム的には現実離れしているので…
私のアクション:自分と違うリズムを発見する目的で、自分が気持ちいいと思う文章を筆写する。頭の中で音読し、息継ぎポイントを知る
推敲によって、ダメな自分と向き合う。いいと思っていた原稿の、さまざまなミスを発見する。それは「書き手としての自分」がダメなのではない。「読者としての自分」が鋭い証拠
— やすこ (@yasuko659) September 27, 2023
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古賀史健『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』
自分の中の「鋭い読者」を誇ろう#読了 #本が好き #ダイヤモンド社 pic.twitter.com/GGqD8qjowl
次の記事は私の個人的メモです。興味のある方はどうぞ。※メモのスタンスはこちら
※メモは近日中にUPします!
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