毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

「数学マーケティング」最高の書☆☆☆☆

以前から出ていることは知っていたが、数学がまったくダメな私には読めないものとあきらめていた。ところが、家族が予約していたらしく借りて来た。
超分厚いハードカバー、価格は3,200円(税抜)、典型的な難読本であります。

しかし、もしこのチャンスを逃したら次はいつ読めるかわからない。返却日ギリギリに必死で読んだ。
――案外読めた、というのが率直な感想。
というのも、この本は数学が苦手な人でも読めるように書いてあるからだ。


 

◆目次◆
序章 ビジネスの神様はシンプルな顔をしている
第1章 市場構造の本質
第2章 戦略の本質とは何か?
第3章 戦略はどうつくるのか?
第4章 数字に熱を込めろ!
第5章 市場調査の本質と役割―プレファレンスを知る
第6章 需要予測の理論と実際―プレファレンスの採算性
第7章 消費者データの危険性
第8章 マーケティングを機能させる組織
巻末解説1 確率理論の導入とプレファレンスの数学的説明
巻末解説2 市場理解と予測に役立つ数学ツール
終章 2015年10月にUSJTDLを超えた数学的論拠
今西よりご挨拶
森岡よりご挨拶

参考文献・資料

この本の目的と内容については、冒頭にくわしく書いてある。

 本書のテーマは「確率思考」です。本書に一貫するメッセージは、「ビジネス戦略の成否は『確率』で決まっている。そしてその確率は、ある程度まで操作することができる」ということです。私はその考え方を、「数学マーケティング」とも、「数学的フレームワーク」とも呼んでいます(P4)。

もちろん数式は載っているが、苦手な人は飛ばしていい、とはっきり書いてあるのだ。
使っている手法やツールについては、「巻末解説」としてかなりのページを割いている*1

もう1人の著者・今西さんは、森岡さんよりも20歳ほど年上で、P&Gの先輩に当たる方だ。当時、仕事上の接点はなかったが数学好き同士、意気投合したという。

森岡さんがUSJに移籍したのちにハリーポッターの需要予測をしたものの、社運をかけた大きなプロジェクトなので自分の予測した数字の裏づけがほしいと思い、今西さんに別の手法での分析を依頼。ふたりの出した数字がほぼ同じだったため、確信が持てたそうだ。

現在、今西さんはUSJでシニア・アナリストとして数学マーケティングのノウハウの普及と後進の育成に注力されているとか。

 私も今西さんも数学を活用したビジネスのノウハウを持っていますが、強みが異なります。マーケターである私は、戦略立案と意志決定の主体であるストラテジストとしてのノウハウを、アナリストである今西さんは、より客観性と需要予測分析に強みのあるリサーチャーとしてのノウハウを(以下略)(P6)

この得意分野の違いがあることで、2人のタッグは最強だという。
この本では、その最強のノウハウを存分に学ぶことができる。

 

数学を使ったマーケティングの手法は古くからあり、特に今西さん担当の5〜7章はオーソドックスな考え方と分析方法の解説になっている*2
ただ、この本のすごいところは、「何のためにそれを使うのか?」という目的を明確にしてくれることだ。
目的はシンプル。「リスクを回避して、成功率を上げるため」だ。
これは『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』にあった「宝探しをする時にやみくもに地面を掘り返すのではなく、できるだけ範囲を絞ってから掘る」と同じ。

 

アメリカでの経験もお持ちの森岡さんは、この本を日本が今後も世界で輝くために書いた、という。
世界と互角に闘うためにこの手法が必要なのだ、と力説している。
アングロサクソンの「自分に有利なようにルールを勝手に変える」とか「サイコパス*3的な人の割合が多い」という話は「確率思考」と直接の関連性はないが、こういうところに打って出なければならない、そのためにリスクはできる限り減らすという“前提条件”として印象的だった。

 

むずかしいことはともかく、この本を読めば「何が変えられて、何を変えられないか」、また「操作できるところ、影響を及ぼせる範囲がいかに少ないか」が体感できる。市場原理のDNAは消費者のプレファレンスであり、変えられるのは「M」だけなのだ(くわしくは下のメモにあります)。
日本のビジネスは「夜にヘッドライトもつけずに車を運転する」とか「泳ぎ方も知らないのにいきなり海に飛び込む」くらい無茶苦茶なやり方が多いのだそうだ。
これを知っていれば、少なくとも希望的観測やカンだけでビジネスを始めたりしなくなる。

 

個人的には、つい最近読んだ佐藤オオキさんと森岡さんが、「実はよく似ているのでは?」という興味が湧いた。
佐藤さんは「デザインは、マーケティングとは逆の方向から見る」と書かれていたが、森岡さんの戦略も、ゴールから考えているという。
佐藤さんは時間軸を帯で見ているイメージで、森岡さんは3Dの地図を俯瞰しているイメージを持った。

しかも、森岡さんはプランは2つ考え、ベストと思われるプランAと、できるだけ違う道筋のプランBを用意するのだそうだ。これも佐藤さんとほぼ同じと言っていいと思う。
そしてこれはオマケだが、佐藤さんが『問題解決ラボ』に書いていた、デザイナーに向いている人の資質。それは「たとえ話がうまいこと」だった。
森岡さんの本がむずかしい内容なのに楽しく読めるのは、たとえ話が面白いからだ(上の「夜にヘッドライトもつけずに車を運転する」など)。
おふたりにどこかで接点が生まれたら面白そうだな、と勝手に期待してしまった。

 

「確率」「リスク」というものについて、概念が変わります。「戦略的な考え方」ができるようになる、少なくとも入口には立てるはず。
ものすごく読みごたえはありますが、仕事に限らず人生のリスクを減らしたい方は、ぜひチャレンジしてみてください。
私のアクション:自分がいいと思うものと、世の中ではやるものの差をしっかり見る*4
■レベル:離 他に類のない本なので。 

 

次の記事は私の個人的メモです。興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。

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*1:ここはキッパリあきらめました…

*2:このため、数学アレルギーの人にとっては一番の難所でもあります

*3:ここでは「殺人鬼」のような暴力性のことではなく、「ビジネスに必要だと思ったら平気で人員削減できる」など感情に左右されず冷酷な判断ができる、という意味です

*4:何しろ、私が一番好きなテーマパークは経営がコロコロ変わり、当初の経営理念など影も形もないですから。カジノまでやりそうな勢いです…